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パンクロッカーに憧れた少女の日記(仮)33


中三・一学期
奇跡が起きた。な、なんと大橋が担任になった。カナちゃんとはまた別のクラスになってしまったけど、また隣のクラスだから体育も家庭科も一緒。それよりなにより、始業式で「3年2組、大橋幸雄先生」って発表されたときは思わずえっ!マジで!ってでかい声が出てしまった。なんだかもう、これからの人生のラッキーをこれで使い果たしたような気分だ。相沢と西川じゃなければ誰でもいいと祈ってたけど、神様が金のオノを勝手にくれたような感じ。神様ありがとう。でも2年続けてエロ村なんかが担任だったんだし、このくらいのいいことないと割に合わん。あ~、でも大橋に例の人を見られるのも、うちを見られるのも嫌だな、エロ村に見られるのとは違った意味で。家庭訪問や授業参観、三者面談、どれも今からユウウツだ。大橋は相変わらず面白い。出席取るときいきなりみんなの名前を中国語で呼んだ。私は1年の時社会と書道を大橋に習ったし面白い先生ってことはすでに知ってたけど、知らない子はびっくりしてた。英語は相変わらず西川、、、まあしょうがないか。いまさらマジメに授業聞いても、きっと内申に差をつけられるんだろうなと思う。ホントなら9くらいもらってもおかしくないと思う。中間も期末も平均よりずっと上だし、クラスで1番か2番だと思う。小テストもほとんど満点だし。他の科目の提出物や宿題は例の人の妨害であんまできないけど、英語のワークだけは簡単で何とか出来てるし。でもホントにラッキーだ。一番担任になってほしかった大橋が担任なんて。いい一年になるといい。せめて学校では。

中三・一学期
新学年そうそう、例の人がやらかしてくれた。小学校の頃、登校班一緒だった良平とまた同じクラスになったんだけど、今朝私が家を出たら例の人がうちの前を通った良平に「おい!良平!社会の窓開いてっぞ!ちゃんとしまえや~!」と叫んでた。恥ずかしくて死にたくなったけど、こんなことは今日に始まったことじゃない。小学生の頃、授業参観で学校に来た時も同じクラスだった子たちにそんなことを言ってた。今日も家に帰って「良平に変なこと言わないでよ」って言ったら「教えてやらない方が良平がもっと恥ずかしい思いをするのに、お前って本当に気がきかないね」と言われたあげく、「あれも言っちゃダメ、これもダメって言われたらお母さんなんもしゃべれなくなっちまうわ。要するにお前はお母さんにしゃべるなっていうんだな、分かったよ、お前の言う通り、お母さんもうしゃべらないから」と言い、何を話しかけても無視をされた。里香がしゃべりかけると「ごめんね里香。お母さん、お姉ちゃんにしゃべるなって言われてるの」って例の人がウソ泣きをしながら、だけどこっちをにらみつけながら言った。里香は「またお姉ちゃんが余計なことをしやがって」って顔でこっちを見てきた。そしてお約束通り、お父さんが帰ってくる30分前ごろには「今日は許すけど次はないと思え」と言われて不自然に元に戻って急にペラペラわざとらしく話しかけてきた。もはや、どっちが例の人の元なのか分からないけど。どうせなら本当にずっと私に話しかけてこなけりゃいいのに。例の人と話して楽しいことなんてない。小さい頃はあったのかも知れないけど記憶にないから知らん。幼稚園の頃から怒鳴られてばかりだ。私が全然悪くないことでも。何才の時か忘れたけど、盆踊りに例の人と2人で行って、酔っぱらいのおっさんに変なことを言われてからまれたときも助けてくれるどころか、そんな男にしゃべりかけられる方が悪いって言われてものすごく怒られた。そのおっさんには「うちの子がすみませんねぇ」って言ってた。私は小さかったし、本当に何で私が悪いのか理解できなかったけど、今でも全然分からない。

中三・一学期
今日、帰りに1年前に遭遇したヤンキー女軍団につかまってしまった。あの、モップ持って歩ってたらなんか文句つけてきた奴等。むしろよく1年も一度も会わずにすんだなって感じだけど。あんときと同じ場所で、また5人で現れた(前とは違う人もいたかも知んないけど)。そんで「ちょっと話あんだけどいい?」って言われた。私はちょっとビビってしまったけど、ちらっと見たらカナちゃんもビビってる感じで「何ですか?何するんですか?」って聞いてた。そんで駐車場の方指して、あっちで話そうって言われて連れてかれて「前、モップ持ってた子たちだよね?」と聞いてきた。私とカナちゃんが黙ってたら、そのうちの一人がカナちゃんの足のすり傷から血が出てるのを見て「生理?大丈夫?」って言ってきた。カナちゃんは「いや、これは違います、ここからは出ません」と大マジメなんだかふざけてんのか分かんないこと言ったから笑いそうになったけどヤンキー軍団もちょい笑ってて、一体何で呼び出されてんのか分かんないって感じで一見和やかだった。そのリーダーっぽい女が「あのさ、私、O高の3年で、そこに住んでんだけどさ、身に覚えない?」ってボロいアパート(でもうちよりマシ)を指さしながら聞いてきた。え、何のことって思いながら5人の様子をチラチラ見てたら、みんなジュースの缶を持ってて時々口に当ててた。シンナー吸ってた。「2年くらい前さぁ、うちからチャリかっぱらって行こうとしただろ?覚えてる?」ってその女が続けた。私は全く身に覚えがなかった(私は自転車に乗らないし)。けどカナちゃんは黙ってた、、。「私もさぁ、もう親に心配とかかけたくないんだよ。だからさぁ、こーいうのも本当はしたくないんだよ、呼び出したりとかさぁ。中坊2人に5人ってずるいと思うしさぁ。けどさぁ、、、」ラリってるのか何だかよく分かんなかったけど、あんまり不思議と怖いって感じじゃなかった。最初声掛けられた時はビビってたけど。リーダー女がカナちゃんに「右の子さぁ、その頭も脱色しすぎて抜けちゃったのかなとか、あたしも心配してるわけよ。スカートもほつれてるけどお母さんがぬってくれないのかなとかさぁ」って言った。私はなんてこと言うんだこいつって思った。奴がヤンキーだけど優しそうな奴ってことは何となくわかったけど、カナちゃんの髪が抜けてて薄いことは、実はもしかして小6の時の私みたいに自分で抜いちゃったからじゃないかって結構前から気付いてたから。脱色のせいじゃなくて。1年の時カナちゃんは、同じクラスだった千春が授業中に髪抜いててキモくない?って聞いてきたけど、もしあの時私が「キモいね」って言ってたら今も友達でいたかな?って思ってる。もう、なんだよ、ヤンキー女め、私がずっと気にして、ハゲとかそういう話題に敏感になってたのにいとも簡単に余計なこと言いやがってって思った。カナちゃんは返事をしなかったけど、、。他の4人は完全にラリってたのか、話には入ってこなかった。そのうち軍団の一人が「サツキ~、アイス食べたくなっちゃった、買ってくるねぇ~」と言って、もう一人と消えてった。「そーいえばあんたたちの名前聞いてなかったっけね。私はサツキ。五月みどり。はい、左の子」と言って、まず私に聞いてきた。「あ、、ミホです」って言ったら「ミホちゃんかぁ。よろしくね」と右手を出してきたので握手した。なんかおかしなことになってきた。「で、足が生理の子は?」ってカナちゃんに聞いた。「田辺です」ってカナちゃんが答えたら「そーじゃなくてさぁ~、下の名前~。私も名前教えたじゃーん、覚えてる?サツキ、五月みどりね。で、名前は?」カナちゃんはしぶしぶって感じで「加奈子です」って答えてた。「そうかぁ、ミホちゃんとカナコちゃんね~。もう覚えたかんね。何かあったらすぐ私のとこ言いに来な?助けてあげるから。そこのアパートの2階に住んでっから。いないときも多いけどさ。誰かになんかされそうになったらO高のサツキと知り合いって言えばいいから。」とラリってるんだか正気なんだか分からん感じで言ってきた。アイス買いに行った2人がアイスを食べながら戻ってきて、袋をサツキ、、さんに渡した。「んだよ、3つしかねぇじゃん、気がきかねぇなぁ」って言って袋からアイスを取り出して私とカナちゃんに1個ずつ手渡した。私とカナちゃんは断れるわけもなく「ありがとうございます」と言って食べた。サツキさんは「あ、でも私も食べたい」と言って私がもらったアイスを一口かじった。みんながアイスを食べ終わったら「ミオちゃ~ん、カナコちゃ~ん、今日はごめんねぇ、引きとめちゃって。また今度ねぇ~」ってサツキさんが言って、軍団はどこかへ消えてった。名前さっそく違ってるし。そのあとカナちゃんと「なんか、あの道通って帰りづらくなっちゃったね」って話をした。「でもまぁ気にすることないっしょ、一年も会わなかったんだし」とも。私が「さっきのアイス、さかずきを交わしたってことなのかね?」って言ったらカナちゃんは「超ウケる、あんまりウケること言うから腹筋いてぇ~」って大笑いしてた。