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パンクロッカーに憧れた少女の日記(仮)27


中二・三学期
学校が始まった。朝からエロ村が「二年生ってのは中だるみの年だ。ハンバーガーの肉が腐れば下と上の具も腐るのと一緒だ」としたり顔で説教を始めて「この冬休みに勉強をちゃんとしてなかった奴は4月からいい先輩にもなれないし先輩からもいい後輩だったなって思い出してもらえることもないんだぞ」と得意気に語ってた。みんなは「さすが村やん、いいこと言う~」みたいに感心した顔してたけど、私は心底バカにしてた。面倒くせぇから奴の方見ないで聞いてるふりしてたけど。エロ村は相変わらずだせぇ変な緑のジャージ着てる。カッコいいとでも思ってるのかよ。最近は何をしても虚しくなってきてる。CD聴いても雑誌見てもどうせライブには行かれないんだし、好きな服も買えないしって。そもそも私が好きなバンドはもう10年前くらいに解散してるのばっかだし。10年位前の曲を聴いてると、その音が今、この今に存在してないような感じがして悲しく苦しい。意味分かるかな、、、なんて表現していいか難しいけど、10年の時を超えて今存在してるのがなんか不思議っていうか、、、。今この世界で、この曲聴いてる人自分たった一人なんじゃないかと思うとなんだか世界に一人置き去りにされてるような気分になるっちゅーか。ああ~やっぱバンドの話が出来る友達が欲しい。カナちゃんに言ってみるか?今さら?いつ?でも話せたとしても虚しいだろうなあ、ライブにも行かれない、着たい服も着れない。そんなの意味ない。ダサい自分が嫌だ。でもダサいのは私のせいじゃない。それにこんな自分は自分じゃない。でも前に玲奈への手紙に書いたみたいに仮面をかぶってるとも思えない。自分が自分で分からない。

中二・三学期
例の人にお年玉のほとんどを取られた。まぁ毎年のことだけど。今日学校から帰ってきたら正座してわざとらしくしんみりしてるからまたお金の催促かよってピンと来たんだけど、あの雰囲気が本当に耐えられない。普通にはじめっから「お金貸して」って言えばいいのにまず長々と話が始まる。どうしてお金が必要なのかってことをえんえんと語り始めて、私がうんざりして「いくら必要なの」って言い出すのを待ってやがる。いつもそう。今日は例の人の妹のチャコっていうおばさんがお金に困ってるって話をし出した。おばさんが昼間にうちに来て、おばさんのだんなが給料をおばさんに渡さずにパチンコとお酒に全部使ってるからおばさんはナプキン買うお金もなくてティッシュを使ってるとか、いとこのコウちゃんとハルちゃんの食うものもないって話をしたんだと。例の人はその話聞いてたら涙が出て来るほどかわいそうだったからお金をあげたけど、そしたらうちの生活費がなくなっちゃて、それがばれるとお父さんにお母さんがぶん殴られる、、、だからお金を貸してって言ってきた。チャコおばさんの話はほとんど嘘だと思うけどちょびっとは本当だと思う。今日おばさんが来たのは多分嘘。それにパチンコやってるのはおじさんじゃなくておばさん。おじさんもやってるのかも知れんが。この間大雨の日、それが原因でもめたみたいで、子供2人連れてうちに来た。夜中近くにおじさんが迎えに来たけど。おじさんを電話で呼び出した時、例の人はおじさんに「チャコは悪いところもあるけど、本当はいい子なんです。姉の私が保証します。だから仲良くしてあげて下さい」ってことを言葉をかえて延々とウソ泣きしながらしゃべってた。私はおばさんがうちにいる間、ずっといとこと七並べや神経衰弱で遊んでた。あの、私の大好きなおばさんのお姉さんたちが昔、私と遊んでくれたように。違うのはお姉さんのお父さんもお母さんも最高の人たちで、うちの親とチャコおばさんとだんなはクズだってこと。だから小さいいとこ2人が仲間っていうか、自分の本当の弟と妹な感じがした。私はずっとおままごとで赤ちゃんの役ばっかやらされてたから、あのとき初めてお姉さんの役をやれたみたいでちょっと嬉しかった。けど悲しくもあった。何でうちに連れてこられたのか、あの子たちは分かってたのかな。私もお姉さんがほしかった。優しくて一緒に遊んだり勉強したりする。コウちゃんとハルちゃんと私がトランプやってる間、里香はヘッドフォンで音楽聴きながらりぼん読んでた。それ見て、すっげーむかついて、お前はチャコおばさんのとこにもらわれろ、私とコウちゃんとハルちゃんはあの優しいおばさんの家の子になるからって願ったけど虚しくなった。コウちゃんもハルちゃんも服がびしょぬれだったから、私のお古を着せたけどぶかぶかで。それを見てたら1年の頃、塾でびしょぬれの服を着替えさせられたこと思い出して泣けてきた。例の人はまだブラを買ってくれない。あの事件のあと勇気を出して頼んでみたけど、お母さんが子供の頃はそんなのつけてなかったからなくても平気とか言われた。それから塾に行くときは、まだブラを買ってもらえてないみじめな子だと思われたくなくて暑い日でも服を二枚着るようにしてる。お父さんや例の人に何でお前そんな格好してるんだって言われるけど、塾の冷房が寒くて風邪ひきそうだからって嘘を言ってる。とにかく今日はお年玉を取られたショックで日記を書くのも嫌だけどされたことは忘れないうちに書いておきたい。まあ、忘れっこないけど。おじさん、おばさんからもらったお年玉でCDとか英語の本とかを買うつもりだったのに。なんで例の人に取られなきゃいけないの。どうせサラ金に返すお金が足りなくなったとかそういうんだと思う。チャコおばさんが来たって話は絶対嘘。もう嫌だ、、、死にたい。あのガケから飛び降りたい。けど怖い。カナちゃんからもらったあの薬飲もう。小人は見えないと思うけどそれでもいい。