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「なんとなく好き」を分解すると、「本当に好きなもの」が見えてくるという話

中高時代、『攻殻機動隊』や『イノセンス』、『パーフェクトブルー』といった一見しただけでは理解するのが難しい(と思われる)作品にかぶれていた。
いわゆる厨二病というやつである。

ただ、自分としては「小難しそうな作品を観てる俺かっけぇww」といった感覚はなく、なんとなく好きだったのだ。

今でこそ老若男女問わず誰もがアニメを見るようになったが、当時はアニメは子どもが見るもので、いい年してアニメを見てるなんでやばいやつ、といった風潮がどこかあった。ましてやOVAなんてもってのほかだ。むしろその存在すら知らない人が多かったと思う。

だから、『ドラゴンボール』や『スラムダンク』といった民放でやっているアニメ以外の作品について同級生と話すこともなかったし、話したいとも思わなかった。

なんだかよく分からないけど、みんなが知らないすごい作品を俺は知っている。その感覚だけで満足していた。THEオタク、今でいうインキャオタクだ。

そんな青春時代を過ごしている僕にとって苦手な質問があった。

「好きものなに?」

ここで『攻殻機動隊』! と答えることができたらどんなに楽だったろう。おそらくここでそう答えた場合、まず攻殻機動隊とはどのようなアニメか説明しなければいけない。なおかつ、攻殻機動隊のどこが面白いかを相手に説明しなければいけない。

そんなことは子どものころの僕には無理な相談だ。だって「なんとなく好き」だったから。今でこそ、近未来の〜〜映像が〜〜なんて多少は語れるかもしれないが、当時の僕はただただその未知なる世界に魅了されていただけなのだ。そこで仕方なく僕は『ビーストウォーズ』と答えるのだ(それでもそこそこも盛り上がる)。

それから大人になって、なぜあれほどにそんな「よく分からないもの」に惹かれていたのか考えてみた。

もちろん、普段見ていた子ども向けアニメとは一線を画する映像と、ストーリー、“大人の世界”を覗き見る感覚もどきどきしたけれど、それが一番の要因かというとなにか違う。もっと未知の、言葉にできないもの……。

僕はその時、その「未知」という部分に惹かれていたことに気が付いた。つまり、分からないゆえに考える、想像する「余地」のある作品。これまでの自分の世界にはなかった新しい世界への扉となり、僕の世界を「拡張」してくれる作品に惹かれていたのだと、その時に感じた。

小さい頃、僕は「妖怪」が大好きだった。水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』をはじめ、『地獄先生ぬ〜べ〜』、岡野玲子・夢枕獏の『陰陽師』、結構本格的な妖怪図鑑や葛飾北斎の妖怪漫画にいたるまで、妖怪に関する本をむさぼるように読んでいた。

それも今考えてみれば、もしかしたらあるかもしれないもう一つの世界、今自分がいる世界とは違う世界の可能性に、胸を高まらせていたのだと思う。

そのせいか分からないが、大人になってからの僕は文化庁メディア芸術祭で発表されるような一見しただけでは何かわからないインスタレーションや、絵画でも写実画より抽象画に心惹かれる。
(*後付けになるが、理性ですぐに理解ができない分、作品を本能的、直感的に楽しむことができる瞬間もまた好きだ)

それゆえに、僕はたとえ誰かにきちんとした説明ができなかったとしても「なんとなく好き」という感覚を大切にしたいと思う。そして多分、最初にそう感じるものの方が本当に好きなものに近い気がする。

これは別にアニメやアートに限ったことではなく、対人関係だって同じことが言えると思う。例えば誰かを好きになった時に、その気持ちを分解してみる。

「かっこいいから」「美人だから」「背が高いから」「小さいから」「面白いから」「落ち着くから」「頼りになるから」「守ってあげたくなるから」……etc.

たぶんそういった他にも共通項を持つ人がいるような普遍的な要素をどんどん分解していった時に、その人と自分との間にある独自の要素が浮かんでくると思う。

それは長い時間を共に過ごしたことであるかもしれないし、自分しかいないと思っていたマイナーな趣味を共有できる相手だったということかもしれないし、それこそ人それぞれだ。ただ、そこに気づくことで、カードをめくるように自分が大切にしているものもおのずと見えてくる。

好きなものの裏側には本当の自分が隠れているのだ。

本当の自分と向き合うことは、必ずしも幸せなこととは限らないけれども、なんとなく好きな理由を考えることは、自分を知って前に進むための、新たな心惹かれるものとの出会うためのきっかけにはなるのではないだろうか。

そうは言っても、どうしても言語化できない好きなものも出てくるだろう。それはそれで、そのまま愛してあげればいいと思う。その未知はきっと、あなたの世界を拡げる扉となる可能性を秘めているのだから。

Q. 自分が一番好きな10代の思い出を少し教えて
A. クラスの一部で無料のホームページサービスが流行って、相互リンク貼り合ったり、お互いのキリ番をせっせと取り合ったりした。

Q. 「あ、この人優しい人だな」と思った何気ないエピソードを教えて!

この記事を書いた人:ざわわ



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