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「私たち"we/us/our(s)"」を使う数から見えてくることは?〜"Rewrite the Stars" 歌詞解説⑪〜

映画『グレイテスト・ショーマン』の中の曲 "Rewrite the Stars" の歌詞をずっと解説していますが(第一回第二回第三回第四回第五回第六回第七回第八回第九回第十回)、こんなにも長く解説することになるとは思っていませんでした笑

こちら↓の曲ですね。


なぜこんなに長く解説することになったかというと、この歌詞には「何かある」と思ったからなんですね。

それでいろいろと分析してみたところ、面白い発見があったので、シェアしてみます。

やってみたことは……

「数を数える」

数を数える??と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、会話の中で何かの数を数えることで分かることもあります。私は会話の映像を記録して分析していたことがありますが、面白いのは、その場では何も気づかないで通り過ぎてしまっている何かに気づくこと。歌詞ではやったことなかったのですが、これはとてもおもしろい。

というわけで、歌詞を引用することになるので、とても長くなりますが、とりあえず、太字の数だけ見てもらえたらいいので。では行きますね。

数えるのは "we/our/us"(私たち)を表す単語です。

まず最初の男性のパート。

You know I want you
It’s not a secret I try to hide
I know you want me
So don’t keep saying our hands are tied

You claim it’s not in the cards
And fate is pulling you miles away
And out of reach from me
But you’re here in my heart
So who can stop me if I decide that you’re my destiny

ここまでで出てきている「私たち」1つです。

次に、男性のサビの部分。

What if we rewrite the stars?
Say you were made to be mine
Nothing could keep us apart
You’ll be the one I was meant to find

It’s up to you, and it’s up to me
No one can say what we get to be
So why don’t we rewrite the stars?
And maybe the world could be ours, tonight

ここで出てきている「私たち」5つです。

次に、女性のパート。

You think it’s easy
You think I don’t wanna run to you, yeah
But there are mountains
And there are doors that we can’t walk through

I know you’re wondering why
Because we’re able to be just you and me within these walls
But when we go outside
You’re gonna wake up and see that it was hopeless after all

ここで出てきている「私たち」3つです。

次に、女性のサビの部分。

No one can rewrite the stars
How can you say you’ll be mine
Everything keeps us apart
And I’m not the one you were meant to find

It’s not up to you, it’s not up to me, yeah
When everyone tells us what we can be
And how can we rewrite the stars?
Say that the world can be ours, tonight

ここで出てきている「私たち」4つです。

最後、男性と女性が一緒に歌うサビの部分です。

And how do we rewrite the stars?
Say you were made to be mine
And nothing can keep us apart
‘Cause you are the one I was meant to find

It’s up to you, and it’s up to me
No one could say what we get to be
And why don’t we rewrite the stars?
Changing the world to be ours

ここで出てきている「私たち」の数は5つです。

「私たち」の数の推移を見てみると……

男性パート 1つ
  

男性のサビ 5つ
  

女性パート 3つ
  

女性のサビ 4つ
  

男性と女性の2人のパート 5つ

「私たち」の使い方が相手との距離を表すという記事を以前、書きましたが
(こちら↓)


歌詞の中での「私たち」の数の推移は、男性、女性のそれぞれの相手との距離というか、気持ちの高まりを表していると思うんですね。それが綺麗に歌詞の内容と一致しています。

男性の最初のパートでの「私たち」は1つ。それは相手に対する気持ちはあるけれども、どうなのか少し不安なことを表現している。

次の男性のサビ部分での「私たち」5つ。これはもうめちゃくちゃ盛り上がっている気持ちですね。「運命を書き換えない?」とまで言ってしまうくらいですから。

次の女性パートでの「私たち」は3つ。その前の男性の5つよりは少なくなっていますが最初の1よりはありますよね。歌詞の内容は男性の気持ちは分かるけれども、どうなのかしら、という感じですが、「壁の中では私たち2人でいられる」とも言っているので、それなりに気持ちがあることが表現されているわけですね。

次の女性のサビの部分での「私たち」は4つ。ここが面白いところで、歌詞の内容は「すべてが私たちを引き裂く」とか「どうやって運命を書き換えられると言えるの?」とネガティブな言葉が続いているのですが、前の部分よりも数が増えているということは、女性の気持ちも高まってきていることを表現しているのではないでしょうか。ここを歌う時には、そういう両義的な複雑な気持ちを表現できたら良さそうですね。

そして、最後の男性と女性が2人で一緒に歌う部分「私たち」は5つ。男性のサビの部分の数と同じになりました。2人の気持ちがそろったということですね。

最後が "Changing the world to be ours" (世界を私たちのものにしよう)という歌詞と綺麗にリンクしています。

というわけで、めでたしめでたしになると思いきや、最後の女性パートがこんな感じに終わります。

You know I want you(私があなたを求めてるのは分かってるでしょ)
It’s not a secret I try to hide(それは秘密にしたいことじゃない)
But I can’t have you(でも一緒にはなれないの)
We’re bound to break and my hands are tied
(私たちは結ばれない運命。どうしようもないの)

ここで出てきている「私たち」1つ。というわけで、女性の気持ちと「私たち」の数がここでも綺麗にリンクしているのが分かります。面白いですよね。

「私たち」以外で、もう1つ面白いのは、こちら↓サビの前のところで2人で一緒に歌っている部分です。

All I want is to fly with you(したいのはあなたと飛ぶことだけ)
All I want is to fall with you(したいのはあなたと恋に落ちることだけ)
So just give me all of you(だから私にすべてをゆだねて)

ここの3行のところで、

I/you
I/you
me/you

というように、「私」「あなた」が交互に出てきているんですね。ここも2人の気持ちが交差しているプロセスにあることを表現しているのではないでしょうか。

そして、次の3行。

(女性)It feels impossible(無理みたい)
(男性)Is it impossible?(無理なの?)
(2人)Say that it’s possible(できると言って)

女性と男性が交互に歌って、最後に一緒に歌って、サビの盛り上がりにつながる、という形になっています。

こんな風に言葉を見ていくことで、分かることがたくさんあるんですよ〜。こうした紆余曲折を経て、映画の中の2人は最終的には結ばれるのが素敵ですね。最近、人とのかかわりの言葉づかいで何か気づいた事ありましたか?もしよかったら教えてください。質問などももしあればどうぞ♪

洋楽の歌詞解説のXもやっています。


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