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自選集:詩

35
密室で延焼する憎悪と、古戦場に揺れる花と。
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#コラム

皆、去っていった。僕だけが大人になれなかった。雨の日。

皆、去っていった。僕だけが大人になれなかった。雨の日。

本当はわかっていた。どうにもならないし、どうにもなっていなかったことに。

周りを見渡すと劣等感しかない。すげー優秀じゃん。この人らは日々鍛錬し、積み重ねてきた人なんだなということが見て取れる。

器用だなー、小気味よくテキパキこなしていくなー。安定感あるなー。それだけ繰り返してきたってことなんだろうなー。

自分はゴミだなー。少し仲良くしてくれる人がいるのは、僕が奇抜な行動に出て悪目立ちしている

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キャッチャー・イン・ザ・ライの夜

キャッチャー・イン・ザ・ライの夜

サリンジャーの小説『キャッチャー・イン・ザ・ライ』やそれについて語っている本を読むたびに、ネット上に何か文章を書いて発信したいと思ったときの始まりのモチベーションを思い起こさせられる。

それは「過去の自分に届くように書く」ということだ。もちろん時間をさかのぼることは(現状)できないので、共通したところがある人に届くように書くということになる。

あの絶望的な日々。わずかにすら心が通じ合うことはな

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人と比べて自分に無いものを数えるより、まだ有るものを活かしていたい。どんな人間も最後には土へと還り、骨しか残らない。最期に向き合うのは、別れを告げる世間の目線ではなく、もう偽れない自分の本心。あの世にはどんな財産も持ってはいけない。精一杯やった満足感だけが、静かに瞳を閉じさせる。

物事の解釈は時と共に推移していく。熟考した岐路での決断についてさえ、後にならないと自分の心がはっきりしない事もある。壊さないと作り直せない。殻を破る時には痛みを伴う。馬鹿げた失敗だと思っていた行動が、後に強烈な存在感を放つ重要な布石として輝き出す。熟練の囲碁打ちの一手のように。

いや綺麗事じゃなくてさ。現実にはそんな理屈なんかじゃとても捉えられない、うまく言葉にできなくて混沌としていて破壊的な体験がある。何も見えなくなってただ溺れて、それでも陸地を目指してあがくかのような。きっとそれこそが自分を自分たらしめる。書き残せるものがあるとしたらそういう話だ。