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(中)バックパッカー料理人 第7便

ティラミスと青年...


次なる目的地は、初めての国スロヴェニア。
スロヴェニアの山を超えた先にある小さな村コバリッドにあるWorlds 50 Bestでも最優秀女性シェフに選ばれ、2020年には初登場でミシュラン2星にも選ばれたレストランHiša Franko へ向かうためだ。

マントヴァからスロヴェニアまでは遠く1日ではとてもたどり着けない、途中ヴェネチア辺りで1泊することに決めてはみたが、ヴェネチアにはおいしいごはん屋さんはおろか、安い宿も壊滅的にない観光地だ。
地図を眺めていると聞き慣れたような響きの地名が。
トレヴィーゾ
そう、トレヴィスというイタリア野菜の発祥の地でもあり、全世界の人も大好きなティラミス発祥の地でもある街だ。
駅から歩いて40分ほど離れた歴史感じる(古ぼけた)宿をとった。
深夜に着いたその日は、ホテル併設のレストランで暖をとる。翌朝、いつも通り僕は何も考えず、列車の時間も調べずホテルから駅へと道を進む。頭と胃袋が直結してるのか想うはティラミスだけ。40mほど先に車が数台止まっているカフェテリアを見つけた。ドアを引き一番奥の席へと座る。どれどれ、メニューを眺める必要もない、一番左上にまず書いてあった。ティラミスだ。

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ドカッと手のひらよりもでっかくずっしりとなめらかな白と焦げ茶色の断層が全面から見渡せる長方形の塊。
うまい。
ぶっちゃけ、日本で食べるおいしいティラミスとの味の違いはたいして無いんだけれども、トレヴィーゾという街までの道のり、スーツケースを20分も引きずり、ティラミス腹がこれでもかとペコペコになった今の僕にこれ以上美味しいものは存在しないであろう至福の瞬間であった。
食事を終え、会計を澄まそうとすると一人の青年が挙動不審に近づいてきた。なんだ、どうした。話しかけていいかどうかモヤモヤしている感じ。よくわかる。
どうやら彼はここのカフェテリアでバイトをしている地元の大学生で、1人でティラミスを美味しそうに頬張るアジア人の僕を見て、一眼で日本人だと思い声をかけてきてくれた。
僕が料理人をやっていて、食の探訪のために世界中を包丁持ってバックパッカーしていると話すとすごく興味を持ってくれ、彼の故郷であるここトレヴィーゾのことを絶え間なくキラキラした眼で話してくれた。海外の方たちは本当に自分の国、街が大好きだ。僕も心を躍らせ聞いていると、時間はあるか?もし大丈夫なら案内したいと言ってくれた。願ってもない。カフェテリアのスタッフの方たちにも確認を取ると彼は大丈夫だよっと優しく微笑んでくれた。
海外での男性からの誘いはたまに違う方向の時がある。

紹介しよう、彼の名前はロレンツォ。トレヴィーゾに住むトレヴィーゾを愛する大学生で、彼女募集中だ(笑

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車で15分ほど行くと、そこには美しい湖が広がり、ほとりには飲食店やバーが立ち並び、デートスポットとして有名だという。

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近くのお店に入り、郷土料理を彼がチョイスしてくれ2人で食べつくす。モッツァレラとアンチョビをフレンチトーストのようなパンで挟み揚げた料理や、海鮮リゾットとアペリティーボと共に昼から満腹だ。

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たくさん食べた後は、ドイツまで続いているという湖の周りの公園の道を案内してくれた。途中家族同士で仲がいいという散歩中のご夫婦にも出会いパシャリ。軽やかな気候と緑の中、なんて最高だろう。

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この湖にはもともと造船所があったが、今は船の墓場となっていて、その船の残骸に魚や鳥たちが休憩しにくる光景が有名となり、今では近隣諸国からも観光に訪れる人たちで賑わう一大スポットだ。こういった日本ではまだ知られていない素敵な場所が世界中には広がっている。
お互いのこれからの話や日本のこと、イタリアのことと盛り上がった僕らは数時間前に出会ったとは思えない、もう長年の友達になっていた。
でも、時間はくる。
ロレンツォのお陰でティラミスだけ食べて通り過ぎる街に思い出がまた一つ。
悲しいけれど、駅まで送ってもらい、ハグをしてまた会おうと約束をした。SNSがあってよかった。連絡先を交換し、イタリアか日本か、どこか世界でまた会おうと僕はスロヴェニアへと向かう電車へ乗った。

To be continued...



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