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退職交渉の末、最後に踏みとどまる理由は何ですか?GoogleやAppleはなぜ出社にこだわるのでしょうか?【ソーシャルタイズ】


✔︎退職交渉の末、最後に踏みとどまる理由はなんですか?

✔︎GoogleやAppleなど世界的企業はなぜオフィス出社にこだわるのでしょうか?

2つの答えは、【ソーシャルタイズ】です。

【ソーシャルタイズ】、日本語訳では社会的な絆[つながり]と訳されている。



41年間生きてきたある日、初めて耳にした言葉、ソーシャルタイズ

ある日の朝、いつもの喫茶店で、キャリアアドバイザー仲間のトッシーが、【ソーシャルタイズ】について語り出した。その話は、わたし自身が14年半もの間、同じ会社で働いてこれた理由を裏付けするものでもあった。ソーシャルタイズは、人を、組織を強くする。トッシーに許可をもらい、文章にしたいと思った。

*トッシーは人材業界21年、ラジオ、テレビにも出演する大ベテランアドバイザーだ。

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【ソーシャルタイズ】とは?

土曜の朝、いつもの喫茶店。

こんがり焼けた厚切りトーストにバターが沁みこむ。深煎りの珈琲をすすりながら誰かが話を切り出す。その日はトッシーが、自組織向けの研修について話をしてくれた。5本立て研修の一本目、テーマはソーシャルタイズ。最近よく耳にする言葉に言い換えるならば、心理的安全性が近いかな、トッシーが教えてくれた。(以下、ソーシャルタイズで統一)


*

時はアメリカITバブルの時代。1990年代末期から、アメリカではインターネットバブルと呼ばれるIT関連企業のバブル景気が発生した。

IBMやヒューレットパッカードなど、大手IT企業が人材流出を防ぐため、退職者を引き留めるために何が効果的なのかを、大金を投資して研究した。

例えば、

・社員の年収を上げる

・仕事内容について、よりエキサイティングな仕事を与える

・休暇をたっぷりと取れるようにする

・・・などなど、あらゆる方法を試して研究した結果、

最終的に退職者を引き止めるために有効な要素として行き着いたのが

ソーシャルタイズ = この人たちと一緒に働きたい!と思う人と人との繋がり

だったのだ。

その後、そのIT企業では社員同士が一緒にランチができる食堂を充実させるなど、ソーシャルタイズを強くするための動きに力を入れたそうだ。

この話には、大事なポイントが二つあると思っている。(わたしの解釈です)

一つ目:【自己成長】や【遣り甲斐】は、仕事を通して顧客(社内向けの職種の人であれば社員)からもらえる。

二つ目:仕事に向き合い成長するために必要な【楽しさ】や、辛い時を乗り越える【心の支え】は、社内の人間関係からもらえる。

この2つのどちらが欠けると、「ここで働く意味」が弱くなり、「ここじゃないどこか」を考える理由の一つになるのではないか。


例えば、自分が携わる仕事自体には遣り甲斐を感じているが、職場の人のモチベーションが低く、話が合わない。もしくは、職場の人間関係は良いのだが、仕事自体にはやりがいを感じることができない。みんないい人だし、職場には不満もないが、このまま会社に居ても成長できない気がする。転職エージェントのキャリアアドバイザー時代、最初の面談で、お客さんからよく聞く転職理由だった。

ビジネスパーソンとして、対顧客に対して良いパフォーマンスを発揮するためには、じぶん自身が充実している必要がある。じぶん自身のコンディションを良い状態に保つための土台となるのが、会社の中での人との繋がりなのではないか。もちろん、その土台が家族や、パートナー、地域のコミュニティ、社外のコミュニティという人もいるだろう。しかし、働く時に、一番身近なコミュニティとなるのは、社内の人間関係だ。

ITバブル期のアメリカで、優秀なエンジニアたちがその会社で働き続ける意味として選んだのは、高額な給料でも、長期休暇でも、エキサイティングな仕事でもなく、「この人たちと一緒に働きたい!」という、人と人との繋がりだったのだ。


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トッシーからこの話を聞いて、自分はどうだろうと考えた。当時の部署へ転勤配属となってから、オフィスへ出社したのは一年間で2回のみだった。新しい部署のメンバーやマネージャーと、直接顔を合わせる機会はほとんどなかった。会社の一員である、このチームの一員である、そんな気持ちが、だんだん薄れていくように感じた。毎日仕事に向き合い、お客様からは感謝の言葉をいただく。そこにやりがいや、充実感はある。しかし何か満たされない思いが募っていった。当時を振り返って思うことがある。新しい部署への異動と同時にリモートワークとなり、わたし自身がうまく築くことができなかったもの、それが【ソーシャルタイズ】だったのかもしれない。

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コロナ禍でのソーシャルタイズ

アメリカのITバブル期から時を経て、コロナ禍の今、アップルの社長が、ワクチン接種が終わったら週3回出社しようと発言したことが物議を醸した。社長の発言からは、ソーシャルタイズが弱くなってきていることへの危機感を感じているように思えた。

自宅からのビデオ通話では、出勤時の環境を「簡単には再現できない」とクックCEOは説明した。The Vergeによると「我々が離れ離れになりながらも達成してきたことはあるが、実はこの1年間には重要なものが欠けていた」とクックCEOはメールに書いている。
「ビデオ会議が我々の距離を縮めたことは間違いないが、ビデオ通話では再現できないものもある」
また、クックCEOは「とにかく、今はただ皆さんの顔を見られるのを楽しみにしている。直接会って話したときの活気、エネルギー、創造性、相乗効果、そして我々が築いてきたコミュニティー意識を懐かしく思うのは、私だけではないはずだ」とも述べている。                 以下記事より抜粋:https://www.businessinsider.jp/post-236125


マイクロソフトは、コロナ後も続くであろうリモートワーク社会に向けて、社内のコミュニティツールを開発・発表した。リモート環境が続く中で、いかにしてソーシャルタイズを築いていくかは、企業にとっても重要なポイントとなっているようだ。

リモートワークが進む中で、企業が社内コミュニケーションやそのためのイントラネットの提供に多額の費用をかけている。そして従業員は実務をこなすためにそれをすぐに無視してしまう。今後、一部の従業員だけがリモートワークを続けたり出社とリモートのハイブリッドを選んだりするとしても、このような従業員が適切なツールにアクセスでき、自分が会社の一員であると感じられるようにする必要はある従業員がリモートで仕事をしているため、企業は社内文化を維持し従業員間のコミュニティを育むのに苦戦している。Vivaはこうした状況を改善することを目指している。
引用記事:https://jp.techcrunch.com/2021/02/05/2021-02-04-microsoft-launches-viva-its-new-take-on-the-old-intranet/


リモート指向が優秀人材引き抜きの要にもなる

大手企業が出社を促したり、従業員間のコミュニティの育成に注力する動きがある一方で、リモート指向の仕事を提供することで、スタートアップ企業が大手ハイテク企業から、優れた才能をもった人材を引き抜くことも可能になるという。

引用記事:https://jp.techcrunch.com/2021/08/30/2021-08-28-the-remote-work-argument-has-already-been-won-by-startups/


リモートワークが進む中、ソーシャルタイズの形も変わってきているように感じる。出社して直接顔を合わせることがない中でも、ソーシャルタイズを感じる、ソーシャルタイズを築いていける環境をつくることが、今後の人材定着において重要となるのではないか。



コロナ禍における、ソーシャルタイズの築き方

新しい職場や学校、新しいコミュニティへ参加する人たち向けにオンボーディングというものがある。

オン・ボーディング:「オン・ボーディング(on-boarding)」とは、「船や飛行機に乗っている」という意味の「on-board」から派生した言葉。本来は船や飛行機に新しく乗り込んできたクルーや乗客に対して、必要なサポートを行い、慣れてもらうプロセスのことを指します。人事用語としては、企業が新たに採用した人材を職場に配置し、組織の一員として定着させ、戦力化させるまでの一連の受け入れプロセスを意味します。そのほかにも、企業が提供するサービスなどの新たなユーザーとなった顧客に対し、そのサービスで得られる体験の満足度を高め、継続的な利用を促すための一連のプロセスもオン・ボーディングと呼ばれます。


コロナ禍での新入社員や、中途入社者向けに多くの企業で、このオンボーディングが実施されているようだ。入社時からフルリモートで働くことできるという、ヌーラボのオンボーディングについての記事を読んだ。そこには、リモート環境でソーシャルタイズを感じる、築いていく上での大切なポイントが惜しみなく公開されていた。


ポイント①
リモートだからこそ、難しいことはMeetで繋いで一緒にやる!
ポイント②
組織/事業の大切なポイントは役員、各事業の担当、人事が直接解説。録画ではない!
ポイント③
部署を跨いだメンバーとじっくりコミュニケーション。チーム以外にも顔と名前が一致する人がいることの安心感!
感動ポイント④
大事なことは全てBacklogのWikiに。過去の会議のビデオを見てタイムスリップ!




人との繋がりは離職を防ぐ理由にもなり、新たなチャレンジの下支えにもなる

ソーシャルタイズは、離職を防ぐ理由になるだけではなく、個人の新たな挑戦や発見、成長を促す支えにもなるのだ。キャリアチェンジの研究においても、精神的な拠り所を提供してくれたり、知恵や手助けをくれたりする他者との結びつきが、次のキャリアを模索する行動を促すとの見解があるそうだ。

「失敗しても大丈夫」「帰る場所がある」と思えることが、挑戦する勇気をくれる。

※以下、引用記事



ソーシャルタイズを感じる映画

ソーシャルタイズを感じることができる映画として、【SUITS】をトッシーが勧めてくれた。

弁護士事務所内での出世争いがある激しい世界なのに、働く人たちがファミリーのように交流する関係性が描かれている。

ビジネスの世界において、ドライとウェットという言葉があるが、ドライもウェットも両方をうまく使いこなせるのがイケてるビジネスパーソンだ!とトッシーは語る。

トッシーは前職では、誰もが知る消費財の外資メーカーに勤務していた。成果主義な社風で、営業として数字さえ上げておけば、細かな管理はされない環境であった。自宅と顧客先を行き来する直行直帰の営業スタイルだが、週一は先輩や同僚と食事していた。また、時折りオフィスに立ち寄り、そこにいる違う部署の人と、何かしらの会話が生まれることも楽しんでいた。営業としての成果をドライに求められる厳しい環境においても、ウェットな人との繋がりを感じながら働けていたことで、仕事を頑張ることができたと語ってくれた。

激しい実績競争が繰り広げられる職場においても、仕事をする上での土台となる人間関係が築けていれば、戦い続けていけるのだ。


ソーシャルタイズを感じるとき

仕事で結果が出なくて辛い時、家族のことや子どものことで思うように仕事ができなくて辛い時、上司と上手くいかない時…会社で働いていると、あぁ辞めたいと思うことはある。眠れぬ夜を過ごして出社した朝、「おはよう。なんか疲れてない?大丈夫?」と声をかけてくれる人がいる。「実はさ…」と近況を話しても話さなくても、朝会話を交わしたことで、その日一日の仕事を頑張れたりする。朝の挨拶、何気ない会話、お互いの表情を見て気づくこと、声を聞いて気づくことがある。オフィスに出社する・しないに関わらず、人と会話を交わすこと、関わりを持つことで、自分の居場所を確認する作業を行なっているのかもしれない。人は他者を通して、じぶんの存在を確認することができると思っている。

わたしが勤めていた会社では、2020年4月より、リモートワークとなった。各々で勤怠報告をWEBで行なっていた。毎日、「仕事始めます」「仕事おわります」の定型文を送信して仕事始めも、仕事終わりも完結する。コミュニケーションは一方通行なもので、そこで会話が生まれるものではなかった。もし、そこで、出社時の朝のような会話が繰り広げられていたら、そこから一日パソコンに向かう気分も違っていたかもしれない。一人暮らしの後輩の中には、リモートワークの孤独に耐えきれず、毎日出社を希望する人もいた。ソーシャルタイズの重要性を知った今、その仕事、そのコミュニティへの意思があるのであれば、自らが働きかけることによっても、ソーシャルタイズを感じることができるのかもしれない。

リモートワークにより、社内間のソーシャルタイズが弱くなることがある一方で、気軽に社外コミュニティへの参加が可能になった。社外のコミュニティでソーシャルタイズを育むことで、「自分の居場所は会社だけではない」と気づく人も出てくる。それが、会社で働く上での心の支えになることもあれば、転職や退職など、新しい世界の扉を開くきっかけとなることもあるだろう。


ソーシャルタイズを感じ、人がそこで働く意味を見出すとき。

それは、その人たちと一緒に泣き、悔しがり、ぶつかり合い、そして、喜び、笑い、讃えあう。経験や想いを共有し、共に過ごした時間に、想いを馳せる時なのではないだろうか。

いま、あなたは、ソーシャルタイズを感じていますか?






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