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巣ごもり2DK─2020年5月1日~5月3日

2020年5月1日
 従来、個人情報は政府を始め公共機関がコストをかけて集める物だったが、ビッグデータ時代においては事情が異なる。商品の購入やサービスの利用を通じて、民間企業に個人情報が集まってくる。こうした状況下、データ分析会社「ナウキャスト」がクレジットカードの利用実績を用いて年代間の「自粛率」の差異を会席・公表している。

 『NHK』は2020年5月1日 5時07分更新「クレジットカードで分析『自粛率』に世代差 新型コロナ」においてそれを次のように伝えている。

外食や娯楽などでクレジットカードが使われた実績から、人々がどれだけ自粛をしているかを分析する「自粛率」を民間の会社が算出しました。4月前半は、外食で20代の自粛率が低かった一方、ゴルフなどの娯楽は70代で低く世代によって自粛の行動に差が出ていることをうかがわせています。
調査は、データ分析会社「ナウキャスト」が行いました。
4月1日から15日の間に首都圏に住む男性のクレジットカードの利用実績から、個人が特定されない形で、ある項目に支出した人の割合が新型コロナウイルスの影響がなかった場合の推計値と比べてどの程度減ったかを分析し、年代別の自粛率として算出しました。
それによりますと「外食」は、30代前半、40代前半とも自粛率は50%余りでしたが、20代後半は36%余りでした。
中でも「居酒屋」は、30代から60代までいずれも70%を超えましたが、20代後半は59%余りでした。
一方、映画やゴルフなどの「娯楽」は、20代後半から50代前半まではいずれも70%を超えましたが、55歳以上は年代が上がるとともに低下傾向で70代前半は47%余りにとどまりました。
調査を行った東京大学大学院の渡辺努教授は、「30代や40代は自粛が活発だが若い世代や高齢者の自粛度合いの弱さが顕著だ。自粛率でそれぞれの状況を把握してもらい自粛に向けた前向きな姿勢を生み出したい」と話しています。

 ユーザーは、自覚のないまま、個人情報を企業に教えている。自ら進んで情報収集に協力しているわけだ。それは詐欺に似ている。自覚しないで被害者が加害者に犯罪の協力をしてしまうのが詐欺だ。もちろん、違法な手法を使わない限り、企業の個人情報収集は犯罪ではない。ただ、情報を知らぬままに相手に与えている構造は似ている。

 また、高野遼記者は、『朝日新聞』2020年5月1日 12時00分更新「新型コロナ『経済封鎖せずに抑え込める』 科学者が提唱」において、イスラエルの著名なコンピューター科学者による感染制御と経済活動の両立に関する提案を紹介している。感染拡大の抑制と経済停滞の回避の両立を各中央・地方政府が模索している。それに対する提言として、ヘブライ大教授アムノン・シャシュア(Amnon.Shashua)は、2020年3月27日、「経済をロックダウンせずにコヴィット19を内包できるのか(Can we Contain Covid-19 without Locking-down the Economy?)」を発表している。彼はクルマの自動運転技術で世界のトップを走る「モービルアイ(Mobileye)」の創業者兼任CEOでもある。自動車技術は利便性と安全性の両立の課題があり、それに通じるとして論文を執筆したと言っている。

 未知のウイルスだけに、不明な点が多い。そこで、教授はコンピュータを用いて、不確定な要素の中で最悪のケースを避けるための条件を導き出す計算を行い、結果を論文にまとめている。

 提案は、さまざまな条件も考慮しているが、67歳以上と基礎疾患を持つグループをハイリスク、それ以外をローリスクと分け、前者には外出制限を課し、後者には経済活動を再開するというものだ。医療資源はハイリスクとローリスクの中の重傷者に割り当てればよいので、制度崩壊も避けられる。ワクチン開発や集団免疫の形成が認められたら、ハイリスクグループの制限を解除する。

 人々を区別する政策には、社会的コンセンサスが不可欠である。こうした分離政策は分断や対立を招きかねないからだ。しかし、それ以前に、この提案は解除の前提に楽観主義がある。集団免疫は人口の60~70%の感染者数が必要なので、先日公表されたオーストリアのデータから見て、その形成を期待することは現実的ではない。また、ワクチン開発は通常1年以上かかるので、2020年内には困難とされている。普及となるとさらに時間を要し、ハイリスクの制限解除は1年以上先になる。社会を二つに分け、一方は自由に外出、もう一方はゲットーの如く隔離することを1年以上続けることが現実的アイデアとは到底思えない。むしろ、実行再生産数を始めとした指標を参考にして慎重に段階的制限緩和をとる方が賢明だろう。

 夕食は、ミートソース、キャベツスープ、野菜サラダ、食後は緑茶、干し柿。屋内ウォーキングは10014歩。都内の新規陽性者数は112人、死亡者6人で計126人。

参照文献
「クレジットカードで分析『自粛率』に世代差 新型コロナ」、『NHK』、2020年5月1日 5時07分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200501/k10012413251000.html?fbclid=IwAR2CHkaYSK0T19cDU7XLphQY0ajYg1zfkPpxu6G3yMjnN_93H6vmefiD-bU
高野遼、「新型コロナ『経済封鎖せずに抑え込める』 科学者が提唱」、『朝日新聞』、2020年5月1日 12時00分更新
https://digital.asahi.com/articles/ASN4Z3FGFN4YUHBI004.html?pn=11


2020年5月2日
 夏のような暑さで、マスクを着けて外を歩くと、下唇の下に汗が溜まる。

 国際労働機関(ILO: International Labour Organization)の事務局長(Director-General)であるガイ・ライダー(Guy Ryder)が5月1日のメーデーに際して、朝日新聞にパンでミックと労働をめぐる論文を寄稿している。新聞を始め日本の報道機関は東アジア人以外の人物に言及する際、スペルを併記しないことが多い。読者が発展的に考えるため、それを記しておくべきだ。

 藤えりか記者が『朝日新聞』2020年5月2日 12時30分更新「ニューノーマルを問う メーデーにILO事務局長が寄稿」において次のように抄訳している。

 新型コロナ時代に私たちの多くが直面する大きな課題は、いかに自身や家族をウイルスから守り、仕事にしがみついていられるかだ。政策策定に携わる人々にとっては、いかに経済に取り返しのつかない打撃を与えずにパンデミックに打ち勝てるか、だろう。
 現在、ウイルスの感染者は世界全体で300万人を超え、死者は約21万7千人に達し、年の半ばまでに3億500万人相当の仕事が失われると予想されている。それだけに(課題を乗り越えられるかは)これ以上ない大きな賭けだ。各政府は、地球規模の課題に必要な地球規模の対応を築き上げるため、より大きな利益に目をつぶりつつ、最適解を求めて科学的知見に従い続けている。
 新型コロナへの戦いにまだ勝ってもいない中で、勝利後の社会組織のあり方や働き方について「ニューノーマル」が私たちを待ち受けている、と言われ始めているが、これには納得しかねる。なぜなら「ニューノーマル」がどんなものになるのか、誰にも断言できないように思えるうえ、発信されているメッセージは私たちが選び取ったものではなく、むしろ、このパンデミックが課した制約に影響を受けたものだからだ。
 これは以前も耳にしたことがある。2008~09年の金融破綻(はたん)の際にまるでムード音楽のように唱えられたのは、過剰な金融投資という「ウイルス」への「ワクチン」がひとたび開発・適用されれば、世界経済はより安全かつ公正で持続可能になるという説だった。だが、そうはならなかった。「オールドノーマル」が猛烈に復活し、労働市場の低層にいる人たちは、自分たちがより一層置き去りにされていると気づかされた。
 国際的な労働者の日である5月1日のメーデーは、「ニューノーマル」をより子細に考える機会となる。すでに多くを持つ人のためではなく、明らかにわずかしか持たない人たちのための、よりよいノーマルの構築に取り組み始める機会だ。
 今回のパンデミックは、働く世界において、とてつもない不安定さと不正義を最も残酷な形であらわにした。(途上国を中心に)働く人の10人中6人が頼みとする「非公式(インフォーマル)経済」の生計手段の破壊。最も裕福な国ですら、何百万もの人たちが困窮状態へと追いやられた社会保障制度の重大な欠陥。毎年300万人近くが仕事で命を落とす、職場の安全上の失策。そして、歯止めのきかない不平等。医学用語で言えば、ウイルスは感染者を区別しないが、最も貧しく無力な人たちを残酷にも差別している。
 これら全てにおいて驚くべきなのは、私たちがまさに驚いている点である。パンデミック以前は、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の明らかな不足について、主として個人の絶望の物語として語られてきた。これを世界がいま直面する社会全体の大変革へと形づくるためには、新型コロナの大惨事まで待つこととなった。だが、常にわかっていたことだが、私たちはただ、注意を払わずに済ませてきた。作為、不作為にかかわらず、政策の選択は概して、問題を和らげるよりも強めてきた。
 キング牧師は52年前の暗殺前夜、ストライキ中のごみ収集作業員への演説で、あらゆる労働に尊厳があるのだと世界に思い起こさせた。今、ウイルスは同様に、このパンデミックにおいて必要不可欠で時に英雄的な役割を担う働き手に光を当てている。普段なかなか人目につかない、医療従事者や清掃員、スーパーのレジ係、運輸業界のスタッフといった人たちだ。彼らは非常にしばしば、ワーキングプアや不安定な労働者にも数えられてきた。彼らや、さらに何百万もの人たちの尊厳の否定は、過去の政策の失敗や、将来負うべき責任の象徴だ。
 来年のメーデーには新型コロナの差し迫った緊急事態が去っていると信じている。だが私たちの前には、気候変動やデジタル変革、人口動態の変化といった、もはや先延ばしできない恒常的な課題と共に、このパンデミックが光を当てた不公正に取り組む作業が待っているだろう。これこそがより良いノーマルとして、20年の世界的な緊急事態がもたらす長期的レガシー(遺産)となるべきだ。

 これは今回のパンデミックをめぐって思想家や作家などが発する予言者ぶったり、正常性バイアスに囚われたりする口調と違う。ライダー事務局長は社会に於ける自らの位置づけを認識しているので、労働問題からのみパンデミックについて考察している。それに比して、思想家や作家は自身の存在意義を示すために、主張が拡張的である。

 事務局長はこの時代における課題は、感染対策に加えて「いかに仕事にしがみついていられるか」だと指摘する。パンデミックはかねてより改善すべきとされてきた労働問題を増幅させている。これまで、それがわかっていたにもかかわらず、「私たちはただ、注意を払わずに済ませてきた。作為、不作為にかかわらず、政策の選択は概して、問題を和らげるよりも強めてきた」。ただ、このウイルスは「必要不可欠で時に英雄的な役割を担う働き手に光を当てている」。「医療従事者や清掃員、スーパーのレジ係、運輸業界のスタッフ」は人目につきにくく、「非常にしばしば、ワーキングプアや不安定な労働者にも数えられてきた。彼らや、さらに何百万もの人たちの尊厳の否定は、過去の政策の失敗や、将来負うべき責任の象徴だ」。

 ライダー事務局長はパンデミックによる「ニューノーマル」が「オールドノーマル」にとって代わるという見方にも慎重である。リーマン・ショックの時にも同様の楽観論があったが、「オールドノーマル」の強烈な巻き返しがあり、元の木阿弥に陥ってしまう。だから、「気候変動やデジタル変革、人口動態の変化といった、もはや先延ばしできない恒常的な課題と共に、このパンデミックが光を当てた不公正に取り組む作業が待っているだろう。これこそがより良いノーマルとして、20年の世界的な緊急事態がもたらす長期的レガシー」としなければならない。

 パンデミックを契機に世界が変わる、あるいは変えるのではない。その経験を通じて明らかになった諸問題を改善して「より良いノーマル」を築くべきとする提言は地に足がついている。仮装・現実空間に溢れる夜郎自大の言説とは異なっている。必要なのは予言者や長老ではない。社会的エンジニアだ。

 夕食には青梗菜のタイ風炒め、サバと豆腐の味噌汁、野菜サラダ、ウリの粕漬け、キュウリの古漬け、長芋の酢漬け。ウォーキングは10735歩。都内の新規陽性者数は160人。

参照文献
藤えりか、「ニューノーマルを問う メーデーにILO事務局長が寄稿」、『朝日新聞』2020年5月2日 12時30分更新
https://digital.asahi.com/articles/ASN5172Y1N51ULFA012.html?pn=2


2020年5月3日
 新型コロナウイルス禍をめぐって報道関係者の犠牲も世界において、残念ながら、出ている。エフゲニー・オディノコフ(Evgeny Odinokov)記者は、『Sputnik日本語』2020年5月2日13時47分更新「世界23か国で55人のジャーナリストが新型コロナで死亡=報告書」において、その実態を次のように伝えている。

新型コロナウイルスへの感染により、世界23か国であわせて55人のジャーナリストがこれまで死亡した。メディア関係者の安全について取り組む独立組織プレス・エンブレム・キャンペーン(PEC)の報告書で明らかになった。
5月3日の世界報道自由デーに寄せて、PECはCOIVD-19により死亡したジャーナリストに関する報告書を発表した。
報告書によれば、ジャーナリストは現在、新型コロナウイルスの感染者が入院する病院で取材活動を行うなど、日常的にウイルスの脅威にさらされれている。
PECの統計によれば、ジャーナリストの死者が最も多く確認されているのがエクアドルで、これまで9人が犠牲になっている。次いで多いのが米国で、8人の死亡が確認された。
ロシアではペルミ出身のジャーナリスト、アナスタシヤ・ペトロワさん(36歳)が犠牲になった。

 ジャーナリストは医師や弁護士、大学教授と並んで近代体制が効果的に機能するために欠かせない職業である。権力を監視するのみならず、市民が民主的に判断するために、広範囲に亘る情報を伝えなければならない。意思決定のための情報提供や少数派の擁護など市民の目につきにくい状況を公にし、その関係者の声を社会に届くようにする。しかし、それはしばしば危険が伴う。ジャーナリストは近代社会における地の塩である。

 夕食には、五目あんかけ焼きそば、回鍋肉焼きそば、野菜サラダ、食後は、緑茶と干し柿。屋内ウォーキングは10063歩。都内の新規陽性者数は91人、計4568人。

参照文献
報告書、「世界23か国で55人のジャーナリストが新型コロナで死亡=報告書」、『Sputnik日本語』、2020年5月2日13時47分更新 
https://jp.sputniknews.com/covid-19/202005027418596/?fbclid=IwAR0dpWzL3MEmsoN7MghME7z7mpQ1Mjj7PfEiouDM2zsJfECN-PYm-9H8GGM


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