DX化の“最適解”とは?
介護マネジメントコンサルタントの近藤麻耶です。
今回は、ノウハウのお話ではなく
私なりの問題提起をしたいと思います。
私は現在、仕事の傍ら大学院生をしておりまして
「通所介護の送迎システム導入による組織変革(仮)」
について研究をしています。
介護業界でDX化が進んでおりますが
何かしらのシステムを導入しようとする際に
「導入し、効率化につながった」というケースもあれば
「(色々あって)導入には至らなかった」ということもあるかと思います。
今回、問題提起したいのは
「導入には至らなかった」=失敗なのか?
ということです。
研究テーマである、通所介護の送迎システム導入を例にお伝えしたいと思います。
1.送迎業務は難しい!
送迎の中でも特に難しい(経験値が必要)とされているのが「送迎表の作成」と「送迎ルートを覚える」ことではないでしょうか。
送迎表を作成するには、様々な要素を考慮して組み合わせなければ
なりません。その要素には、例えば次のようなものがあります。
☆当日の利用者の出欠(急な欠席もある)
☆利用者の居住地
☆サービス利用時間
☆介護度(自立歩行できるのか、介助が必要なのか)
☆利用者別の指定時間(利用者によっては、時間指定があることも)
☆車種や座席
☆ドライバーの技量(介助ができる、道を知っているなど)
☆利用者同士の相性
通常はこれらを、ホワイトボードとマグネットなどを使って作成しますが
これだけの要素を考慮して計画を立てるのは至難の業。
担当者にもよりますが、長い人だと1時間半もかけて作成する例も・・・
また、送迎ルートを覚えるのも、通常は数か月かかるとされています。
例えば、同じ「Aさん宅」がゴール地点だとしても、「Bさん宅」から向かうのか「Cさん宅」から向かうのかで、道が異なります。そうなると、覚えなければならない道順の数は膨大です。
このように、送迎業務は通所施設にとって大きな負担となっています。
そこで期待されているのが送迎システムです。導入することにより、
時間や労力が大幅に削減できることが期待されています。
2.ガラパゴス化は努力の結晶!
そんな送迎業務をなんとか効率よくこなそうと、現場のスタッフさんたちは知恵を絞っています。
ある施設では、Excelに関数を入力して、“独自のシステム”を作っていたりします。
また、送迎表に「薬のチェック」などの注意事項を、独自の記号を用いて記入しており、「ホワイトボードのコピーさえ見れば、全てわかる」といったように、情報をコンパクトに集約させている施設もあります。
それらの“努力のたまもの”で、送迎業務自体、あまり負担となっていない施設も、実際には存在します。いわゆる”ガラパゴス化”した状態ともいえるでしょう。
このような施設に「送迎システムを導入しましょう」と言っても、スタッフはメリットを感じにくいでしょう。また、いざ導入となると「これまでとやり方が違う」ことにより、一時的に効率が下がる可能性も大です。
果たして、このような施設にシステムを導入することは、ベストな選択と言えるのでしょうか?
まだ研究の途中段階ではありますが、私は必ずしもそうではないと考えています。
3.大切なのは導入時の“見極め”?
ただし、長い目で見れば
「施設のオペレーションにシステムを合わせる」のではなく
「システムに施設のオペレーションを合わせる」方が、
施設をめぐる様々な環境(スタッフの入れ替わりなど)が変化した際に、負担が軽くなることが予想されます。
これは現段階の仮説ですが、「システムを入れるかどうか」よりも
「どのような状態であれば、システム導入して成果が出るか」といった
何らかの判断基準が必要ではないでしょうか。
例え同じ法人内でも、施設の状況はそれぞれです。
A施設はシステム導入に成功した。
B施設は導入を試みたが、活用に至らなかった。
だからB施設は失敗だ。
という考え方は、一歩立ち止まって改めるべきではないでしょうか?
システムの導入・活用が進まないのには様々な理由があります。
その背景には、これまでのスタッフさんたちの工夫と努力があります。
「このラインに達したら、多少反発されても、成果が出るよね」
そんな判断基準を見つけられたらなと思っています。
研究の進捗は、また折を見てこちらで発信させていただきます。
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