天乃原 智志

地球人。日本在住。 自作の短編小説を掲載してゆく予定です。 よろしくお願いします。

天乃原 智志

地球人。日本在住。 自作の短編小説を掲載してゆく予定です。 よろしくお願いします。

最近の記事

空襲の記憶⑦(終)

[6]   平成18年(2006年)、夏。   この話を初めて聞いて、安原愛は言葉を失くしているが、やがて 安原愛  「そんな……ひどい……」 安原智史 「だから戦争はおきてはいけないんだよ。」   ややあって、 安原愛  「それで、よし恵先生とその友だちは助かって、もうひとりの      お友だちはどうなったんですか?」   安原智史と内田かず恵の表情が変わる。   翌昭和52年(1977年)夏、よし恵の病室。 美奈   「……それで、もう一人の友だち──町子さんは

    • 【日記】8/22

      ■暑い!  毎日暑いです。私が住んでいる地域では猛暑日が二十日以上続いています。恐ろしいことに「最高気温が体温超え」というのが当たり前になっていて、夕べは天気予報をみてこう思っていました ── やった、明日は涼しくなるぞ。気温が35℃にしかならないから!  猛暑日という言葉が生まれたのは何年前でしたっけ。  体温超えの気温では扇風機は役に立ちません。おまけに日本の夏は湿度が高い。「エア・コンディショナーが無ければ生存できない」なんてSFめいた世界です。でもこれは fictio

      • プチ短編 第3話 おばけの話(前編)

        (天乃原智志) (あらすじ)  〝私〟佐藤響子は弟の浩司とともに、鈴木涼子夫妻の引っ越し準備を手伝いにいく。荷造りや掃除が終わったあとティータイムとなる。鈴木夫妻が子ども時代のことを語り始めるが、なにやら怖そうな話になり・・・       1  リョーコさん──鈴木涼子さんと夫の悟さんが今の家に移り住んだのは、結婚から一年ほど経った時のことである。涼子さんが伯父の浅井某(なにがし)さんから古民家を譲り受けたのだ。  この伯父さんというひとは古武術の師範でで、町はずれに自

        • 『空襲の記憶』⑥

          [5] 九月上旬。二学期が始まって間もないある日。 中学校の職員室の前。M69の赤錆びた抜け殻がガラスケースに収められて展示されている。抜け殻の前にはごく簡単な説明文(「名古屋市〇〇町に投下された焼夷弾です。名古屋空襲では多くの人が犠牲になりました。」、など)。 展示物を見て生徒たちがワイワイ言っている。通りかかった智史がそれを横目で見る。よし恵先生の想いが伝わっていないと感じている。クラスメートの男子が智史に話しかける。 クラスメートA      「これ、安原たちが

        空襲の記憶⑦(終)

          【日記】8/15

          ■猛暑、酷暑  連日、命に関わる暑さがつづいています。天気予報で聞く予想最高気温はいつも38℃、38℃、たまに39℃があって、あしたも38℃。あまりの暑さに朝顔も咲きません。床屋のオヤジは、なんとかいう木の葉っぱが焼けたといってました。木の葉が焼けるとはどういうことかというと「しおれたのではなく、葉っぱの一部が茶色に変わっていた」のだそうです。  命に関わる、というのは大げさに言っているのではありません。この数日、エアコンを使っても室温が30℃を超えています。もしエアコンがな

          【日記】8/15

          空襲の記憶⑤

          [4]   平成18年(2006年)、夏。 安原愛  「それで、おじさん。もう一度話を聞きに来たの?      それとも、もう懲り懲りだった?」   昭和51年(1976年)、夏。   生徒四人、下駄箱の前で靴に履き替えている。 吉人   「いやあ、すごい物見ちゃったなあ。」 美奈   「ウチに帰ってから話したら、親がびっくりしそう。焼夷弾      だなんて。」 町子   智史に「聞きたいことがあったらまたどうぞ、だって。どう      する?」 吉人   「だけど

          空襲の記憶⑤

          【日記】

          先月末にnoteのアカウントをつくり今月1日に初投稿しました。まだまだ使い慣れていなくて、走りながらイロイロ整えている感じです。そのような状況でも私が書いたものを読んでくださる方がいて、スキしてくれる方もいて、ただただ感謝です。みなさん、ありがとうございます……! noteの存在を知って、さるお方に相談にのっていただいて、無事スタートを切ることができました。しばらくは創作に時間を多く当てられるので、今のうちに頑張るぞっと思っているのですが、大きな問題が見えてしまいました──

          プチ短編 第2話 ゴルフとパフェ

          (天乃原智志)  「佐藤さん、そろそろコースに出てみない?」  ある日、職場の男性から声をかけられた。ゴルフの練習場に通い始めて三カ月近くたったときのことだ。  ちょうど、ウッドでもアイアンでも思いどおりに打てるようになったところ。広い空の下で、かっ飛ばしたら楽しいかも知れない。  でも。  「うーん……」  私はためらった。女子のゴルフ人口が増えたとはいえ、男子よりはずっと少ない(と聞いている)。どうせメンバーはおじさんとおじさん予備軍ばかりだ。そんな中に女一人で入るなん

          プチ短編 第2話 ゴルフとパフェ

          空襲の記憶④

          (天乃原智志) [3]   平成18年(2006年)、夏。 安原愛  (突然大声をあげるなんて、よほど恐ろし目にあったんだ。      そんな話、初めて……)      ここでハッと気づく。      (! ちがう──私に体験談を語ってくれたのは、「今のうちに      話しておきたい」と申し出てくれた人ばかりだ。この時代は      まだ、思い出したくない、話したくないという人が多かったん      だ。)   昭和51年(1976年)。   夏休み中の登校日。生徒

          プチ短編 第一話 カモメ

           船が港に戻るとすぐ近くにカモメの群れが降りて来た。藍色の海面に浮かぶ白い鳥たち、白い船。絵になりそうな眺めだ。  「遊覧船か。折角だから島めぐりをしていくか」  三月下旬。日本の半分では暖かな春だが、この辺りでは肌寒く観光に浮かれるにはまだ早い。とはいえ、せっかく景勝地に来たんだ、いろいろ見ておかなきゃ損というものだ。  チケットを買って即、乗船!  さて、どこの席に座ろうかと考えながら展望デッキを回っていたら、<カモメのえさ>と書かれた小さな自動販売機が目に入った。  カ

          プチ短編 第一話 カモメ

          空襲の記憶③

          (天乃原智志) [2] 中学生一同 「こんにちは。」   よし恵、あることに気づきいて小さく息をのむが、すぐに席に着く。 よし恵  「私が内田よし恵です。南先生から、伊佐治、大森さん、     鷲見(すみ)君と安原君が来ると聞いていますが、誰が誰かしら。     教えてちょうだい。」 美奈   「私が大森です。」 町子   「伊佐治です。」 智史   「安原です。」 吉人   「鷲見です。」 よし恵  「みんな、夏休みの宿題は順調?」 智史・吉人 「ウッ。」 美奈  

          空襲の記憶③

          空襲の記憶②

           (天乃原 智志)      昭和51年(1976年)の夏。   神明社の隣の道。神明社の木々から蝉時雨が聞こえてくる。   中学一年生の安原智史、伊佐治町子、大森美奈、鷲見(すみ)吉人が   歩いてくる。四人とも制服。 智史   メモを見ながら「この辺りだよな。内田、内田……」 町子   「あった。ほら、ここ」 美奈   「じゃあ、安原君から入って」 智史   「俺?」 吉人   「そりゃ、リーダーから行かなくちゃ」 町子   「怖いなら私が行こうか?」 智史   「いいよ

          空襲の記憶②

          空襲の記憶①

          天乃原智志,脚本形式 <登場人物> 安原 智史(さとし)          男子中学生。良くも悪くも真面目。ぬけているところもいろ       いろ。 伊佐治 町子 女子中学生。勉強ができて水泳が得意。性格は、おとなしめ。 大森 美奈  女子中学生。勉強も運動もそこそこ。ものおじしない。 鷲見 吉人(すみ・よしひと)       男子中学生。通称スミキチ。勉強嫌いだが自由な発想が持味。 内田 よし恵 女性。四十代半ば。教員免許を持っている(裏設定:南の        恩

          空襲の記憶①

          はじめに

          私は小説やまんがを読むのが好きです。自分でも短い読み物を書くことがあって、活字にしていただいたこともあります。 この度、noteという発表の場があることを知り、自分で創作したものを掲載させていただくことにしました。 よろしくお願いします。