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菌ちゃん野菜作り日記その2

 菌ちゃんが増えるのを今日から三日待たなければならない。昨日は0日目らしい。やることがない。でもその間にも菌ちゃんは窓辺のダンボール箱の中で指数関数的な数で増え続ける。菌は三十分で子供を産む。つまり三十分で二倍に増える。二倍に増えたのがその三十分後にまた二倍、二倍、二倍。三十分ずつ2のN乗のNに1プラスされていく。Nプラスワン。もう二十四時間は経ったので今んとこ2の48乗。だいたい280兆。国家予算も大きく越える、とんでもない量の菌のシステムをおれは部屋の中で爆弾魔みたいに密

    • 菌ちゃん野菜作り日記 その1

       めっちゃ元気になるよ、と母親が、菌ちゃん農法で作ったふりかけ『菌ちゃんげんきっこ』を送ってくれた。朝ごはんがわりに味噌と熱湯で溶いたのを飲んだりしているうちに本当に「めっちゃ元気」になるのを実感し、気づいたら菌ちゃん野菜作りが体験できるキット『リビングファームキット』を購入していた。それが今日到着した。別に首を長くして待っていたわけではないが、届いたら届いたでほくほくした気持ちになった。生ゴミを使って土を醗酵させ高い栄養価の野菜を育てる、それが菌ちゃん農法。  仕事終わりに

      • 『羅生門』芥川龍之介 構造

        下人が羅生門の下でずっと待っている、この叙述の三回ほど繰り返す間に京都の町の説明、描写が入る。 その後下人のこころの様子(盗人になるか、ならないか) 結局羅生門をねぐらにさだめて、梯子に足をかける。 ここでポイント 「それから、何分後かの後である。羅生門の楼へ出る、幅の広い中断に一人の男が、猫のように身を縮めて、息を殺しながら、上を容子を窺っていた」 上記文章から始まる段落にて、プロローグが終わる。これ以前の段落は説明に多く文章が割かれていたが、以降はほぼなくなる。 プロロ

        • 第五回高円寺ブッククラブ

           全然告知ができておらず申し訳ありません。  第三回はハン・ガン『菜食主義者』 第四回はジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』を読みました。今回はルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』を読みます。  はずれものの声が目の中ではじけるような、時にほくそ笑み、時に胸をギュッつかまれ、読後、小説ってマジで最高だな……とため息つくような短編集です。  訳は岸本佐知子さんです。岸本さんの豊かな言葉の窓を通して、ルシア・ベルリンの小説をのぞいていきましょう。   なお豊かな言葉といっても、そ

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          第三回高円寺ブッククラブ Tips

          ・夫(自信がない 会社に追いたてられる 月給が存在価値 地味な女を選ぶ)夢の中でつるされた肉 ・なぜ妻は眠れないのだろう ・暴力の主体となることを恐おそて暴力をふるわれる(暴力をふるわれるのをおそれて暴力の主体となる) ・何から清浄であろうとしたのか、そもそも清くあろうとしたのか、どういうものでありたかったのか ・肉、とは(社交の道具≒規範=暴力)←だけ? ・食欲と性欲の違い ・食事、料理、という言葉の裏側にある暴力衝動 ・数えきれないほど見てきた顔のようだったけど、あたし

          第三回高円寺ブッククラブ Tips

          第二回高円寺ブッククラブ Tips

          ・みさきとソーニャ ・家福とワーニャ ・高槻とアーストロフ(ワーニャ) ・他者に自分を背負わせること ・家福の罪 ・仕事をすること(家福に残ったのは仕事をすることだけ? ワーニャにとって仕事とは) ・さらけ出すこと 「チェーホフは演じ手をさらけ出してしまう」 家福、ワーニャのさらけ出し  ・さらけ出せる場所としての他者の場所 ・「相手に自分を差し出す」こと ・場に闖入する記憶 ・他者の記憶 ・他者の記憶としてのワーニャ伯父さん ・「チェーホフのテキスト

          第二回高円寺ブッククラブ Tips

          第二回高円寺ブッククラブ/映画?

           三月十九日(土)十六時~十八時に第二回高円寺ブッククラブを開催します。今回の課題図書は『ワーニャ伯父さん』です。 若い姪と二人、都会暮らしの教授に仕送りしてきた生活。だが教授は…。棒に振った人生への後悔の念にさいなまれる「ワーニャ伯父さん」  チェーホフ四大戯曲のうちの一つ、有名というのが憚られるほど有名な作品です。古本屋の百円棚に刺さっているのをよく見かけてきたことかと思います。いつでも読めるもんだと高をくくって、私自身は未読でした。実際読んでみると二時間くらいで読了

          第二回高円寺ブッククラブ/映画?

          二月の高円寺ブッククラブ

           ご連絡が遅くなりました。二月の高円寺ブッククラブはコロナ再流行ということもあり延期とさせていただきます。次回は三月十九日(土)十六時~十八時を予定しております。三月の詳細・課題図書については別の投稿にてお知らせいたします。

          二月の高円寺ブッククラブ

          これからの高円寺ブッククラブ概要

          毎月一回、第三土曜日16~18時に開催することとなりました。コーヒーとお茶菓子がついて会費500円、6名までご参加いただけるのは変わらずです。現在コロナウイルスが再流行しているため、二月の開催については様子を見ております。決定次第、なるべく早くこちらで告知をいたします。 1月の読書会の様子についても追って記事を公開しますので、お待ちくださいませ。

          これからの高円寺ブッククラブ概要

          現コロナ状況下での1月読書会について

           場をお借りするコクテイル書房の店主の方と話し、1月読書会については通常通り開催することとなりました。オミクロン株等、懸念すべき要素はあるかと思いますので、キャンセルされたい方は遠慮なくおっしゃっていただければと思います。状況の推移の仕方によっては、中止することももちろん検討しております。  オンラインでの開催も考えました。が、この読書会は、CPUによって合成された音声や画像によってではなく、なまの人間の声や振舞、視線、を一コンマのずれもなくリアルタイムで駆使して読書体験を

          現コロナ状況下での1月読書会について

          大坊珈琲店のマニュアル

           行ったこともないのに大坊珈琲店という喫茶店に憧れている。大坊珈琲店は二〇一三年に閉店したからもう行くことが叶わない。大坊さんは今まで本を何冊か書かれていて、一番有名なのがこの『大坊珈琲店のマニュアル』だと思う。美学とも哲学ともちょっと違う、大坊さんの珈琲への詩情みたいなものがつらつらと書いてある。それを日々読み返しながら、もう行くことのできない喫茶店に思いをはせている。店内は暗く、焼杉のような色で統一されていたらしい。お前はここにいてもいいぞ、と言われている気がして、そんな

          大坊珈琲店のマニュアル

          高円寺ブッククラブ概要+一月の課題図書

           以前告知した読書会を、高円寺ブッククラブと題して、一月より月二回開催します。毎月一つの課題図書を前半・後半に分けて読んでいきます。第二・四土曜日に、高円寺はコクテイル書房にて。時間は16時~18時。私(小林)を除いて6名まで参加いただけ、コーヒー・お茶菓子代として会費500円をいただきます。まだまだ疫病も終息したとは言い難いので、飲食中以外はマスクの着用をお願いいたします。18時以降はコクテイル書房の通常営業となるので、お酒を飲まれる方はそのまま残っていただくのもよいかと思

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          読書会、はじめます

           どこか田舎のひなびた庵に閉じこもって、晴れの日は耕し、雨の日は読み、そういう生活にあこがれはしても、実際にそう生きていくことは難しい、それがわかったのが、このコロナ禍、だと思います。  ここ約二年、狭いアパートにこもって、テレワークをしてきました。実家は瀬戸内にあるので、家族からも離れ、長年住んできた都心で作った家族などおらず、たまに友人に会ったりしてはいますが、基本的には一人。誰とも言葉を交わすことなく、一日が終わっていく。孤高な感じで生きていきたい、とうそぶいてはみて

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          わたしは力の中にただあった

           イエスキリストは大工ヨセフと乙女マリアの接合の末に生まれたわけではなかった。マリアは聖霊によって身ごもった。それはイエスがその誕生から神の子であったことをあらわしているわけだが、『南無阿弥陀仏』(柳宗悦著)を読んでいて、また別のとらえかたもできるのではないかと思った。(柳宗悦が直接処女懐胎について言及しているわけではない)  最近逗子という海の街に引っ越した。秋口の逗子海岸に椅子を出して箱根の山稜や水平線をながめていると、 自分はどこから来たのだろう、そんな疑問というか疑

          わたしは力の中にただあった

          関西風うどん

          その通りはズダ猫通りとよばれていた。緑が小学生のころ、ズダ袋みたいな猫がその細い道の真ん中にいつも座っていた。顔の青い白い近所の大学生に猫いらずを飲まされてその猫は死んでしまった。ある冬のことだった。緑は冬になると、店の前のその通りを眺めながら、その猫が死んでも別に悲しくならなかったことをいつも思い出している。  猫が死んでから店の前の通りにはしばしば汚らしい犬や人間がかわるがわるあらわれ始めた。みんなぶっちょう面で、あの猫が生まれ変わったようだった。店をついでから白髪を染め

          関西風うどん

          語学系男子のススメ ――リケジョからゴガダンへ――

           最近、リケジョ、という言葉を良く耳にする。ご存知のようにリケジョ、とは『理系女子』を略した言葉である。なぜ今になって、理系の女子についての名称が生まれたのだろうか。ふと考えてみた。 誤解を全く恐れずに言うと、言語論では『名付けることによって事物が初めて存在する』というのが定説である。事物の存在に先んじて、名前がある。これに従うと、リケジョ、という名称が生まれるまで、理系には女子学生が一人もいなかったということになる。理系女子という言葉がそもそもなかったからだ。アンサイクロ

          語学系男子のススメ ――リケジョからゴガダンへ――