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Alinea Ep.I

今を生き、 先を見据える...


「なるようになるさ」
宿題なんてろくにやった事も無ければ、提出期限を守った事もほとんどない
でも、授業に出れば真面目に教師の話を聞き、練習もきちんとやる。

そんな自分を客観的に理解していたからかな

厳しく、きつい環境に自ら飛び込めば、成長できると
自ずとそう感じていた。

研修を終えて半年後、極寒の2月。
シカゴの冬は凍える...

半年の間に一体何が!?
料理人が11人しかいない
僕を門前払いしようとしたスキンヘッドの副料理長もいなくなっている
どうやら2週間の休暇を与えたら、そのまま逃げてしまったようだ。

研修生は所詮お客様
正社員としての責任を持ったスタッフとはレベルが違う

アリネアはディナーのみの営業だが、AMとPMに分かれている。
AMチームは仕込み担当
PMチームは部門シェフ

多くの人達が驚くであろうが、**コンベクションオーブン(多機能オーブン)やディッシュウォーマー(お皿を温める)、ヒートランプも無い。 **
お皿を温めるのはガスオーブンで、ヒートランプがない為かお皿は激アツの状態で盛り始める。
オーブンから毎度お皿を出すのも最初は大変だった、もちろんオーブンを閉める時に音を出せば追い出される

アリネアでは、どんな状態であろうがミスをしたものはキッチンから追い出され地下の倉庫で営業が終わるまで掃除を命じられる。

アリネアには専属のパティシエがいない、料理人がデセールも担当する。
その為か、「お菓子」に囚われない自由なデセールを創り出していた

この感性は、僕に多大な影響を与えることとなる

働き始めて3日が経とうとしていた、僕はシェフパティシエのコミから始まり
シェフパティシエの担当する料理は3品、前菜1つ
スペシャリテの1つ「Hot Poteto, Cold Potato」
最後のデザートマット

3日目の営業始まって15分ほど過ぎた頃、問題は起きた。
「Hot Potato, Cold Potato」のHotの方がぬるいと・・・
シェフ アケッツがおりてきた...

Hot Potato, Cold Potatoは、ワックス(蝋)で手作りの器に、冷たいトリュフとイモのスープを流し、蝋の器にブルノワーズ(極小さい賽の目)に切ったバターとパルメザンチーズ、シブレットそして、激熱のイモのコンフィを刺して提供し、口の中で熱さと冷たさの両方を楽しむ1品だ。

シェフパティシエのゼーブルスがそのミスでキッチンから追い出されてしまう。
シェフ サイモンから「Are you in or not? (やるのか、やらないのか?)」
考える事も暇もない、「Oui Chef」
それ以外に選択肢はない。

3つの料理をさばくのにオーダーを聞いてからじゃ、今の自分では間に合わないことを判っていた。周りを見ながら、自分が担当している料理の1つ前の料理をサービスが持っていき30秒ほど経ったら盛り出すように、とにかくフルスピードで身体は動かすが、頭は冷静に...
手伝ってくれるシェフ サイモンがやりやすいよう、器やパーツ出しを最短で邪魔にならないように。

不思議と頭も目も冴え、突然持ち場を任され、急でパニクっていてもおかしくない中、楽しんでさえいた。
約6時間ほどの営業中、歯車は淀みなく動き続け、気づいた時には全てが終わっていた。

一言。
シェフ アケッツ、シェフ ベーグル、シェフ サイモンから一言だけ...
「I Like You」

 
翌日、ゼーブルスが心配した顔で朝挨拶を交わし、大丈夫なことを伝えたら一言僕に「ありがとう」と伝え仕込みに入った。

それから2週間後、ゼーブルスは退職してしまうけれど、本当に色々教えてくれて面倒見の良い先輩だった。

ゼーブルスがみんなに送られ退職した翌日、AMチームの料理人が2人逃げていなくなってしまう。

盛り付けではなく「料理のすべてを、アリネアのすべてを学びたかった」僕は、
シェフにAMチームに入れてくれと願い出た。
人数も減り、やりたがる人の少ないAMに自らやりたいと願うものはいなかった。

どのレストランでもそうだが、営業をやりたがる人がほとんどだ。
営業中の調理、盛り付けは華やかで、輝かしい。
でも、一皿を仕上げるには仕込みが何よりも大事だと思う。
いずれ、部門シェフとして営業に関わるならイチから学ぶべきだと感じていた

僕はまだ知らなかった、アリネアで働くという意味を...

この選択が、自らの限界に立ち向かっていくこととなる...


To be continued...


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