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【読書録】『アフリカの王』伊集院静(&マサイ・マラ旅行記)

今日ご紹介する本は、ケニアのマサイ・マラに隣接するオロロロの丘という丘の上に建てられたロッジ(ホテル)、「ムパタ・サファリ・クラブ」の建設にまつわる、実話をベースにした小説、伊集院静氏の『アフリカの王』

この本との出会い

私がこの本を知ったのは、今から約7年前、がむしゃらに働きすぎて、心身ともに疲れ切っていた頃だった。

仕事に追われる無味乾燥な毎日から逃れ、遠く離れた大自然の中でリフレッシュしたいと思った。そこで、上司と交渉し、有給休暇をたっぷり取り、私にとって初めてのアフリカ旅行となる、ケニアのマサイ・マラへ、サファリ旅行を計画した。

そして、マサイ・マラでの宿を調べている最中、こちらのロッジ、「ムパタ・サファリ・クラブ」の存在を知った。そして、このロッジの公式ホームページにたどり着いて、ホームページの紹介文を読んだ。

ホームページの紹介文は次のとおり(2020年12月現在)。

ムパタ・サファリ・クラブ設立の中心的役割を果たしたのは日本人の雑誌編集者でした。取材のため訪れたケニアで画家「Simon George Mpata(サイモン・ジョージ・ムパタ)」と出会ったのが、すべてのきっかけです。ムパタの素朴で力強い絵にアフリカの魂を感じ、とりこになった編集者は、ニューヨークでムパタの個展を敢行、アンディー・ウォーホールやキース・ヘリングといった現代アメリカ・ポップ・アートの巨匠たちから高い評価を受けることになります。その後、日本各地でもムパタ展を催すこととなり、画家本人を呼び寄せようとしましたが、ムパタはその前年、すでに他界してしまいました。

画家の肉体は彼方の世界に行ってしまいましたが、彼の絵、彼の魂に共感したアフリカ好きの同志たちが、彼の魂を永遠に残すためカタチにしたのが彼の名を冠した「ムパタ・サファリ・クラブ」です。

生命科学者であった故ライアル・ワトソン博士を名誉会長に、アーティスト、学者、医者、会社員、主婦など、多岐にわたる人々が会員となり、1992年に完成しました。

ケニアNo.1の野生動物の宝庫、マサイ・マラ国立保護区に隣接したオロロロの丘に建つムパタ・サファリ・クラブは、日本建築界が誇る鈴木エドワード氏の設計による渦巻き状のユニークなコテージ群からなる環境共生ロッジです。フロント・デスクやレストランのあるセンター塔を中心に、23部屋のコテージが、さながら鳥が羽を広げたかのように左右に広がっています。ロッジは、自然光をふんだんに取り入れる全面採光設計により、日中の照明を必要としない、環境に優しい造りとなっています。

ムパタ・サファリ・クラブでは「アフリカを全身で感じとり、自分の言葉で環境を語ることができるようになること」をテーマに、アフリカの知恵、自然から学ぶ、エコ・ツーリズムを実践しています。1996年、このような活動が高く評価されケニア政府からも「Best Lodge in Kenya」として表彰されました。
(https://www.mpata.com/about.html)

そして、この同じホームページに、本日ご紹介する本、『アフリカの王』が紹介されていたのだ。

早速、入手して読んでみた。上・下巻の長いものだったが、一気に読んだ。

ロッジの予約

出版社の編集者、黒田十三が、雑誌の撮影を機にケニアに行った。現地で、画家ムパタの絵と出会い、マサイ・マラに隣接するオロロロの丘に心を奪われ、ロッジを建てることを決意する。そして、賛同してくれる会員を募り、数多の苦難を乗り越えて、それを実現するという物語。

黒田氏のモデルは、実在の人物だ。1人の日本人が、祖国から遠く離れたアフリカの大地で夢を現実にするという壮大な物語に、素直に感動した。

彼にそこまでさせた、オロロロの丘を自分の目で見てみたいし、彼とその仲間が心血を注いだロッジに、どうしても泊まりたくなってしまった。

しかし、このムパタ・サファリ・クラブは、マサイ・マラとその周辺の他のホテルと比較して、宿泊費が、かなり高かった。でも、どうしても諦めきれず、2泊だけこちらに泊まることにした。

そして、部屋のランクは、デラックス・ルームと、スイート・ルームの2種類があるが、大奮発して、庭にジャグジーのついているスイートルームにした。

水が貴重なサバンナの丘で、ジャグジーがついているのは何とも贅沢だが、おそらく一生に一度のこと。後悔のないように、どうしてもその部屋に泊まってみたかった。

そこで、私の旅の流儀、「一点豪華主義」に従った。このホテルで贅沢をする分、他で予算を抑えた。具体的には、ナイロビで泊まるホテルのランクを落とした。さらに、日本からの往路・復路ともに、ドバイの空港で長時間のトランジットがあったのだが、ホテルを取って休憩するのではなく、空港に荷物を預けて外で時間を潰すことにして、出費のメリハリをつけることにした。

以下、このホテルの宿泊記を、写真とともにお届けしたい(写真はすべて2013年時のもの)。

ロッジ宿泊記

広い敷地に、全23室の独立した客室が点在するロッジ。私たちの部屋の目の前には、サバンナの地平線が広がる。それをジャグジーに入りながらリラックスして眺めることができる。夜は満点の星空になる。

こちらはリビングの写真。

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部屋の外はこんな感じ。

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電気は夜22:30までしか使えない。朝は、電話でのモーニングコールはなく、スタッフがロッジの前まで来てくれて、ドアをノックしてくれて、起こしてくれる。大草原の静寂と、漆黒の闇に身をゆだねて眠るのは、非日常的で、とても不思議な気分だった。

ロビーやプールなどの公共エリアも、趣味の良い家具調度品、インテリアに囲まれていて、洗練されていた。お土産屋さんには、センスのよい絵や小物がたくさん置いてあった。

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昼間は、ホテル専用のサファリ・カーで、サファリに連れて行ってくれる。とてもしっかりした案内と説明で、沢山の野生動物との遭遇を満喫した。

また、マサイ・マラの村への日帰りツアーもあった。こちらも丁寧な説明で、満足のゆくものだった。

さらに、サバンナの中で、ピクニックの朝食を手配してくれたりもした。ホスピタリティーが行き届いていた。

マサイマラの女性たち。

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子どもたち。

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夕食は、広々としたダイニングエリアでの洋食フルコース。少しドレスアップして、ゆっくり食事を楽しんだ。「オテル・ドゥ・ミクニ」のシェフである三國清三氏が監修したレストランとのこと(小説では「七國」という名前で登場する)。

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ちなみに、このときの同行者は女友達だったのだが、とてもロマンチックなホテルなので、ハネムーナーや、ご夫婦の記念日旅行などに、超おススメだ。実際、ハネムーナーとも現地で一緒になったが、とても幸せそうだった。

※下記の記事「お気に入り海外ホテル」にも掲載しています(2番目のホテル)。

アフリカの手

さて、小説の話に戻る。この小説に、「アフリカの手」という言葉が出てきたのが心に残った。

アフリカ大陸に一度でも足を踏み入れた者は、知らないうちに「アフリカの手」に抱擁されていて、一度「アフリカの手」に抱かれたものは、それからどんな遠くに離れていっても、生きている間に必ずもう一度アフリカの地へ戻ってくるというのだ(上巻p23, p118)。

私もこの旅で、すっかりアフリカに魅了され、アフリカの手に抱かれた。もう一度でも二度でも、生きている間に、また、アフリカの大地に降り立ってみたい。

出会った野生動物たち

最後に、現地で撮った野生動物たちの写真をどうぞ。

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再びアフリカの大地に身をゆだねられる日が来るといいなあ。

長文の読書録+旅行記におつきあいくださり、ありがとうございました!


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