見出し画像

本当にあった怖い話 ~知らないおじさん編~

ホラー・ストーリーは突然に

今から話す出来事は、私の身に実際起こった恐怖体験である。


休日出勤したある日曜日のこと。

17時から1時間休憩を貰った私は、職場近くのイタリアンレストランで早めの夕食を取ることにした。

そこはホテルの地下1階に入っている食堂街の一画にあり、お目当ての和食屋が休みだったため、やむなく選んだのだった。

「すみませ~ん。」

フロアは30代くらいの男性スタッフが一人で切り盛りしていて、私の入店に気付いていない様子。

私がカウンターに歩み寄ると、彼は慌てて挨拶をした。

「いらっしゃいませ。」

その時、私の後ろに60代くらいの男性の気配を感じたが、次に入店した順番待ちの客だと思っていた。

私はスタッフに「一人です。」と言った。

すぐさま、後ろのおじさんは「2名です。」と言っている。

後ろを振り返ると、彼に連れはおらず私とセットで2名だと主張しているように見えた。

私は気のせいだと自分に言い聞かせ、彼を無視すると、がらんとした店内を見渡しながらどのテーブルに座ろうかと歩みを進めた。

すると奴は「どの席にしようか?こっちがいい?」と、さも当然のように同席しようと近付いてくるではないか。

人生初の恐怖経験

私はただただ困惑した。

「え・・・この人知らないんだけど。」

「私、おじさんの知り合いなんていないし。」

「もしかして、新手のナンパ!?」

「でも、この人は100%疑いのない態度で私と同席しようとしている。」

「このおっさん、頭おかしいのかな!?」

「・・・これは一体どういうこと!?」


困った私はスタッフのお兄さんに駆け寄り、助けを求めた。

きっとその表情は切迫したものだったに違いない。

「私、一人で来てるんです!! この人、知らない人です!!」

しかしそのお兄さんはポカーンとした表情で呆気に取られてるだけで、助けてはくれなかった。

くそう、使えない奴め!!

やはり自分の身は自分で守るしかないのか。


・・・さて、どうする!?

私は混乱した頭を落ち着かせながら、この失礼極まりないめんどくさいおっさんを自分から引き離す言葉を一生懸命考えた。

私はどう考えてもこの人を知らない。

もしかして彼はここで初対面の女性と待ち合わせていて、私をその人と間違えているのではないか!?

そう判断した私は彼の顔を見据え、きつめの口調できっぱりと言った。

「あの、人違いじゃないですか!?」

彼はやっと状況が飲み込めたようだった。

「そうでしたか・・・。すみません。」

そう言うと、そそくさと店を出て行った。

まだまだ続くおじさんの呪い

「勝った・・・。」

招かれざる同伴者をまいた私は、安堵の気持ちで席に腰を下ろした。

メニューを一通り見てピザを頼むと、「さて、明日の代休はどこに行こっかな~?」などと、スマホを取り出し思いを巡らせ始める。


すると、10分前に退店したはずのあのおっさんが女性を連れて向かいのテーブルに着席しているではないか。

「えぇ~!! あんなことがあった後なのに、よく同じ店に入ってこれるよね!?」

先ほどの悪夢が再び蘇る・・・。

二度と見たくない顔をまた見ることになって、心からうんざりした。

二人が話す声が聞こえる度、好物なはずのロマーナピザが味気ないものに思えてくる。

あぁ本当に腹が立つ。

私の貴重な休憩時間を返せ!!

答え合わせと、勝手な推測

しかし、私と勘違いされた相手の女性がどんな人か気になって、そこはすかさずチェックした。

彼女は私と同年代のアラフォー女性で、背格好やロングヘアという特徴も似ている。

マスクを外したその顔は濃いめの美人で、父親くらいの年齢のおじさんと食事をしている姿は、愛人契約をしているカップルにしか見えなかった。
(※極めて個人的な見解です)

二人がレストランを出て行く姿を見た時、ある考えが頭に浮かんだ。

「そういえば、この上はホテルだったな・・・。」

まぁ他人がどこで何をしようがそれは本当にどうでもいいことなのだが、「初対面の人と待ち合わせる時は名前の確認ぐらいしっかりしろよ!!」と、心から思った。

最後の言葉

休憩の時間が終わりに近づいてきたので、会計に進んだ。

レジ担当は、私を助けてくれなかったあのお兄さんである。

一部始終を見ていた彼は、レシートを渡しながら私に予想外の挨拶をした。

「お気を付けて。」


私はまた困惑した。

お気を付けて・・・!?

レストランを出る時、今まで「お気を付けて。」って言われたことあったっけ!?

いや、ない。

それは、レストランで見知らぬおっさんに同席されそうになった私への、注意喚起の言葉なのか。

お兄さんもあの時助けてくれなかったし、自分の身は自分で守れってことか・・・。

私は、「長いことやめていた合気道を再開しようか?」などと、本気で考えたりした。

そして・・・最悪な思い出を残したあの店には、二度と行くまいと心に誓った。

恐怖体験をした私からのメッセージ

生きていると、ある日突然、信じられない人や、信じられない出来事に遭遇することがある。

みなさんには、周りに助けを求める勇気、冷静に判断する思考力、イヤな相手に「NO」と言える強い心を持ってほしい。

それが、私がこの恐怖体験を書こうと思った一番の動機である。

Kindle本『フランス恋物語』次回作出版のため、あなたのサポートが必要です。 『フランス恋物語』は全5巻出版予定です。 滞りなく全巻出せるよう、さゆりをサポートしてください。 あなたのお気持ちをよろしくお願いします。