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OpenAI騒動の中心人物が心変わりしたワケ。裏で動いていた意外な人物とは

こんにちは!最近、自分が人間じゃなかったことが発覚し、ショックを受けている ChatGPT 飼育員の Sayah (@sayah_mediaです(いや、むしろ飼育されていた方だったのかもしれません…)🦍🍌

衝撃の事実😱
(ChatGPT, 2023)
あまりのショックに声のハリがないSayah
文字は読めても空気は読めないジピちゃん

OpenAI のサム・アルトマン氏の復帰が発表されてから、約 2週間。同騒動の発端については、未だに謎に包まれており、メディアや SNS では、さまざまな噂や憶測が飛び交っています

以下は、有力説の一部です。

1️⃣ サム・アルトマン氏とイリヤ・スツケヴァー氏の意見の不一致説:
AI 技術の開発ペースや性質、人類に影響を及ぼす可能性のある潜在的な危害に関する見解の相違

2️⃣ AI の急速な進化やセーフティーへの懸念による内部分裂説:

「Q*」と呼ばれる AGI の開発ペースや、人類に与える脅威を一部従業員が懸念

3️⃣ サム・アルトマン氏とヘレン・トナー氏の不仲説:
ヘレン氏が、論文で「OpenAI の安全性に対する努力を批判し、 Anthropic(競合)のやり方を賞賛した」と、サム・アルトマン氏が不満を吐露

4️⃣ 「Poe」に類似した「GPTs」への反撃説:
アダム・ディアンジェロ氏(高速 AI チャット「Poe」を提供している「Quora」社の CEO 兼 OpenAI の取締役会メンバー)が、上位互換「GPTs」のリリースに激怒し、イリヤ氏をスケープゴートにした説

※一部はあくまでも憶測です

本記事では、AI プロンプトエンジニアの私 Sayah が、「1️⃣ サム・アルトマン氏とイリヤ・スツケヴァー氏の意見の不一致」という説について検証します。

🔸 イリヤ・スツケヴァー氏が黒幕なのか
🔸 イリヤ・スツケヴァー氏が急に心変わりをした理由
🔸 イリヤ・スツケヴァー氏を説得した意外すぎる人物

主に、上記のトピックに焦点を当てて解説するため、ぜひ参考にしてください。


🕵️‍♀️ 未だ解明されないサム・アルトマン解任騒動の発端

待ちに待った GPT シリーズの新モデル「GPT-4.5 Turbo」の発表から、わずか11日後の 11月17日(現地時間)、サム・アルトマン(Sam Altman)氏の突然の解任報道に、世界中が激震しました

突然の解任に至った理由について、OpenAI は「取締役会とのコミュニケーションにおいて、一貫して率直さを欠いた」とだけ述べており、具体的な内容については未だに明言されていません(執筆時点)。

また、現地時間 11月29日(水)、米『The Verge』誌が、サム・アルトマン氏およびミラ・ムラティ(Mira Murati)氏とのインタビュー内容を掲載し、誰もが最も知りたがっている「解任理由」については、ほぼ回答がもらえなかったことを明かしました(Heath, 2023)。

🥷 イリヤ・スツケヴァーは真の黒幕ではなかった?

当初、今回の騒動を首謀したのは、同じく共同創業メンバーの 1人であるにも関わらず、サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)氏に対し、解任発表の直前にこの件を 2人に伝えたイリヤ・スツケヴァー(Ilya Sutskever)氏だと思われていました

米『Bloomberg』誌によると、慎重派のイリヤ・スツケヴァー氏に対し、サム・アルトマン氏のアプローチは対照的で、「OpenAI の開発スピード」や「AI の潜在リスクの軽減」に関する意見の不一致を理由に、2人はしばしば衝突していたそうです(Miller et al., 2023)

しかし、現地時間の 11月20日(月)までに提出された、サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏の復帰を求める嘆願書の 1ページ目に、代表メンバーの 1人としてイリヤ・スツケヴァー氏の名前が入っていたことから、黒幕は別にいるのではないかとの声が上がり始めました。

嘆願書(書簡)の全文は、ダウンロード可能な 14 ページの PDF 付きで、コチラの記事に掲載しているため、気になる方はぜひご覧ください✨

また、11月20日(月)に、同氏が自身の X で「私は取締役会の行動に加担してしまったことを強く後悔しています」と弁明している点からも、取締役会の意向に一時は同調したものの、同騒動を主導した人物ではないことが予想されます(Sutskever, 2023)。

🙅‍♂️ サム・アルトマンがイリヤ・スツケヴァーへの悪意を否定

前述のとおり、解任発表直後はイリヤ・スツケヴァー氏に対して、同騒動の首謀者だと疑う人も少なくありませんでした。

今でもメディアや SNS 上では、一定層から「Betrayer(裏切り者)」「Sneaky(ズルイやつ)」「Waffler(意見をコロコロ変えるやつ)」のような痛快なコメントが散見されます

しかし、OpenAI の共同設立者メンバーの付き合いは、決して浅く短いものではありません

イリヤ・スツケヴァー氏は、元々「Google Brain(グーグル・ブレイン)」の研究者でした。その後、サム・アルトマン氏とイーロン・マスク氏に引き抜かれ、2015年に OpenAI を共同設立しています。

サム・アルトマン氏は、現地時間 11月29日(水)に公開した、新生 OpenAI の新体制に関する公式ブログで、以下のようにイリヤ・スツケヴァー氏への想いを語っています

僕はイリヤを愛し、尊敬しています。彼はこの分野における模範となる人物で、人間国宝のような存在です。僕は彼に対して全く悪意を抱いていません。イリヤはもう取締役会メンバーではありませんが、OpenAI で彼がどのような形で仕事を続けられるかについて、話し合っているところです。
(筆者訳)

(Altman & Taylor, 2023, para. 4)

💐 イリヤ・スツケヴァーもサム・アルトマンの復帰を祝福

現地時間 11月22日(水)にイリヤ・スツケヴァー氏も、OpenAI が公式 X でサム・アルトマン氏の復帰をアナウンス後に、OpenAI の投稿を引用リポストし、祝福の言葉を残しています

There exists no sentence in any language that conveys how happy I am:
どんな言語でも表せないほど、私は最高に幸せです。
(筆者訳)

(Sutskever, 2023)

これらのやりとりを見ても、私たち第三者が想像している以上に、2人が強い絆で結ばれていることが感じられます。

また、サム・アルトマン氏の寛大な心にも圧巻です👏

📷 グレッグ・ブロックマンも2ショットを投稿

サム・アルトマン氏の復帰発表から 1週間以上経った 12月1日(金)11時20分(現地時間)、グレッグ・ブロックマン氏も「❤️」のキャプションと共に、イリヤ・スツケヴァー氏との 2 ショット写真を X にアップしました。

肩を組みながら満面の笑みを浮かべている写真からは、偽りの笑顔ではなく、本当に嬉しそうな様子や 2人の親密さが伝わってきます。

共同創業メンバー同士、元々仲の良かった 2人。イリヤ・スツケヴァー氏も、グレッグ・ブロックマン氏の Post を引用して「❤️」の絵文字を送り返しています。

👥 イリヤ・スツケヴァーを説得した意外な人物とは

前述のとおり、当初サム・アルトマン氏の CEO 解任とグレッグ・ブロックマン氏の取締役会解任において、中心的な動きを見せていたイリヤ・スツケヴァー氏

共同創業メンバーの 1人にも関わらず、事前に報告したり話し合いの場を設けたりすることなく、発表の直前に取締役会で決定した事項を「仲間」2人に知らせたことが発覚するや否や、同氏が騒動の黒幕だとする声が多くあがっていました

しかし、前述したとおり、3日後には X に後悔の気持ちを表明し、2人の復職を求める嘆願書にも、代表メンバーの 1人として署名するなど、取締役会側ではなくサム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏側のサポートに回っています

解任発表から復帰までの流れが知りたい方は、時系列で詳しくまとめているため、コチラの記事をご覧ください。

11月17日(金)に電撃解任が発表されてから、11月20日(月)に嘆願書が提出されるまでの数日間で、一体何がイリヤ・スツケヴァー氏の考えを 180 度変えたのでしょうか。

ここでは、イリヤ・スツケヴァー氏が心変わりをした理由や、心変わりをするキッカケとなった意外な人物この数日間で何が起こったのかなどについて解説します。

🗝 イリヤ・スツケヴァーが心変わりをしたキッカケ

米『Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)』誌が関係者に聞いた話によると、イリヤ・スツケヴァー氏が心変わりをしたキッカケは、なんとグレッグ・ブロックマン氏の妻であるアンナ・ブロックマン(Anna Brockman)氏との話し合いだったそうです(Metz et al., 2023)。

単なるビジネスパートナーとしてだけではなく、友人としても強い絆と友情で結ばれていた、イリヤ・スツケヴァー氏とグレッグ・ブロックマン氏。

しかし、今回の裏切りともいえる行為を受け、グレッグ・ブロックマン氏の妻であるアンナ・ブロックマン氏は、イリヤ・スツケヴァー氏に、夫とサム・アルトマン氏の解任決定を撤回するように、泣きながら懇願しました(Metz et al., 2023)。

このアンナ・ブロックマン氏との対話が、イリヤ・スツケヴァー氏の心を動かし、自分が解任を伝えた 2人の復帰を求める嘆願書に署名をするキッカケになったといわれています。

👬 絶大な絆で結ばれていたイリヤとグレッグ

グレッグ・ブロックマン氏が、妻のアンナ・ブロックマン氏と結婚したのは、2019年のことです👰💓🤵

その際に、ブロックマン夫妻の民事婚式(Civil Ceremony)で、司式者(Officiant)という非常に重要な役割を務めたのが、イリヤ・スツケヴァー氏でした

この式は OpenAI のオフィスで行われ、ロボットの手が「Ring bearer(リングベアラー:新郎新婦のもとへ結婚指輪を運ぶ係)」の役割を担ったとのことです💍🤖💒

✅「民事婚式(Civil Ceremony)」とは、アメリカで一般的な、教会や宗教的な儀式を伴わない法的な結婚式を意味します。

「司式者(Officiant)」の主な役割は、結婚式を進行し、法的な結婚の宣言を行い、カップルが誓いの言葉を交わすプロセスを導くことです。よく混同される「司会者」が、式全体の進行を担当するなど、よりイベントの幹事的な役割を担う一方で、司式者は結婚式の法的な側面を担当します

結婚式という、一生思い出に残る「人生の一大イベント」において、ブロックマン夫妻がイリヤ・スツケヴァー氏に司式者を任せたことは、夫妻が同氏に対して絶大な信頼と尊敬を持っていることの表れだといえるでしょう。

「それなのになぜ?」といった様子で、涙を流しながら真摯に訴えかけるアンナ・ブロックマン氏の姿を見て、イリヤ・スツケヴァー氏も改めてビジネスや自分のキャリアよりも大切なものに気づかされたのかもしれません。

✍️ イリヤ・スツケヴァーが心変わりしたキッカケまとめ

結果的に、大切な仲間たちを裏切るような形となってしまった、イリヤ・スツケヴァー氏。この代償は大きく、1度失ってしまった信頼を取り戻すことは、決して容易ではありません

しかし、取締役会側の立場から、サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏側に回り、復帰への支援を行うことは、相当な覚悟や決意があってのことだと思います

なぜなら、その決断によって、元・取締役会メンバーから怨みを買う可能性や、メディアやネットユーザーからバッシングを浴びる可能性、OpenAI から解任される可能性、周りから「どっち付かずな人」だと評価されてしまう可能性もあるためです。

また、たとえ OpenAI に残れたとしても、今まで通りに働けるわけではありません。チームの信頼を取り戻し、これまでのような環境で働けるようになるには、少なからず時間がかかるはずです。

それにも関わらず、これらのリスクを考慮したうえで、今回の決断をしたイリヤ・スツケヴァー氏の勇気は賞賛に値します

今回のクーデター未遂は、最終的にサム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏のリーダーシップや懐の深さ、OpenAI のリーダーたちの強い絆を世間に知らしめると共に、OpenAI チームの団結力や結束力をさらに強める結果となったといえるでしょう。

📚 References

Altman, S., & Taylor, B. (2023, November 29). Sam Altman returns as CEO, OpenAI has a new initial board. OpenAI. https://openai.com/blog/sam-altman-returns-as-ceo-openai-has-a-new-initial-board

Dastin, J., Tong, A., Sriram, A., & Hu, K. (2023, November 19). OpenAI appoints new boss as Sam Altman joins Microsoft in Silicon Valley twist. Reuters. https://www.reuters.com/technology/openai-execs-invite-altman-brockman-headquarters-sunday-the-information-2023-11-19/

Heath, A. (2023, November 29). Sam Altman explains being fired and rehired by OpenAI. The Verge. https://www.theverge.com/2023/11/29/23982046/sam-altman-interview-openai-ceo-rehired

Juneja, A. [@ajayjuneja]. (2023, November 21). [Image]. [Post]. X. https://x.com/ajayjuneja/status/1727117041977766182?s=20

Lee, J. M. (2023, November 30). OpenAI is a nonprofit-corporate hybrid: A management expert explains how this model works − and how it fueled the tumult around CEO Sam Altman’s short-lived ouster by  – The Conversation – CILG. CILG (Center for International Law & Governance). https://sites.tufts.edu/cilg/2023/11/30/openai-is-a-nonprofit-corporate-hybrid-a-management-expert-explains-how-this-model-works-%E2%88%92-and-how-it-fueled-the-tumult-around-ceo-sam-altmans-short-lived-ouster-by-alnoor-ebrahim/

Metz, C., Mickle, T., & Isaac, M. (2023, November 21). Before Altman’s ouster, OpenAI’s board was divided and feuding. The New York Times. https://www.nytimes.com/2023/11/21/technology/openai-altman-board-fight.html

Miller, H., Stone, B., Ghaffary, S., & Vance, A. (2023, November 18). Silicon Valley boardroom coup leads to ouster of an AI champion. Bloomberg.com. https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-11-18/openai-altman-ouster-followed-debates-between-altman-board

Seetharaman, D., Jin, B., & Hagey, K. (2023, November 21). OpenAI investors keep pushing for Sam Altman’s return. WSJ. https://www.wsj.com/tech/openai-employees-threaten-to-quit-unless-board-resigns-bbd5cc86

Sutskever, I. [@ilyasut]. (2023, November 20). I deeply regret my participation in the board's actions. I never intended... [Post]. X. https://x.com/ilyasut/status/1726590052392956028?s=20

Sutskever, I. [@ilyasut]. (2023, November 22). There exists no sentence in any language that conveys how happy I am... [Post]. X. https://x.com/ilyasut/status/1727434066411286557?s=20

Sutskever, I. [@ilyasut]. (2023, December 5). I learned many lessons this past month. One such lesson is that... [Post]. X. URL not available

Tong, A., Dastin, J., & Hu, K. (2023, November 22). OpenAI researchers warned board of AI breakthrough ahead of CEO ouster, sources say. Reuters. https://www.reuters.com/technology/sam-altmans-ouster-openai-was-precipitated-by-letter-board-about-ai-breakthrough-2023-11-22/


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