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ブラック・スワンを読んだ|ありえないなんてありえない

今までずっと読みたいと思っていた『ブラック・スワン』を読み終えました。

この本は書店だと株式取引の棚に置かれており、株をやっている人によく読まれるものです。

「ブラック・スワン」つまり「黒い白鳥」とは、ありえないことが起こってしまった現象のことを指します。

実際に今まで存在しないと言われていた「黒い白鳥」がオーストラリア大陸で発見されたことがあります。

それ以来、予測できなったことが起こった時に「ブラック・スワン」という言葉が使われるようになりました。

それが金融危機の時などに起こりやすいこともあり、この本も株式取引の棚に置かれているのです。著者がトレーダーの側面もあることから、株の本として定着しているのかもしれません。

「黒い白鳥」の特徴は3つあります。予測できないこと、非常に強い影響を与えること、そしてそれが起こったあとにいかにもそれらしい説明がなされること、この3つです。

人は予測ができると思ってしまいがちで、全く予測ができなかったにも関わらず、起こってからはあたかも予測が可能だったかのように検証をして簡単に説明するようになります。

少し前に新NISAが始まるにあたって未来予測がいかに難しいかを意識するような記事を書きましたが、何も株式市場のことだけではなく、自分の人生においても予測できないことばかりだったことがわかります。

僕が学生だった頃、それまでの日本社会は高度経済成長を果たしたこともあり、日本という治安の良い国のもとで、大学を卒業してそこそこの規模の企業に入れば人生は安泰だという風潮が社会全体に蔓延していたように思います。

私たちはそのために必死で受験勉強をして良い大学を目指し、必死で就職活動をして大手企業に入社できるように努力します。

僕はそういった風潮が苦手ではありましたが、結果的にその流れに乗るように普通の大学に入学し、就職活動にも挑戦するようになります。

しかし、就職活動を開始する時にひとつめの「黒い白鳥」が訪れます。2008年のリーマンショックです。

この金融危機の波は就職活動を始めたばかりの僕たちにも押し寄せ、求人は激減することとなります。ひとつ上の学年の先輩たちの就活のアドバイスなどは何の参考にもならないような急展開を迎えました。

少しずつ現実に向けて危機感を持ち、苦労した状態の就職活動を続け、何とかIT企業の内定を手にした僕は2011年の4月入社に向けて準備をしていました。

そこで2011年の3月に再び「黒い白鳥」が訪れます。東日本大震災が発生したのです。現実のダイナミックさに恐れを感じながら、更に気を引き締めて入社することになります。

そして入社して3カ月後に僕にとって3回目の「黒い白鳥」が訪れます。これは個人的なものですが、がん告知をされてしまったのです。がん家系でもなく、まだ23歳だった僕にとっては全く予測ができないものでした。

こうして何とか2回は乗り越えた「黒い白鳥」でしたが、3回目の「黒い白鳥」であるがんの罹患においてはダメージも大きく、仕事は退職することとなり、後遺症を抱えながら地道に再就職を目指すこととなりました。

この経験をしたことで痛感したことは、株式市場だけではなく、個人の人生においても「安定」なんて言葉はないということです。治安が良く安全で経済も発展している日本という国でも、決して安泰なんてことはないと実感しました。

誰もがいつどうなるか、全く予測などできるものではなく、「黒い白鳥」はどこにでも潜んでいるということです。

しかし、本書『ブラック・スワン』では何も「黒い白鳥」を悪いものだと言っているのではありません。「黒い白鳥」は単純に予測できない不確実性の象徴であるだけで、この「黒い白鳥」がポジティブに働くことも示唆してくれています。

僕も「黒い白鳥」である胃がんに人生を左右されましたが、10年以上経った今では、あの困難のおかげ成長できたことが多くありました。いつ死ぬかわからないと思いながら生きることで、一日一日を本当に大切に生きるようになるものです。

「黒い白鳥」が教えてくれた「人生に安定はない」という不確実な現実への認識のおかげで、これからの未来も楽しみに生きることができているのです。

「黒い白鳥」は避けることができない不確実なリスクを表しています。これを未然に防ぐことはできません。

しかし「黒い白鳥」が訪れた時に、その事態をどの様に受け入れてその後の人生を生きるのか、それ次第では人生は好転させることもできます。

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