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第2回DJイベント「サラダボウルと煮込みシチュー」ができるまで。(6)SJC2022解説・後編


機材厨な貴方へ。(2022年執筆)

ご機嫌いかがでしょうか、主宰です。SJC解説後編、今回はまず当日の機材セッティング概観から。コロナ禍以降すっかり宝の持ち腐れ化していた当方Apple製品達を今回総動員しまして当方5年振りの実践に向かったのでした。かといって決して鈍重にならず、あくまで同セッティングを3台同時に実現できるという安心感一本勝負。3クレ前提で全てを始めるという安定志向。

あくまで機材トラブルを最小限に抑えるムーブで。細部まで音にこだわるのなら我がのイベントでやる、今回は課題発見及び効率化を目指すためのワンステップ。失敗を恐れず思い付いたアイデアはその場でジャンジャン試す、オフライン開催ならではのリアルタイムなフィードバックを感じつつ。これですこれ、これこそがライブの醍醐味だったのです。

お待たせしました、当日セットリスト。

Akiko/It Don't Mean A Thing(2005)

The Singers Unlimited/Someone To Watch Over Me(1977)

いつもながら前置きが長い。好事家の皆様には是非サウンドチェックの段階からお越し下さいと事前にアナウンスしておりました通り、試合開始前から仕掛ける選曲で。敬愛する小西康陽氏プロデュースの盤から遡ること40年、独学でアカペラジャズの世界へ飛び込んだ銘手Gene Puerlingへバトンパス。馴染み深いスタンダードナンバーを聞いたこともない音像で届ける30分間。

Anthony Strong/On A Clear Day(2015)

乾杯の音頭を取らせていただいた後オープニングを飾ったのはFrank Sinatra直系、まさに王道なサウンドをあくまでポップに鳴らす英国の雄。ピアニストとしてだけでなく全曲ブラスアレンジまで独りでこなす逸材、3年振りのオフライン開催という「ハレの日」に彼のサウンドは不可欠ではと感じて。独り芝居として臨む主宰初ステージにすら彼の姿を重ねてしまった。

Boz Scaggs/Speak Low(2008)

全曲Gil Goldsteinアレンジ、知る人ぞ知る銘盤から。Boz Scaggsは過去に2枚ジャズ・スタンダードアルバムをリリースしてまして、後発作をチョイス。「人味違った現代的サウンド」でお楽しみいただくべく00年代以降をメイン軸に据え選定へ入った。Mike Mainieriのマリンバソロも絶妙ですよね、表題にふさわしい編成。ジャズ研時代こういうバンドに物凄く憧れた。

Shirma Rouse&Kim Hoorweg/I'm Beginning To See The Light(2012)

共にオランダ出身の女性ツインヴォーカル編成もさることながら、なかなか7拍子で演奏される機会の少ないこちら。Ella Fitzgeraldオマージュを随所に感じさせる迫力の掛け合い、歌詞「希望の光が見え始めたみたい」には勿論3年振りのオフライン開催をお祝いする気持ちを託しました。個人的にDJで変拍子をかけるとどんな雰囲気になるのだろうというワクドキも少々。

Momocurly/You're My Everything(2020)

日仏を拠点に活動するMomocurlyは以前、別稿でも取り上げました。ご存知Freddie Hubbardを代表する盤『Hub-Tones』を、ここでは敢えてお口直し尺としてご提供。なんとなく10分刻みで舞台転換していこうの気概でもって、主宰は全18曲を小脇に抱えステージへと上がっておりました。うち6曲消化果たしてこの先何が飛び出すのやら。

Jeff Hamilton Trio/A Night In Tunisia(2007)

ヴォーカル一本勝負って言ってたじゃないか!!とのお叱りの声はおよそ皆無かと思いますがしかし、これを「歌心」と呼ばず一体何と表現するのかと。いっちょ前にキーボードとかピアニカとか舞台にありましたけれど、本職はドラマーです。虚勢を張っていただけだったのです!!とはいえスタンダードに触れることはルーツに出会うこと、自らのルーツも紐解く意識でもって。

Tierney Sutton/Autumn Leaves(2001)

ブラシワーク繋がりでもう1曲。スタンダードと聞いてまず最初に挙がる、もう耳にタコができるほど聞いたはずなのに歌いだしてからもしばらくその正体に気付けない。ちょうど30分ステージの折り返し地点に、コンセプトの中核を担う存在を次々配置しておきました。葉が落ちるにはまだまだ早い、ということで季節に合ったモノもチョイスしておきましょうということで。

The Steve McQueens/September's Come What May(2021)

次に選んだのがこちら昨年リリースされたシンガポールの新星によります「Blue In Green」の替え歌。コロナ禍を象徴するジャケット、スタンダードに焦点を当てつつもプログレあるいはジャパフューの質感すらも感じさせるまさに新しい時代の「リハモ」を鳴らす主宰イチオシバンドです。ですから盛り上がらんと言われようが渋かろうがフル尺で行かせていただきました。

Natasha Agrama/Black Narcissus(2017)

スピリチュアル・ジャズの名盤といえば無論Joe Hendersonの名を外すことは絶対にできません。今回はリハーモナイズかつずジャズ・ヴォーカル盤縛りということで2017年リリース、Stanley Clarkeを義父に持つサラブレッドNatasha Agramaを取り上げました。ずっとかけたかったんですよ彼女の歌声を、今回図らずもその夢が叶いました。

Jamie Cullum/Singin' In The Rain(2004)

途中、まだまだ暑さが残りますねーみたいな顔して傘を差し直したのはそうこの後「雨が降ってくる」からに他なりません。『雨に唄えば』の名シーンを模しておもむろに歩き出してみましたがお客様方のなんだコイツ感はもう忘れられない数秒間となりました、対戦ありがとうございました。ここだけは、わかる方向けの演出です。知らなかった方は是非、映画本編をどうぞ。

Jake Sherman/When You Wish Upon a Star(2022)

こちらも主宰イチオシのSSW、いつぞや「極私的ジャズ銘盤選」でも彼の名前を取り上げる機会がありました。ウォームでオールドな質感そのままに、オーセンティックなピアノ弾き語り一本勝負でもってあらゆる新旧のスタンダードを料理していく。20年代に入ってからというもの、特に深く胸を打たれたアーティストの一人です。

Luke Sellick/Auld Lang Syne(2017)

などと悪態ついてるうちに、ぼちぼち閉店のお時間が近付いて参りました。スコットランドでは非公式ながら準国歌として、日本では「蛍の光」として有名なアレ。英国のEU離脱協定案可決の際この曲が大合唱された光景もまた記憶に新しい、いつぞや雨が雪へ変わり始めたぞなんてところまで卒なく。時間が余れば勝手にアンコールまで繰り広げる予定でしたが、さすがに。

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