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(中)バックパッカー料理人 第6便

dal Pescatore...


福岡空港から13,638km...
北イタリアはマントヴァ州の片田舎、カンネート・スッローリオ
ミシュラン3星を維持し続ける伝説のレストラン。
代々家業を継ぎ、今は2013 World50 Best Restaurants 最優秀女性シェフに選ばれた3代目ナディア・サンティーニが指揮をとる。
多くの日本人シェフたちがここで修行を積んでいることも知られ、日本でも有名なレストランの1つだ。今回、東京、目黒でミシュラン1星を獲得されているイタリアンレストランラッセ

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で話題の村山シェフにご紹介いただき行ってきた。
村山シェフはダル・ペスカトーレでスーシェフ(副料理長)まで勤め上げた超人である。
なんでも、現在、これまた東京のイタリア料理の名店リストランテ濱崎の濱崎さんの息子さんが働いているという。海外で日本人に会うことはほぼ無い中、修行中の料理人に会うということも楽しみになってきた。
その前に、この田舎の中の田舎に辿り着くのも容易ではなかった。まぁ、それもいつも通りなのかもしれないけども。

ボローニャを出た僕はモデナまで電車で向かい、そこからはバスでマントヴァへと行き、そこからレストランがある近くの村に宿をとっているのでバスでさらに向かう予定を組んだ。その宿は、ダル・ペスカトーレに食事に行く若者たちの定宿らしくレストランまで送迎もしてくれるというサービスがついている。
5年前の旅の時に学び、海外用にSIMを用意していたのでGoogleでサクッと調べ「なんだ、2時間ちょっとで着くじゃないか」と生温い気持ちで舵を取った。
モデナまでは順調に進む。さて、バス乗り場へ向かい番号を確かめ、田園を眺めながら40分。あと3つで乗り換えのポイントだ。Google マップで位置を追い間違えないようにできる。今までは、毎回運転手さんに乗る前に確認し、降りる停留所もいつもアナウンスしてもらっていた。海外のバスや電車は、停留所の名前のアナウンスが基本ないことが多い。文明の利器に頼り切っていた僕は、スマートホン以外耳を貸していなかった。
そのまま、降りるとそこはハイウェイのど真ん中...
猛スピードで車やトラックが往来する。いや、単純に危ない。歩道もない。スマホの地図で向かう方向とバス停の位置を確認する。スマホ上では30分後に目的のバスが来ると記していある。往来するハイウェイの一瞬の好きを見つけ全速力で横切りバス停へ行き、時刻表を見ると... どう見ても、今日このあとに1つも時間が書いていない。いやいやいや、まさか。
とりあえず、スマートホンというバス停ができた頃には存在していなかった機器を信用し、30分待ってみることにした。
・・・。
ここはイタリア。時間通りに来る方がめずらしいってもんだ。
・・・・・。
30分なんて30分前に過ぎた。もう夕暮れ時。

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これはやばい。じっとしていても仕方がない。また車が飛び交う最中を走って横切り、15分ほど歩いた先に見つけた小さな住宅街へと向かってみた。そこで歩いている老夫婦に話しかけるとバスは1日2本、午前中にしかないよと、そして近くにオーベルジュがあるから、そこで相談してみるといいと教えてくれた。
そこから歩くこと20分。まったく近くはないと思うけど、オーベルジュへ辿り着くとフロントは開きっぱなしで誰もいない。レストランのこれまた開きっぱのドアにノックし入ると背の高い男性が、チェナ(ディナー)はまだだよと。彼に、自分は料理人で、マントヴァのレストランへ向かっているんだが...と状況を話すとホテルのフロントを呼んでくれ、彼が今日は宿泊客もいないことだし乗せていってあげると言ってくれた。親切に甘え、彼の車でなんとか予約していた宿に5時間遅れで到着することができた。
心配して待っていてくれた宿のおばちゃんが、お腹空いているだろうとお手製のサンドウィッチとミルクを用意してくれた。そんな優しさたちに、今日の疲れも全部吹っ飛ぶってもんだ。

翌朝、おばちゃんにダル・ペスカトーレまで送っていただく。隣近所のおばちゃんをヴァイオリンの稽古まで送るからと一緒に乗って。イタリア語でよく分からないけれど、3人で食や旅の話で盛り上がりながらのドライブ。途中でおばちゃんを下ろし、レストランへと30分以上も早く着いた僕は、自動で開閉する門をくぐり支配人の長男へ荷物を預け、店の周りと探検。

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ほんっとうに何もない。自然に囲まれた村だ。

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レジス・エ・ジャックマルコンがある山の上の村サン・ボネ・ル・フロワにはお土産屋さんもバーもあった。
レストランの横にはヘリポートがあり、欧州の大金持ちたちは自家用ヘリで食事に来るらしい。規模が違いすぎて笑けてくる。

3星レストランっていっても、ここは肩が凝ることはない。家族経営のレストランだからなのか、暖かさが溢れている。
中庭が一望できる席へと案内していただいた。もちろん旅路で雨に当たったことのない超神晴れ男の僕にちなんで、眩いばかりの日差しがテーブルを照らす。

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食事が始まるかという時、シェフナディアが笑顔で出てきた。僕の手を引っ張りキッチンへと案内してくださり、エプロンとサイン入りのコック帽をかぶせられ(半ば強制的に笑)、修行中のコーヨー君(リストランテ濱崎の息子さん)と挨拶し写真を撮っていただいた。

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食事の時間だ。
ドリンクはもちろんワインのペアリング
ダル・ペスカトーレのスペシャリテが並ぶメニュー
冷製オマール海老のテリーヌ

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フォアグラ・パッションフルーツのソース

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カボチャのトルテッリ

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北イタリアの郷土料理であり、シェフナディアのお母さん名人ブルーナさんが得意とされるリゾット
この日はバジルとマグロのカラスミのリゾット

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バジルの鮮やかな緑色と爽やかな香り、そしてマグロのカラスミの力強いコクと塩味がたまらなくおいしい

食後、どでかいメニューにサインをしていただいて、レストランの紙袋にメニューとコック帽を入れ、支配人の長男に駅まで送っていただいた。
料理は季節ごとに変わり、キノコやジビエの季節、サフランのリゾットは最高だぞっと駅までの30分が楽しくて短く感じた。
後にコーヨー君とは、帰国後ラッセで食事をし朝まで飲み明かした。

ここまでアットホームなホスピタリティと洗練された料理を両立し続ける3星レストランがあるとは。本当に楽しく、おいしく素晴らしい経験をさせていただきました。
勉強させていただきました。
ご馳走様でした。


To be continued...



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