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2022.6.16 日本人にまつわるYouTube情報の大ウソ

今回は、巷に溢れる『日本人のルーツ』にまつわる情報について、科学の専門家の目線で見ると、どれくらい正しいものなのかを少し書き綴っていこうと思います。


You Tubeは私もよく観ますが、中でもよく散見される『日本人の起源/ルーツ』に関する話の問題点について、まずは簡単に紹介します。

日本人の起源というキーワードで検索すると、たくさんの動画が出てきます。

例えば、

むすび大学チャンネル 教科書にはないDNA解析で分かった古代日本人の起源

であったり、【ゆっくり日本史解説】という人気のシリーズだと、

れーしチャンネル 日本人の起源『出アフリカより』
GameLite 日本人の起源は謎~ハプログループ、ミトコンドリアDNAとY染色体でこんなに違うDの一族

などがあります。

あるいは、

【真・日本の歴史】 日本人はどこからやって来たのか?
TOLAND VLOG 【人類の起源】「日本人のルーツはありえないほど特殊だった」 

など、読者の目を惹くような少し変わった言葉の表現を入れるというのが特徴になっています。

さらには、

TOLAND VLOG ヤバすぎる日本人の起源
ゆっくり民話チャンネル 新たなDNA
雑学ミステリー通信 世界が恐れる日本人の起源の謎

といった、もうなんか日本人だけ宇宙人のように別者扱いしたような表現は本当にやめてほしいというレベルのものまであります。

このうち、まず初めにに紹介した、『教科書にはないDNA解析で分かった古代日本人の起源』を取り上げてみます。

視聴して頂くと分かりますが、さすが、むすび大学チャンネルだけあって、解説はかなり有名な予備校講師の茂木誠氏です。

解説が上手いので分かりやすいのですが、内容にいろいろと問題があります…。

例えば、現代の人類学者が、今はもう古くて使用しない人種名称であるモンゴロイドやコーカソイド、ネグロイドといった言葉が、今でも当然のように使われているかの如く述べている部分があります。

これは確実に指摘できる間違いです。

それから、中国の上海や南京辺りから人々が米を持って日本列島に来た。

つまり、朝鮮半島経由ではないという風に述べていますが、これも甚だ疑問です。

また、沖縄人に関しては、ほぼ純粋な縄文系だと述べていますが、これも大きな間違いです。

最新のDNA研究論文では、沖縄人は大体25%ほどが縄文人のDNAを受け継いでいるという明らかな結果が出ています。

残りの75%は農耕民ですので、ほぼ純粋な縄文系だと断定するのは、何を根拠にしているのか分かりません。

また、アイヌ人が北海道に渡ってきたのは鎌倉時代と述べていますが、これも明らかな間違いです。

北海道には、縄文時代の後に続縄文時代、摩紋時代という連綿とした遺跡があり、古来からアイヌの人々の祖先が北海道にいたことは明らかです。

さらにおかしい点として、専門外であるはずのDNA研究に言及をしていますが、この方は研究者の方の名前や文献など一切出されていません。

ただ、上記に指摘した間違いがあった一方で、かなり確信的な解説もあります。

こうして明らかに正しいものの中に間違いが散りばめられているのが少し厄介で、結果的に残念でなりません。

全体的には、8割程度は正しいことを仰っています。

こういった問題点が数多くあるので、YouTubeはなかなか厄介で鵜呑みにはできません。

続いて2つ目の例は、『分子人類学から読み解く日本人のルーツ』を取り上げてみます。

「新」経世済民新聞 三橋貴明 公式チャンネル 『分子人類学から読み解く日本人のルーツ』

この動画の解説の方は長浜浩明氏といい、元々は理系の方で色々と発言されている評論家的な方です。

長浜氏は、新人が沖縄から北上して、日本列島に来たと断定しています。

つまり、ここでも朝鮮半島経由ではないと言われていますが、ここが疑問の生じるところです。

さらに、この動画では研究内容を引用して『ジェノグラフィック・プロジェクト』から図表を出していますが、この研究は既に資金が上手く集まらず、途中で消えていってしまった過去の遺物となった研究です。

今では、より膨大に世界中のサンプルを集め、ゲノムを確定させた『ハップマップ・プロジェクト』を使うことになっています。

ただ、この動画についても細かい説明については、かなり妥当性のものがありました。

その中に、日本人と朝鮮半島の人は全く違うと思いたい…。
そんな“歪曲的な主観”が埋め込まれているという部分です。

長浜氏のような方々は、実際にご自身で研究をしていないため、いろんな本を読み、しかも自分の考えで歪曲したことを話してしまっている面があります。

結論として、やはり1つ言えることは、最新の正確なデータを基に分析し、論文などできちんとした発信をしている研究者の出す情報を見て頂きたいということです。

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