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「抽象化と具体化」は仕事の万能ツール

ここ数年、本や雑誌、YouTubeでも「抽象化と具体化」について目にすることが多くなりました。私もいくつか本を読みましたし、自身でも仕事上、経験を積むにつれ抽象化力が徐々に上達し、業務効率が上がったことを実感しました。

そこで、今日は抽象化と具体化の能力が上達するとどのような利点があるかを自身の経験を交えて話します。

まず「抽象化」って何?という質問です。

「概念化」のことだよという説明を聞いたことがあると思いますが、もっとわかりにくい気がしますよね。現に「コンセプト化すること」だよと説明されてキョトンとしているイギリス人に遭遇したこともあります。要は、個別の事象や細かい要素を一段高い視点から「グループ化」すると抽象化することができます。

例えば……

てんとう虫、かまきり、セミ、カブトムシといったそれぞれの生物を「グループ化」すると総称して「昆虫」ということになります。

同様に、メーカーの調達課、工場、在庫管理課、配送課を総称しより高い視点でグループ化すると「製造部門」となります。

いくつかの物事を「グループ化」して考えられたり、掘り下げて細かく分解し要素に「細分化」できると、仕事上、主に以下の3つの能力が上がります。

  1. 問題解決

  2. 問題発見

  3. 複数の利害関係者への対応

順を追って話しますね。

  1. 問題解決

問題に直面した場合は要素の「グループ化」と「細分化」により、原因が見えてきます。

例えば。。。。

「顧客が商品を発注してから商品受け取りまでに、今まで3日だったのに、最近は1週間もかかるようになった。」

まずはこの問題の属するグループはなんでしょう。「製品の品質問題」でも「製品のコスト増」でもなく「配送遅延」と言えます。これがまず、「抽象化」です。

原因究明のための「具体化」をしていきましょう。配送プロセスに関わる部門を具体的に列挙してみましょう。

営業、経理、工場、倉庫、ロジ(配送)

さらに上の各部門の業務を細分化して調査していくと、どこにボトルネック(この遅延の原因)があるかを見つけられます。

例えば、社内ITシステムのバグにより「営業部門から経理部門への受注データ転送に遅れ」が生じているのか、それとも「配送部門がセールによる受注過多と人員不足により発送に時間がかる」ようになったなどが原因が見えてきます。

よって、問題を部門別に、さらに各部門の業務別に掘り下げて「具体化」を進めることにより、問題の主原因が見えてきます。そこで、初めて課題の解決策を考え始められます。

2. 問題発見

物事を抽象化して高い視点から見えるようになると、末端からは気づかなかった問題や改善の余地が見えてきやすくなります。

例えば、あるメーカーでは、営業や製造など各部門内では業務の最適化が進み、ぱっと見、業務効率が良く課題が無いように見えます。しかし、もしも会社全体の業務をより抽象化して捉え、高い視点で見られるようになると、部門を跨いだ業務改善の余地が見えてくることがあります。

例として、営業部門が製造部門に対して、今よりも頻繁に、そしてより精度の高い売上数量予測を伝えることができるようになれば、製造部門は在庫数量を減らし廃棄のリスクを抑えられる可能性が出てきます。

このように、部門を跨ぎ、高い視点で会社の業務全体を「抽象化」して捉えることによって、各部門が気付かなかった隠れた課題が発見できるようになります。

3. 利害関係者対応(ステークホルダーマネジメント)

一般に大企業でキャリアアップをして部門長などに昇進するには、「複数の利害関係者への説明責任を果たす」ことを示す「ステークホルダーマネジメント」という能力が求められます。「抽象化と具体化」が出来ると、社内外の立場の異なる関係者に対し、「会社の置かれた状況」、「直面している経営課題」を相手の視点に応じた「粒度」で説明することができます。

例えば、経営企画部門長が社長に報告する際、上で話した「配送遅延の問題と原因」といった細かい粒度の話、すなわち「個別の問題」は優先順位は高くありません

それよりも「第二四半期は利益目標に達成するのか」「利益未達のリスクがある場合、いくらぐらいの話なのか」といった、「会社の経営状況を大枠で捉えた」、より抽象化された説明が求められます。

一方、部門長などの業務の責任者と議論をする場合は、彼らの視点に立ち、「ITシステムの不具合による配送遅延」といった、より粒度の低い「具体的な話」をすることによって、問題解決に繋げます。

私の経験で恐縮ですが、今まで米系の大企業で20年以上おを色々な国籍の上司とともに過ごし、面白いと思ったことがあります。

それは、人種によって、知りたい粒度のレベルが異なることでした。経験則から言うと、アングロサクソン(アメリカ人、イギリス人)の経営陣は「大枠を論理的に理解したい」という方が多かったと思います。

一方でラテン(ブラジルなど南米系、スペインなどヨーロッパ系)の経営陣については、「抽象化された大枠だけでなく、彼らが興味のある要素については細かい粒度まで説明を求める」傾向にありました。関心を持った要素については、ラテンらしく感情を熱くしながら、説明を求める感じです。

外資系企業では上司が変わるたびに、求められる「抽象と具体」のレベルが変わるので、苦労しましたが、振り返ってみるとこの経験のおかげで、話の粒度を変える良いトレーニングになったと感じています。

ぜひ、話す相手に応じて、抽象化と具体化のちょうど良い加減を探ってみてください。慣れると楽しいですよ。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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