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思春期の揺れ動く気持ちがつまった物語 『あした、弁当を作る。』 ひこ・田中 /著

今週出会いました。思春期の揺れ動く気持ちが詰まった注目すべき児童書に。児童から生徒に変わり中学生はそれぞれにモヤモヤを抱えています。自分でもその正体が完全にはわからないけれど、何かが確かにこれまでと違って見える。そんな大人と子どもの間の時期で揺れるココロが解像度高く楽しく読者に伝わります。『あした、弁当を作る』は中学生にも、かつて中学生だったあなたにもオススメの一冊です。

『あした、弁当を作る。』著:ひこ・田中
第64回日本児童文学者協会賞受賞作品


思春期と更年期は似ている?


この作品で描かれたのはある中学生の13日間の出来事でした。ここがまず素晴らしい。というのも思春期は期がつくことからもおわかりのように、ずっとその状態が続くものではないある期間のことを指します。つまり長い人生で、子どもから大人へと次のフェーズへ向かう最中での“13日間という短期間にスポットを当てた主人公龍樹の思考と行動の変化”を読者は目撃するのです。それは時には当事者目線であったり親や友人目線であったり、読みながらそれぞれの立場で心を寄せるのです。作中では描かれていないその後が気になるのも当然のことなのかもしれません。

こう考えるわたしは、現在更年期を駆け抜けております。突然の汗、忘れ物これもいつかは終わると自分に言い聞かせてタオルを握りしめてあっという間の一週間を過ごしています。今思えば一過性の不安定な時期という点において思春期も似ているのでは?と感じています。いつか振り返る時期が訪れて欲しいものです。龍樹の親もまた、きっと変化の途中なのでしょうね。


この作品の推しポイント


この作品では、題名にある通り龍樹が作るお弁当が登場します。このおかずがとても具体的で料理本になりそうなわかりやすさ。龍樹が情熱を持って前向きにトライする様子に、高校生の娘に簡単なマンネリお弁当を作っているわたしが猛反省しました。実際、読んだあとから一品つめるおかずが増えました。物語では「作る」と「食べる」が詳しく描かれ、食が題材になっていることから、人生において大切にすべきことに気付かされました。


おわりに


龍樹は一体どんな変化を遂げるのでしょうか。学校で出会う友人たちの声も聞きながら、根底にある幼きころから受け取ったであろう愛情という土台の上に、自分自身で成長していく姿が物語を超えて楽しみです。



お読みいただきありがとうございました。






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