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国際会議で生き残るための、日本人の英語(その10・手土産編)

国際会議に手土産を持っていくべきか。持って行くとしたら、どんなものが良いか?

国際会議に手土産は必要か?

結論としては、気にしなくてもいいと思っている。

私の経験上、特に、大人数の会議である場合には、手土産を持ってくる人は、ほとんどいない。

ただ、社内の比較的小人数の会議では、みんなでその場で食べるためのお菓子などを持ってくる人はいる。でも、どちらかというと少数派であると思う。外国の参加者がたまに持ってくるお菓子は、最小限の簡易包装で、日本のデパ地下で買うような、きれいな箱や包み紙などでラッピングされてはいない。

手土産は、日本人特有の「おもてなし」の文化なのだろうなと思う。

好みがわからないなら「消えモノ」

もし、外国からの参加者のために手土産を持っていくなら、いわゆる「消えモノ」がよい。形に残るものでは、もし相手の好みに合わなかった場合、ちょっと気まずいし、捨てるに捨てられず、迷惑をかけてしまうかもしれない。消えモノでないモノを贈るには、相手の好みを知ってからにしよう。

例えば、あるとき、お世話になった外国人の方に、デパートの日本工芸コーナーで一目惚れした、漆(うるし)塗りのペーパーウェイトをプレゼントしたことがある。彼が沢山の書類を読む人であると知っていたからだ。彼はとても喜んでくださり、それからもことあるごとに、それをデスクで使っている、と嬉しそうに教えてくれた。

それに味をしめて、別の機会に、別の外国人の方に、同じペーパーウェイトをプレゼントした。この方のことは、それほどまだよく知らなかった。

彼は、包みを開けた瞬間に、急に複雑な表情となり、「こ、これは、何…?」と言い、明らかな戸惑いの反応を示した。その瞬間、私は、ああ、失敗だ、やってしまった、と気づいた。一応、「すてきだね、ありがとう!」とお礼は言ってくれたが、きっと、彼の趣味には合わなかったんだろう。

以来、よほど親しい外国人の友人以外への手土産は、消えモノにするようにしている。

お菓子がおススメ

「消えモノ」のなかでは、お菓子がおススメである。

お菓子が嫌いな人はそう多くないし、会議は長丁場なので、退屈になったときに、ちょっとお菓子をつまめると気分転換になる。

でも、あまり大袈裟にならないほうがよいと思う。たとえば、一人一人に配って回ると、ちょっと行き過ぎのような気がする。お菓子が嫌いな人や、ダイエット中の人、お腹がすいていなくて欲しくない人もいると思うので、無理にもらってもらおうとするのはよくないと思う。

それよりも、たまたま隣に座った人に、自分が食べるついでに、「あなたも食べてみる?」などと言って、さりげなくオファーするのがスマートだ。

例えて言うと、大阪のおばちゃんが、電車でたまたま隣に座った人に「おねえちゃん、アメちゃん食べるか?」と言って、アメちゃんをあげるようなイメージである(大阪では本当にこのようなことが起きる。)。

この場合、結構な割合で、No, thank you.と、言われ、断られることがあるが、もらってもらえなくても気にしないこと。

あるいは、会議場の後ろや、廊下に置いてある、コーヒーのセルフサービスコーナーに置いておくのもよい。その場合、

"Japanese sweets - help yourself!" 「日本のお菓子です。ご自由にどうぞ!」

とでも付箋に書いて貼っておけばよい。そうすると、コーヒーを取りに行くときに、欲しい人が欲しい分だけ持っていく。

何度かこのようにしたことがあるが、反応は大きく分かれた。全く興味を示さず、見向きもしない人と、ものすごく気に入ってくれて、一人で何個も取って行き、さらに、ワイフの分も持って帰っていいか?と聞いてくるような人がいる。気に入ってくれる人とは、そこから会話が弾んで、とても仲良くなれる。

手土産にオススメの日本のお菓子

では、どんなお菓子を選ぶとよいか。日本らしさを徹底的にアピールするのなら、和菓子がよいと思われるかもしれないが、相手がよほどの日本通、あるいは、日本びいきの人でない限り、強く、洋菓子をお勧めする。

和菓子には、あんこが入っていたり、生地が柔らかかったりと、外国人、特に欧米人には未知の味や食感となる。何度もいろいろな国の人に和菓子を食べてみてもらったが、欧米人は、9割がた、微妙な反応を示した(中華圏・アジア圏の人々だと、結構喜ばれるが。)。

洋菓子なら、大抵の国の人の口に合う。そして、日本の洋菓子のレベルは、めちゃめちゃ高い。色々な国でスイーツを試したが、個人的には、日本がダントツで世界一であると思っている。

以下がわたしのおススメである。

ヨックモックの「シガール」。ご存じの方も多いと思うが、冒頭の写真のお菓子である。パターたっぷりのリッチな味で、サクサクした食感で、日本人にも人気。これは、私の、手土産チョイスNo.1(ばらまき用)である。中東の人が日本で爆買いしていると聞いたことがあるが、中東のみならず、全世界の人々にウケる。ただし、割れて粉々にならないよう、運搬には注意が必要だ。スーツケースに入れず、手荷物に入れて運ぼう。

●まめや金沢萬久の豆菓子。これは、ばらまきではなく、特にお世話になった人に個別に差し上げるときに使う。豆の形をした紙の箱に手書きの美しい絵が描かれている「豆箱」に、豆菓子を入れてくれる。このパッケージの素敵さは、どの国の人にも響く。チョコレートコーティングされたナッツなどを選ぶと、外国人も喜んで食べてくれる。こちらも、ギフトで何度お世話になったかわからない。私の中で、手土産No.1(個別手渡し用)である。

日本でも定番のご当地スイーツ(白い恋人、東京バナナなど)。日本人も大好きなこういったお菓子は、外国人にも安定してウケる。空港でも買えるのがありがたい。

スーパーで売っている菓子類。私がよく使うのが、キットカット(特に抹茶味)、アルフォート、カントリーマアム、チロルチョコなど。こういうお菓子は外国人も好きである。しかもお安く買える。さらに、個包装されたお菓子が沢山入った大袋で買うと、会議でばらまくのに好都合。

外国人から頼まれたお土産の具体例

時々、日本びいきの外国人から、〇〇を買ってきて、と頼まれることがある。ひとえにその人の興味によるので、万人受けはしないだろうが、備忘がてら書いておく。

東京グッズ(スタバのマグ、ハードロックカフェのTシャツ)。複数の国の人からのリクエスト。これはわかる。コレクターは、どこの国にもいる。

●トトロのぬいぐるみ。ドイツ人からの依頼。子どもへプレゼントしたかったらしい。

黒ひげ危機一髪(ゲームのおもちゃ)。アメリカ人から頼まれたのだが、そんなおもちゃが存在していたことをすっかり忘れていたので、ちょっとびっくりした。

●新幹線グッズ。イギリス人からのリクエスト。息子が新幹線の大ファンらしい。新幹線の駅で色々なグッズが買える。

●ハローキティグッズ。台湾の若い女性のリクエスト。

●抹茶パウダー。オーストリア人だったが、お茶の葉ではなく、パウダーがよいと強調していた。

外国人に喜ばれたお土産の具体例

上で書いたおススメのお菓子は、もれなく外国人に喜ばれた。ここでは、お菓子以外の具体例を挙げる。

着物の生地の風呂敷やハンカチなど。女性には大抵、好評である。スカーフにしたり、インテリアにしたりする。ものすごく気に入った人は、その場でスカーフとして首に巻いてくれた人もいた。かさばらないし、溶けたり壊れたりしないので、運搬上も、大変都合がよい。

弁当箱。女性に人気。海外では、弁当箱の種類があまり多くないらしい。大家族の友人には、おせちを入れるような重箱をあげたら、ホームパーティーに使える、と、大変喜んでいた。

漆器、陶器、磁器。和風のものや、徳利にお猪口や、蕎麦ちょこなど、変わった形をしているものが、気に入ってもらえることがある。ただし、好みは分かれる。

寿司マグネット。食品サンプルのマグネットである。合羽橋などで精巧なものを売っているが、最近は、100均でもちょっとした寿司マグネットを売っている。アメリカなどで好評だった。子どもが喜ぶのだそうだ。

洗濯ネット(100均のもの)。これは、お土産に持っていったのではなく、スーツケースに入れる衣類の仕分け用に持っていったもの。現地で私が使っていたら、友人が、その便利さに目をみはり、是非欲しいというので、持っているものを全部あげてきた。

要注意なアイテム

漆器、陶器、磁器など。上記の、漆塗りのペーパーウェイトの話のように、好みが分かれる。日本人としては、和風のものをもらっていただきたいと思うのだが、先方はそれほど興味がない場合も多い。

●箸。これも、漆のきれいな箸などを差し上げたくなるのだが、相手が箸を使えない場合はもちろん、使える場合でも、食洗器に入れられないものは、迷惑かもしれない。

日本酒、梅酒など。そもそも、お酒を飲まない人もいるし、口に合わない可能性も高い。また、スーツケースに入れて万一割れてしまうと大変なことになる。

日本茶、昆布、海苔など日本の食材。日本食テイストが好きでない人、全く興味がない人もいるので、好みを知っておくこと。料理好きだというイタリア人女性に、味付け海苔をあげてみたところ、舌にくっついて気持ち悪い、と不評であった…。

●チョコレート類。夏場は溶けて大変なことになってしまいがちなので、要注意。

和菓子。上記のとおり、外国人にはあまりウケない。また、日持ちがしないことが多い。

えびせん、そばまんじゅうなど。アレルギーがある人がいるので、配るときに、アレルギーの説明をしなければいけない。

現地日本人駐在員へのお土産

現地へ出張した際に、その地へ駐在している日本人の同僚や友人がいる場合がある。その場合に彼らに持っていく手土産はどうするか。

事前に、日本から何か持ってきてほしいものがあるか、と聞く。これに尽きる。リクエストをしてくれれば、何を持っていこうか悩まないし、確実に喜ばれる。以下、日本から持ってきてほしいと頼まれたものを書いておく。

能率手帳。ちょうど秋口に、新しい年の手帳が出るが、外国にいて買えないから買ってきてほしい、とのことだった。

抹茶パウダー。現地で抹茶味のお菓子を作って、現地の人にふるまいたいとのことだった。

●ファブリーズ。香港駐在の日本女性のリクエスト。現地では手に入らなくて困っているとのことだった。

ステンレスのざる。アメリカにいる駐在員のリクエスト。

●超コンパクトの歯ブラシ。小顔の日本女性のリクエスト。現地では巨大な歯ブラシしか手に入らないらしい。

しかし、相手の現地駐在員にリクエストを聞いても、「いや別に、特に何も欲しいものはないよ」という返事のときもある。そのような場合は、こちらでセレクトするしかない。私はいつも、以下のようなものを持っていくことにしている。

日本のお菓子。あらゆる種類のもの。とくに、どら焼きなど、あまり日持ちがしないものは、現地で入手できないのでとても喜ばれる。

日本の食材。お茶、ふりかけ、昆布、フリーズドライの味噌汁、インスタントラーメンなど、ありとあらゆるものの中から、その人の好きそうなもの。

日本の本や雑誌。ネットが発達した今でも、目に入るものが外国語ばかりだと、日本語の活字に飢えるのだろうか、とても喜ばれる。行きの機内で読んだ本や雑誌をそのまま差し上げたりする。喜んでもらえたうえ、帰りの荷物が減って、一石二鳥である。

外国人からもらった手土産

外国人から、出張や国際会議のときに手土産をもらったこと(誕生日とか、何かのお礼とか、お別れのギフトなどの、個人的な贈り物は別です。)は、滅多にないが、数回あった。こちらも、一応、備忘のために書いておく。

●ティーバックの紅茶(イギリス)。ロイヤルファミリーの絵が描かれたパッケージに入ったものをいただいた。やはりイギリス人はロイヤルファミリーが大好きなのだなあと思った。

●マジパン、HARIBO(ドイツ)。このふたつのお菓子はドイツ人からよくいただいた。マジパンは、ニーダーエッガーのものが特に有名。私は現地、リューベックの本店に行ったことがあるが、よくできた展示物や素敵なカフェもあり素晴らしかった。

マーライオンのキーホルダー(シンガポール)。正直言って、これは、微妙な手土産だった。これをくれたシンガポール人の男性は、ご自分がキーホルダーを集めているらしいが、私は、そうではない。使い道がなく、今も机の引き出しの奥に眠っている…。

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私は、ちょっとしたおもてなしで、相手に喜んでもらえると、とても嬉しくなる性質だ。なので、いつも、海外渡航の前は、誰に何を持っていこうかと、結構な時間をかけて考える。そうやってあれこれ思い悩むのが、実はとても楽しい。そうやって、おもてなしをさせてもらえるというのは、幸せなことだなあと思う。

ご参考になれば幸いです。

※このシリーズの前の記事はこちら↓です。


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