耳屋18 ネコって時々人の言葉を理解してるよね
その頃私は、スキューバダイビングの資格を取ろうとしていた。
そのためには当然、何度か海に行く必要があり…
その日は、ダイビングショップの車でピックアップしてもらうために、都内の始めて行く場所に朝6時に着かなければならなかった。
わたしは、ダイビングの装備一式を自転車のカゴに乗せて、4時半に家を出た。
外は、まだ夜明け前で暗い。
その時間はさすがに20分に1本程しか電車はなく、その電車に乗り遅れたら、講習1回分の18000円が無駄になるプレッシャーは、ハンパなかった。
電車の中でも、乗り過ごしを恐れて眠気さえ感じなかった。
そして、無事約束の時間の10分前に指定の場所に着いたんだけど…。
クルマが来ない。
待ち合わせ場所を間違えてないよね?!
待ち合わせ時間、間違えてないよね?!
クルマだから、渋滞とか?!
目の前の道路は、殆どクルマは通ってもいないのに…。
まあ、色々な気持ちは過ぎるものの、6時15分過ぎても、クルマは来ない。
で、ダイビングショップのオーナーにこんな時間に連絡する事に躊躇しながらも電話したところ、他の場所からピックアップ予定の数人からも同様の電話が入ってるって。
しばらくして、オーナーから電話がきた。
ピックアップ予定のインストラクターが、寝坊して30分位出遅れたらしい…。
それを聞いた私は、安心するやら、腹がたつやらで、早朝から気が抜けて待ち合わせ場所に、ボーっと立ち尽くしていた。
すると、通りすがりのネコが私の前に立ち止まり、私に向かって「ニャー」と泣いた。
私は勝手に「何してるの?」って聞かれた気がして
「すっごく早起きして必至でここにきたのに、待ってるクルマが全然来ないんだよねー」
と、人に説明する様に話をした。
それを聞き終えたネコは、コロンと転がって、脇腹を撫で撫でさせてくれた。
まるで、「まあ、ネコでも撫でて、気をまぎらわせな」ってな感じで。
そのネコは、誰にもそんな感じなのかと思っていたんだけど…
私の様子を見た通りすがりのサラリーマン風なおじさまが、そのネコが横を通った時に撫でようとしたら、大きく避けられてた。
その後、30分遅れだけど、無事クルマが来た。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?