リーダーシップとは何か3 求められる能力:PMモデル、カッツモデル

今回はリーダーシップについて、ビジネスフレームワークから考えたいと思います。

PMモデル
PMモデルはリーダーシップの能力をPerformance(目標達成能力)とMaintenance(集団維持能力)の二つに分け、どのような能力を有しているかという分析手法です。どちらの能力も高いことが望ましいのですが、リーダーの専門性や職務によって、どちらかの能力が高いことが一般的です。またどちらの能力にも欠ける者は、残念ながらリーダーには向きません。
これは僕の判断ですが、職人や技術者といった作業に特化した人はPm型(Performanceに長けている)が多く、商人や販売業の方は(営業職ではありません)の人はpM型(Maintenanceに長けている)が多いように思います。これは1人で行う業務か、協力しておこなう業務かといった違いであるように思います。

カッツモデル
カッツモデルは人材育成のフレームワークです。人材育成の対象を一般社員、管理職、経営層に分類、また教育内容をテクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルに分類し、それぞれの育成ターゲットに対して、どのような比率で指導するかの比率を表したものです。
一般社員(ローワーマネジメントでは、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの比率を4:4:1で教育することが望ましいと考えられます。管理職教育(ミドルマネジメント)では、教育内容を1:2:1、経営層(トップマネジメント)では1:4:4とするのが望ましと考えられ、それぞれの立場によって、必要な脳力が異なります。

Pm型のリーダーはテクニカルスキルに長け、コンセプチュアルスキルを苦手とし、ヒューマンスキルが偏る傾向にあります。mP型のリーダーはコンセプチュアルスキルに長け、ヒューマンスキルも高い傾向にあります。
もちろん全ての能力に長けていることが望ましいのですが、最初から全ての能力に長けていることは極めて稀です。経験や学習によって能力を高めることは可能ですが、職務の専門性や職域が高くなるほど、いずれかの能力を高める必要があるため、偏らざるをえません。

これらの特徴は同じ職種でも、組織の特徴、例えば日本企業と海外企業、大企業と中小企業、業種業態などによって異なります。例えば日本的経営においては、会社は家族のような位置づけにあり、チームワークを重視する傾向にありましたから、個人ではなく組織の能力を重視してきました。一方海外企業では、会社は働く場であり、プライベートと区別する傾向が強いため、個人のPerformanceが重視されてきました。
日本的経営ではヒューマンスキルの1つであるコミュニケーションは高まりますが、それぞれの企業内で独自の企業文化が形成され、教養や視野が偏りやすいです。一方欧米型では、能力開発は自己責任ですから、一人一人の学力やトレーニングによって能力を発揮し、チームの行動基準は、それぞれの組織で決められた理論に従います。
1980年代からMBAなどの資格が重視されるようになったのはこのためです。逆に日本企業でMBAが機能しないのは、組織の常識やルールが理論よりも重視されるためではないでしょうか。

リーダーシップについては他にも様々な理論やフレームワークがあります。お手伝いさせて頂く会社や内容によって、どのような理論や手法をとるか違いますが、人の問題を扱う時、経営者の方にはまずこの二つを理解して頂くことにしています。
特に日本の企業や組織では、根拠のない慣例が多く、いわゆる「当たり前」が横行しています。戦後復興からバブル期までは問題ありませんでしたが、バブル崩壊以降、「勘と経験と努力」だけでは立ち行かなくなりました。
そのため会社内の優れた部分と足りない部分を明確にし、足りない部分を論理的に理解して頂くためです。

さて、ここで一つ疑問が生まれます。
経営理念やCIでは、リーダーの考え方や姿勢が重要だと述べてきました。ですからここで記していることと相反しているように感じる方もおられるのではないでしょうか。
経営学は、特にマネジメントは米国で発展してきました。ちなみに日本の初期の経営学はドイツ型で、マルクス経済学の視点から発展しており、これを経営経済学と呼びます。
またMBAを始め、例えば自己啓発の分野で有名なマズローなども、欧米の社会規範やキリスト教の価値観が基準となっているため、特に日本人には当てはまらない点があると言われています。
日本人は勤勉さや真面目さ、謙虚さを美徳とし、精神面が重視されがちなので、理論を好まないこともしばしばです。しかしこのことがかえって視野を狭めてしまい、「当たり前」や「真面目」「誠意」という言葉で、説明義務を怠ってしまうことが多いのです。
とはいえ人の心理構造はそれほど変わるものではありません。しかし高い志と広い視野を持っている人ほど、自分の考えに固執せず、適切に学ぼうとします。バブル崩壊以降、「真面目」であることに偏重し、理論を「理屈」としてきた企業が、結果的に衰退しました。

リーダーと組織に必要な脳力は何かを考える時、こうしたフレームワークを活用することで、客観的な判断と効率的な成長が可能となります。

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