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二人きりの夜に

10月になると福岡県糸島市では牡蠣小屋がオープンする。

次男を除く我が一家は、牡蠣が大好物だ。
現地で食べると運転手の夫がお酒を飲めないので、必ず持ち帰りにしてもらって、家で牡蠣を食べる。

レンジでチンすれば、オッケー。
それが我が家の牡蠣の食べ方の定番だ。

夏頃、ローカルテレビ福岡くんもち吉の煎餅のカンカンに福岡県民は何を入れているのか?という特集をやっていた。

我が家は年賀はがきを入れていたり、電源のコード類をまとめたりしている。
同じような活用している家庭も多そうで、まあ、スタンダードだなと思っていた。

すると、バーベーキューに活用しています!という家庭が結構あった。
貝類を入れて蒸し焼きにしたり、米を炊く強者もいるらしい。

カンカン焼きしたい!!

とずっと思っていたので、牡蠣小屋が始まったことをを確認し、牡蠣を買いに行った。

のんびり出かけ、海で磯遊びをしてしまったために、家に帰り着く頃にはもうあたりは真っ暗だった。

しかし、初志貫徹。

ライトを照らし、薄暗い中、火を起こす。
カンカンに大量の牡蠣を詰めて、蒸し焼きにした。

電子レンジで加熱するよりも、少し火が入り過ぎて身が縮んでしまったけど、外で食べる牡蠣の美味しさはひとしおだった。

あちあち


もう10月で、夜は寒い。

家の中では半袖を着ているけど、厚手の上着を羽織り、あたたかくし、バーベキューコンロで暖をとりながら、冷たいビールをきゅっと流し込んだ。

お腹が落ち着くと、次男は買ったばかりのスパイダーマン2をプレステでやり始めていて、夫はソファでイビキをかいて寝ていた。

私と長男は、〆のカリカリになった焼きおにぎりを食べた。

私がお気に入りのRin音を流していたら、
「貸して」
と息子が私のiPhoneを奪い取った。

彼が流す音楽は、どれも私の趣味に合う。

音楽を聴きながら、空を見上げるとチラチラと少しだけ星が見えた。

「せっかくやし、真っ暗にしようよ」
と私が言うと、息子はセンサーライトを消した。
部屋のブラインドも下ろして、光を減らす。

二人で上を向く。

新しい音楽が流れてきた。

「この曲、いいねー」
とビールを飲みながら、私が言った。

「ああ、この人、こないだ捕まった人。チェホンの次に捕まった」
彼はボソっと言った。

「ああ、そうなん。そっかー。大麻とクスリは絶対にするなよ。コンドームは絶対につけなよ」
寒空の下、私がそう言うと、

「うん。わかった」
と彼が言った。

あまりに自然だった。
気負いもなく、禁忌を話すわけでもなく。

こういう会話をすんなりと受け入れてくれる彼の成長に感謝した。

なんだか嬉しくなって
「ビールでも飲むか?」
と聞いたら、
「いらんし」
と逃げていった。

彼は部屋から自転車の鍵を取ってきて、中学生の時まで乗っていた自転車に乗り出した。

「ねえ、お母さん!!もうこれ、ちっちゃい!!」
「そりゃー、ちっちゃかろうもん」
私はビールを片手に息子に近寄る。

「お母さん!なんか虫が死んどる。潰れとる!!ピクピク動きよってキモいんやけど」
「今、あんたが轢いたっちゃろーもん」

保育園の頃から成長していないようで笑ってしまった。


その後、二人でバーベーキューの後片付けをした。





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