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鹿島槍天狗尾根遭難の報告書から学び取ったこと(原文)⑧

学習院大学山岳部 昭和34年卒 右川清夫

③ 遭難の原因

 遭難の原因について“輔仁会雑誌178号”(1956-12発行)での公式見解ではこう述べている

 4人は明らかに新雪表層雪崩に遭遇した。 新雪表層雪崩は斜面の上に降り積もった雪は重力の作用によって落下しようとする性質をもっているが、これが落下しないのは斜面と雪との間の摩擦力の重力が大きいからである。 この雪崩は以前に降り積もった雪の上にさらに新雪が積もった場合、新雪と旧雪との雪質が気象条件により異なる事が多くこの場合内部摩擦力が減少し均衡が破られて新雪が落下する。 現場天狗の鼻はまかり沢本谷の源頭にそそり立つピークで、まかり側の斜面は、およそ40度くらいの極めて急峻でありこの部分は天狗の鼻より下降する際、尾根にとりつくまでに通らねばならぬルートから外れていたと推測される。

 おりしも彼らが行動を起こすまでの前2日間は連日降雪で非常な積雪を記録し、この多量な積雪量のため急斜面を見る位置によって一見緩斜面に見える急斜面は雪崩発生の可能性に拍車をかける要素であった上、おそらく4人の下降の際のショックがこの極めて不均衡な雪の状態を崩し雪崩を誘発したのではないか。 昭和31年1月4日部員、山崎徹、設楽美徳、江間俊一、井ケ田傳一他が遭難後初めてテント撤収に天狗の鼻に登ったとき、第2クロワールを登りきったところから見た天狗の鼻直下に入っている厚さ約2m幅20mの亀裂による崩落が発生した跡を見ている。 (井ケ田傅一談) その後、救助隊として5日にOB舟橋明賢、ガイド星野貢氏が捜索のためまかり沢のちょうど曲がるところの下に降りたところで雪の断層崩落による大量のデブリを見ている。

「鹿島槍天狗尾根遭難の報告書から学び取ったこと(原文)⑦」から

「鹿島槍天狗尾根遭難の報告書から学び取ったこと(原文)⑨」へ

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