見出し画像

【読書録】『服を買うなら、捨てなさい』地曳いく子

今日ご紹介するのは、地曳いく子氏の『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社。2015年。文庫版は2017年)。

地曳いく子氏は、30年を超えるキャリアのある、ファッション誌のスタイリストさんである。本書をはじめ、たくさんのファッションに関する著書をお持ちだ。特に、50代などのオトナのファッションやおしゃれについてのアドバイスが好評で、全国各地で講演も行っていらっしゃる。

そんな彼女の代表作であるこの本は、おそらく、多くの女性が悩んでいるであろう、「少ない服で素敵にみせる」ワードローブの作り方を教えてくれる本だ。

全体として、てきぱきと読者に語りかけるような文体で書かれているので、サクサクと読める。

まず最初に、私たち女性が無意識に持っている、「女子たるもの、こうでなければならない」という思い込みについて、ズバリと指摘する。そして、あっという間に、そういう思い込みから、私たちを解き放ってくれる。ここで目から鱗が落ちる。

そして、思い込みから解放されたら、次は、洋服の断捨離。「捨てたり、整理しなければいけないことは、分かっているけど、なかなかちゃんとできない…。」というような人に、やるべきことを、ポイントを明確にして教えてくれる。

そして、買い物の仕方についても伝授してくれる。どうやったら、数あるアイテムのなかから厳選して、価値のある買い物ができるかについて、有益なアドバイスが満載である。

そうして読み進めていくと、自然と、誰でも、自分らしいスタイルを確立できて、おしゃれな人になれそうだ。悩める女性たちにとっての救世主のような本だ。

以下、特に印象に残った記述を引用しておく。

 バリエーションの呪いとは、「女子は、毎日違う格好をしなければいけない」という、恐ろしく、根深く、理不尽な思い込みのことです。考えてみてください。男性なら、毎日同じスーツでも誰も何とも思わないはず。なぜか女子だけが、極力同じ格好をしないように、毎朝、鏡の前で多大な苦労を強いられているのです。
 ブログや雑誌は、「あなたも、バリエーションを出すためにたくさんの服を持ちなさい」と私たちにメッセージを送ってきます。
 でも、本当にそんなバリエーションが必要なのでしょうか?(p19)
 この「毎日違う格好をしなければ」という思い込みの最も悪いところは、コーディネイトのバリエーションを増やそうとするあまり、微妙な服をワードローブに混ぜてしまうことです。
 (中略)
 ところが、こういう「つい混ぜてしまうイマイチな服」こそ、おしゃれ度を大きく下げている犯人なのです。(p22)
「買うは天国、捨てるは地獄」
 これは、私が雑誌の連載などでよく言っている言葉です。
 買うときは楽しいものですが、捨てるときはものすごいパワーが必要。
 さらに年を経るにしたがって、量が増えて捨てる労力は増しますし、一報で捨てる気力は失われていきます。大量に物を捨てるときには、罪悪感もともないます。(p33)
 一生ファッションを楽しんでいただくためにも、「何でも着こなせるのがおしゃれ」なんていう思い込みは、今すぐここで捨ててしまってください。無理な服には手を出さず、自分の得意分野だけで勝負すればいいのです。(p48)
 物を買うことは悪いことではありません。お買い物は気分も上がりますし、「流行」という今の時代の空気に簡単にコミットできる素敵な手段でもあります。
 ただ、ちょっと思い出してください。「何かを買う」ということは、いつかは「それを捨てなければならない」ということなのです。
 それは私たちが死んだあとかもしれませんが、そもそも「買う」と「捨てる」はセットなのです。人間が、生まれたらいつかは必ず死ぬように。(p186)

私は、ファッションについて、長らく、迷子の状態だった。そして、例にもれず、「バリエーションの呪い」に縛られ、たくさんの種類の服を持っていなければならない、という強迫観念にかられていた。それで、ひととおり、ベーシックなアイテムを買い集めた。これこそが、没個性でイケてないファッションの原因となっていたのだろう。

そうではなくて、もっと、自分の得意分野や、好きな服、似合う服だけにフォーカスすれば良かったのだ。ファッションもビジネスと同じで、「選択と集中」だったのだなあ。

それに気づいて、急に、洋服の断捨離がしやすくなった。

たとえば、最近、クローゼットに眠っていた、白のデニムや、ロングカーディガンなどを、ごっそりと断捨離した。これらのアイテムは、世間ではおしゃれとされていたが、自分の顔や体格に、とても似合わないことに、うすうす気づいていた。それが、今や、これは自分のスタイルではない!という確信に変わり、思い切って手放したのだ。

捨てるときには、ものすごい罪悪感にさいなまれた。これらのアイテムを買ったときに、お店で何度も試着したときのことや、結構なお値段がかかったことを思い出し、胸が痛んだ。まさに「捨てるは地獄」だ。しかし、心を鬼にして、エイヤッと、区のリサイクル回収に持ち込んだ。

すると、なんということでしょう。とても、すっきりした。清々しい気分になった。もう、「この服、いつ着ようか?」と鏡と睨めっこしないで済むのだ。悩んだり、迷ったりする必要がないという状態が、こんなに気持ちいいなんて!

この本のメッセージを心に留めつつ、世間体を気にするのではなく、自分らしく輝けるかどうかを基準に、ファッションを楽しんでゆきたいなと思う。

ご参考になれば幸いです!

断捨離について役立つ本たちをご紹介した、過去の記事もどうぞ!


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,091件

サポートをいただきましたら、他のnoterさんへのサポートの原資にしたいと思います。