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詩誌「三」72号掲載【うしろの正面だぁれ】石山絵里

幼いころ遊んだ「かごめかごめ」で、わたしは時々薄目を開けて、みんなの足をこっそり見ていた。ズルしてるという自覚はあったけれど、罪悪感よりも、みんなの足を内緒で見るワクワク感の方が大きかった。「うしろの正面だぁれ」で止まった正面の足を見て、背後にいる子が誰か考える。この足は、リボンのついたハイソックスだからみゆきちゃん。みゆきちゃんの両隣はあの子とあの子だから…と小さな頭をフル稼働させて、うしろが誰かを想像する。
幼いわたしがうしろの子を見事当てられたのか。そこだけ記憶が抜けている。覚えているのは、キュッと体をまるめて顔を伏せて、腕と足の間から見たみんなの流れていく足と、歌が終わった後に聞こえるクスクス笑う声。顔を上げると、暗闇からパッと明るくなってまぶしい。わたしのうしろに立っていたあの子。抜けた前歯のすきまを見せて、ニッと笑う。

2023年12月 三72号 石山絵里 作

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