詩誌「三」73号掲載【On your mark】石山絵里
この日のために、何百キロもの距離を走ってきた。一年前、今日と同じここナゴヤドームでゴールゲートをくぐった時のことを思い返す。膝の痛みが不安だった私。痛み止めを飲んで、テーピングを巻いて。ゴール直後は、まともに歩くこともできなかった。足の爪が二枚はがれていた。倒れこんで動けなくなって、担架や車いすで運ばれている人もいた。なぜそうしてまで人は走るのだろう。フルマラソンは簡単ではない。それなのに、こんなにもたくさんの人が、こんなにも楽しそうに、チャレンジしようと集まってくるなんて、