【短編小説】マヨネーズとケチャップ
マヨネーズハリネズミとケチャップハリネズミがいた。
二匹は仲良く食卓に並んでいた。
マヨネーズとケチャップなら要冷蔵庫だが、二匹はハリネズミなので常温でもへっちゃらなのだ。
二匹が仲良くニコニコ並んでいると食卓を囲んでいるカップルの喧嘩が始まった。
「目玉焼きにはケチャップでしょ!?」
「いやマヨネーズだろ!」
ハリネズミたちはおろおろした。
二匹は二人に仲良くして欲しかった。
「ぴぃぴぃ」
二匹は鳴いた。
何をかけるかなんてどうだっていいじゃないか。
君たちの仲良しはそんなことで壊れちゃダメだ。
「ぴぃぴぃ」
二匹は声をあげるが、怒りで聞き入れてもらえない。
喧嘩がヒートアップすると次の瞬間、
二匹は口から調味料を吐いていた。
ケチャップハリネズミは口から赤い液体を吐き、
マヨネーズハリネズミは口から白い液体を吐く。
彼女は真っ赤に、
彼氏は真っ白に。
二匹はとうとう泣き出してしまった。
手の中でふわふわした生き物が泣き出したことでカップルは我にかえる。
手の中の暖かい生き物が、泣いているのだ。
口から白あるいは赤い液体を吐いたままで。
目の前には調味料まみれのパートナー。
二人は泣いた。
そして二人と二匹はお互いを抱きしめあった。
ごめんなさい。
別にどっちだろうと、楽しく食卓を囲むのが一番だもんね。
二人と二匹は身なりを整え、
今度は楽しく食卓を囲んだ。
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