見出し画像

シンドローム "X":メタボ

メタボリック・シンドロームは日本ではメタボと省略形で呼ばれているけれど、実際のところその実態が何であるか、知っている人は少ない。ピーター・アティア医学博士を初めとする米国の長寿研究者たちの間での定義は次のとおり。このうち3つあてはまると完全なメタボとなるが、一つでも注意が必要。

血圧  130/85以上
トリグリセリド 150 mg/dL 以上
HDLコレスとロール 40mg/dL (男性)50mg/dL(女性)以下
ウェスト周り  100 cm 以上(身長170cm以下の場合)
起床時の血糖値 110mg/dL 以上

トリグリセリドは、グリセロールという物質に脂肪酸が結びついたもので、体内で中性脂肪として蓄えられるもの。トリグリセリドは、食事から摂取されたエネルギーが余った場合に肝臓で作られる。そして血液中の脂質の一種となる。高い値が検出されると、動脈硬化や心臓病などの疾患のリスクが高まることが知られている。

日本人の場合は、痩せていて、それでいてメタボという人が多い。太っていてメタボの人と同様、これらの人は糖尿病や心臓病、脳卒中、パーキンソン氏病、アルツハイマー病になりやすいとされている。

大々的なメタ分析によると、上記リストに二つ以上引っかかる人はそうでない人に比べて11.5年の寿命が短くなると言う結果が出ている。

メタボリズムとは、身体が栄養をブレークダウンして細胞や臓器に取り込み、生存に役立てるメカニズムのこと。たとえばドーナッツをある人が食べたとして、通常はその25%が肝臓に、75%が筋肉などの組織に使われる、あるいは貯蔵される。

肝臓はこれをグリコーゲンとして貯蔵し、グルコーズとして血中に戻す。血液内のグルコーズレベルが一定の範囲にあることを、グルコーズホメオスタシス(glucose homeostasis)と呼んでいて、これは非常に重要な機能だ。

健康な成人男性の場合、約5グラムのグルコースが血中を流れていることになる。そしてそのグルコースは筋肉や脳で使われる。肝臓や膵臓はこのバランスを常に管理し、グルコーズが多すぎず少なすぎず、体に行き渡るように働いている。

もしこのメカニズムが崩れ、血中により多くのグルコースが放出されたままになってしまうと、あちこちに支障が出てくる。これが第二型糖尿病を簡単に言い表した場合の状態だ。

消費される以上のグルコーズや脂肪が蓄積されると、それはお風呂にはったお湯が溢れ出るように、周りに流れ出す。それはトリグリセリドを高めたり、脂肪肝となったり、血管や腎臓、膵臓に溜まっていく。そして、今度はインスリン対抗性に大きな悪影響をもたらし、さらに心臓の働きを圧迫する。

内臓の間に詰まった脂肪は、少なければバンパーとしての機能を果たすけれど、それが過ぎると、これらの内脂肪は、身体の炎症となるTNF-aloha や IL-6 などのサイトカンとなる。

これだけでも、いかに血糖値コントロールとインスリン対抗性の上手な制御が大切かわかってくる。哺乳類として生きていく上での肝腎要のサイクルなのだ。糖尿病になってしまうと、がんや脳卒中、認知症のリスクが何倍にも増える。

質の高いものを少なく食べて、しっかり睡眠をとり、これまでに何度か紹介した『Zone2』のトレーニング(最大心拍数の75~80%の範囲で行うトレーニング)を週に4回、それぞれ45分以上することで、糖尿病は避けられるし、改善することができる。

メタボについて、真剣に向き合うことは健康寿命にとって必須のことなのだ。





=======================
以下の3冊を出版。Kindle読み放題サブスクされてる方は無料
レビューで応援していただけると嬉しいです。

 


サポートは株式会社スクーンジャパンおよび米国スクーン社が乳がんのNPO団体(LBBC)に寄付する資金に利用させていただきます。