【短編小説】氷々と
雨が降っていた。
ニュースを見ると雹も降る可能性があると書いてあった。
思わず、
うひょー
と言った。
雨雹ー
……一人暮らしの部屋でこんなこと言ってる人間ってなんなんだ。
まあいっか。
でもなんとなく虚しくなったのでカーテンをシャッと閉めた。
外は雨なのに家の中はあつぬるい。
湿度の高いあんまり好きじゃない天気だ。
あー、アイス食べたーい
そう言いながらショートパンツのパジャマからのぞく足をジタバタさせた。
シャーベットがいいな。
冷凍庫を開けると製氷器に入った氷以外はがらんとしていた。
これだけかあ
雨のせいで心なしか駄々っ子になった自分はそれだけでは満足できない。
やーだーもっと美味しいアイスがいいー
もう一度床に寝っ転がり大の字で天井を見た。
気持ちがとってもブルーだ。
全部雨のせいにしよ
ゴロゴロ転がってると先日使ったブルーキュラソーが目に入ってきた。
あ、なんか使えるかな
お酒ライナップを眺めていると最高の閃きが自分の元に舞い降りた。
ブルーハワイかき氷酒アイス。
これだ。
ブルーハワイかき氷酒アイスは意味かぶりがあるかもしれないが大事なことを忘れないで欲しい。
名称というのは名前によってそれがなんなのかを決定づけるのだ。
プリンラーメンはプリンの入ったラーメンだし、
ラーメンプリンはラーメン味のプリンだ。
つまり!ブルーハワイかき氷酒アイスというのは
アイスなのだ!!
完璧。
早速取り掛かろう。
去年の夏から眠らせてるかき氷をガリガリするあれを引っ張り出し、よく水洗いをした。
…変な匂いは…してない、よし。
ハンドルをぐるぐるして、雪をグラスに降らせていく。
外は雹が降っていてもこっちは雪。
雪の勝ちだ。
そして後はブルーキュラソーをかければ出来上がり。
一口食べてキーンさせてくるそれの味は案外悪くない。
リピあり。
お酒が入ってるとはいえ冷たさと甘さであっさりぺろりと平らげてしまった。
鏡に向かってあっかんべーをすると見事に青い。
こいつあオーシャンだ。
もう一度床で大の字になり、体を巡るアルコールの熱さと、さっきまでほっぺにいた氷の冷たさを同時に感じながら、
気づくと眠りについていた。
今週もいい金曜日だった。
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