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【EdTech特集】今さら聞けない:東南アジア最大の教育スーパーアプリ「Ruangguru」を徹底考察!

 皆さん、はじめまして。Scala Global noteへようこそ。
 このnoteでは私たちが事業開発の中で取り組んでいる重点テーマ【農業】【医療】【教育】の中から、気になるスタートアップや関連ニュースを取り上げ、我々なりの視点でその「本質」に迫りたいと思います。

 記念すべき第一回目は【教育】分野から2200万人のユーザーを誇る、東南アジア最大教育スーパーアプリ、Ruangguruを取り上げます。

会社概要

企業名   PT. Ruang Raya Indonesia
設立年           2014年
所在地   Jakarta, Jakarta Raya, Indonesia
ユーザー数 2200万人超
地域    インドネシア(ベトナム、タイに進出中)
資金調達額 205.1万USD(シリーズC)

Ruangguruはアプリ1つで様々なサービスが利用できる

 「スーパー」アプリとは、プラットフォームとなる1つのスマホアプリの中に、様々な機能を持つアプリ(ミニアプリ)を統合して、日常生活のあらゆる場面で活用シーンを持つ統合的なアプリのことを言います。日本の例でいうとLINE やPayPayがスーパーアプリとして挙げられます。
 今回ご紹介するRuangguruは、英会話、家庭教師、動画コンテンツ、習熟度チェックテストなどあらゆる教育サービスを1つにまとめた教育版のスーパーアプリです。

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いつでもどこでもすべての学生にテクノロジー
を通じて質の高い教育を提供できる

 Adamas Belva Syah Devaraら創業者がRuangguruを立ち上げた背景には、PISA(Programme for International Student Assessment「経済協力開発機構加盟国の生徒の学習到達度調査」)の学力テストにおいてインドネシアがOECD平均スコアや他の東南アジア諸国のスコアを下回っていることにあります。インドネシアは首都ジャカルタ以外の都市では、教育資源が乏しく、また子供1人あたりが家計に占める月額教育支出も低いことによる教育格差が問題になっていました。

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 そこでAdamasらは、「いつでもどこでも、すべての学生にテクノロジーを通じて質の高い教育へのアクセスを提供し、拡大する」という使命のもとRuangguruを立ち上げました。実際にRuangguruのサービスがどのようにしてこの使命を実現しているのかについてそれぞれ見ていきたいと思います。

いつでも:オンライン学習ができるため学習者は自分の好きなタイミングで学習を進めることができます。教師との1対1の授業サービスもオンラインでできるので、好きなタイミングで授業を受けることができます。もしわからない問題に直面した時にすぐ質問できるのは学生にとってすごい便利ですよね。

どこでも:Ruangguruアプリは各自の端末で利用可能なので、学習者は好きな場所でアプリを利用することができます。さらにアプリ自体がインターネット環境が悪い場所でも読み込めるようにデザインされていたり、動画コンテンツを事前にダウンロードできるため、インフラ整備が十分に整っていない郊外でも学習者たちはアプリを利用できます。

だれでも:Ruangguruでは「質の高い教育を低価格で提供すること」をミッションとして掲げています。無料のテスト機能の他に、サービスは1回ごとに購入したり、サブスクリプションによって利用するなど顧客のニーズに合わせた料金メニューとなっております。例えばオンライン家庭教師は1時間あたり約500円〜、動画コンテンツ学習サービスの基本プランの年間利用料は約4,000円(1日12円!)となっているため、学習者たちは自分の学習ペースや予算に合わせて学習でき、この料金プランによって「だれでも」学習ができる仕組みになっているのです。 
 
 以上のように教育コンテンツだけではなく、テクノロジーによって「いつでもどこでも誰でも」質の高い教育を受けることが可能になっています。これらの企業努力によって、今まで教育サービスにアクセスしてこられなかった学生に対して、質の高い教育の提供を実現しているのです。実際にRuangguruユーザーの70%ほどが今まで学校以外の教育サービスにアクセスしてこなかった学習者で、従来の学習サービスと比較していかにRuangguruが手軽にアクセスできるかを示しています。

 現在Ruangguruは32の州政府(34のうち)および326の市および地区政府と提携、創設者のAdamasはジョコ・ウィドド現大統領の特別側近にあたる「7人のミレニアル補佐官」の一人にも選ばれており有識者として閣僚会議にも参加しています。また昨年の新型コロナウイルス感染拡大によるインドネシア全土の学校閉鎖の際には、学生に向けて教育コンテンツを無料開放したことでも話題になりました。このようにRuangguruがインドネシア全土の教育に大きな影響を与えていることがわかります。

学習意欲を刺激するゲーミフィケーションが人気の理由?

  Ruangguruが多くのユーザーを獲得できた理由の一つに、Ruangguru独自のゲーミフィケーション(ゲームを本来目的としないサービス等にゲーム要素を追加すること)が挙げられます。

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  (「Fitur Baru Ruangguru: Belajar Kaya Main Game!」YouTubeより     Ruangguru Adventureの操作画面)

 Ruangguru独自の「Ruangguru Adventure」と呼ばれるゲーミフィケーションでは、学習者は学習動画を視聴するとXPポイントを獲得してアバターのレベルを上げ、その後関連問題に正解するとゴールド(ゲーム内通貨)を獲得してアバターの着せ替えアイテムを購入することができます。

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  (「Fitur Baru Ruangguru: Belajar Kaya Main Game!」YouTubeより        Ruangguru Adventureの操作画面)

 学習者が作成したアバターは画像のようにランキングで表示されたり、また友達どうしでアバターや学習履歴を共有することができるため、学習者たちはゲームをしている感覚で、競うように学習しているようです。

【独自予想】Ruangguruの今後の展開

   Ruangguruの保有するデータは、オンラインの特性上、学習者1人1人が何の動画を何分視聴し、そしてどの問題につまずくかというデータが蓄積されていくため、学習者の学習特性を把握できます。また、受験合格や資格取得といった実績のデータを学習データと結びつければ、合格者がいつ、何を、どれくらい勉強したかがわかるのです。つまり個人の学習特性データと合格者の学習データが組み合わさることによって、志望校に向けた自分だけの学習プランを作れるようになる可能性があります。
 一方、教師の側からしても、学習者との相性や学習特性、それに合わせた最適な指導方法が可視化されることによって確実に指導の質も上がるはずです。今まで他の指導者の指導法を知らずに独自の方法で行われていたものが教師同士の間で共有され、教師たちの集合知になっていくわけです。その結果教師のための学習プラットフォームなんてものも実現するかもしれません。

さいごに

 簡単ではありますがインドネシアの教育版スーパーアプリ「Ruangguru」のサービス内容、今後の展開について紹介させて頂きました。2,200万人のユーザーを持つRuangguruの今後のビジネスの展開について着目していくことでEd-Techのトレンドを先取りできるかもしれません。
 今後も皆さんのビジネスのヒントになるようなスタートアップをご紹介していきたいと思います。それではまた次回お会いしましょう。


出所
1. Ruangguru Webサイト (https://www.ruangguru.com/)
2. Linkedin Adamas Belva Syah Devara氏紹介ページ
(https://www.linkedin.com/in/belvadevara/?originalSubdomain=id)
3. Crunchbase Ruangguruページ(https://www.crunchbase.com/organization/ruangguru)

トップ画像出所:https://dribbble.com/shots/6031904-Confuse-Homework




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