さくらいたかよし

マイアミパーティというバンドで歌っております。 CMナレーションのお仕事もしております…

さくらいたかよし

マイアミパーティというバンドで歌っております。 CMナレーションのお仕事もしております。 短歌や詩を書くことが趣味です。 ここではエッセイを書いています。

最近の記事

日本語大賞 優秀賞受賞のお知らせ

いつも、私のエッセイを拝読いただき、ありがとうございます。 第15回日本語大賞にて、私のエッセイ「母推す息子」が優秀賞を受賞いたしました。 下記URLより閲覧可能です。(一般の部の箇所にあります) これからも、着の身着の儘、エッセイを書いたり、短歌を書いたりしていきます。 とはいえ、本業は音楽なので、そこはおろそかにせず。 来年には本を出せるといいなぁと思っております。 今後ともよろしくお願いいたします。

    • 風の匂いに振り回されて

       専門学校でテレビCMの制作をしていた頃、何のCMを作っている時か忘れたが、こんな15秒のストーリーを提案した。  CMは消防車のサイレンの音から始まる。消防士が火災現場に到着すると、一軒の家が燃えている。「被害者0、確認しました。」と無線でやりとりをする消防士の声が聞こえる。どうやら住人は逃げ切ったらしい。かたわらで、ひとつの家族が消防士に色々と聞かれている。お母さんらしき人は、ずっと泣いていた。その手を見ると、両親は銀行通帳とお財布を手に持っていて、子供は一台のミニカー

      • 大人になると言うこと

        年をとると、いろんなことが少しずつ変わってくる。例えば、泳ぐ場所だった海は、いつの間にか眺める場所に変わった。年を重ねていくごとに、なんだか誇らしくなったり、虚しくなったり、周りと自分を比べて焦りを感じたりする。お肉より、お魚が美味しく感じたり、たまぁに流れる涙になんだか安心したりする。本当に優しい人に気づけたり、一人でいたい夜があったり、一人じゃいられない夜があったり。あれもこれも、大人になったから、知ることができたのだ。  中学生の頃、えみちゃん(仮名)という子が好きだ

        • ワンピースの最終回と中華料理屋のじいさん

          海外ドラマや、もう何年も続いているアニメを見る時、自分の心に「本当に見たいの?」と尋ねると、きっと「もう別に見なくても大丈夫」って返ってくるようなものを今日もボケーっと見ている。いつの間にか、見なくちゃいけないという責任感と、ここまで見たんだから最後まで見ないと勿体無いという、よくわからない意地まで生まれる。もはや、ワンピースの正体がなんだろうと、どうだっていい。ただ、最後まで見届ける義務が僕にはあるのだ(ない)。  話は変わるが、近所にずっと気になっていた街中華のお店があ

        日本語大賞 優秀賞受賞のお知らせ

          冴えない男

          中学、高校の頃、大体のカップルはお似合いの二人組ばかりだった。学年一可愛いと言われていたあの子は、モテそうな男と付き合っていたし、頭の良い人は頭の良い人と付き合っていた。外から見ても、二人が何故惹かれあったのか、大体の理由はなんとなくわかった。  顔立ちの良い女の子が、冴えない男の子と付き合うことは、知っている限りなかったし、その逆もなかった。僕はといえば、完全に冴えない側の人間だった。中学、高校、髪型は丸坊主、学校祭ではメインイベントの「カラオケ大会」に無理やり出され、当

          元カノとチータラ

           10年前の元カノの話をSNSに書くと、元カノの友達からDMが来た。  「ものすごいモラルに欠けていると思います。ネタにして面白いですか?がっかりしました、投稿を消してください」  その友達とは直接会ったことはなく、元カノからよく話を聞いていた友達だった。僕からすると、別れて10年経った今もその人が僕のSNSを見ていることに少し驚いた。元カノはとっくのとうに僕のことをブロックしていたからだ。  投稿した内容は、当時元カノが働いていた映画館で、僕は舞台挨拶のゲストで登壇す

          元カノとチータラ

          結婚した友達と老夫婦

          「現在は独身ですか?」と区役所で聞かれ、その後、携帯ショップで機種変更を行った際に同じことを店員さんから聞かれた。立て続けに聞かれると「結婚しないんですか?」とも聞こえてくる。自分が結婚しててもおかしくない年齢になっていることに、最近はなんとなく気づいていた。もはや「恋人のことを相方と呼んでる人がむかつく」だとか「マッチングアプリ?やるわけないじゃん!」とくだらない小言をぐちぐち言ってる場合でもなければ、夜中に人肌恋しくて湯たんぽを抱きしめてる場合でもないのだ。ましてや、好み

          結婚した友達と老夫婦

          結局お化けも人間もどっちも怖い

          友達同士で集まり、実際に体験した霊的な怖い話をみんなでしていると、必ず誰かが「お化けより人間の方が怖いけどね」と、言い始める。そんな元も子もない発言は、大体の怖い話の会を終わりに向かわせる。  確かに人間の方が怖い時もたくさんある。知り合いのアイドルの子は、一人暮らしをしていて、ダンスの練習で終電を逃してしまい、その日は友達の家に泊まることにした。すると、深夜2時を回った頃、ファンの男性からSNSのDMで「今日は帰って来ないんだね」と届いたらしい。そのDMで家が特定されてい

          結局お化けも人間もどっちも怖い

          坊主とエロ本

           先日、東京から札幌へ帰省するため、成田空港に向かった。予定されている出発時刻の、四時間も前に僕は成田空港へ到着した。成田空港には、本屋さんが入っていた。時間が余るほどあったので、僕は本屋に行き、本を物色することにした。そこで、数年ぶりにエロ本が売られているのを見た。  当時は、コンビニや近所の本屋さん、どこでもそれは売られていたが、令和になった最近では、コンビニからは撤退し、街中の本屋さんから姿を消した。「こんなところで、息をしていたのか」と少しだけ感動した。昔、成田空港

          1年間だけ接した人

           人生で二年間共に過ごした、別れてしまった恋人。五年間を共に過ごした、バイト先の友人。それに比べて、人生で一年間しか接することはなかったが、今でも僕の頭の隅に居座り続けている人がいる。小学五年生の頃に担任だった、高橋先生という人だ。  小学生の頃、周りの友達は担任の先生について「1組は当たりだ!」とか「2組の先生はハズレだ!」と、言い合い、学年が変わるたびに、次はどんな先生が担任になるかという期待や不安を抱えていた。  しかし、当の僕は周りほど担任に関心が持てず、怖くない人な

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          サッカー少年団のタクマ君

           小学3年生の僕はサッカー少年団に所属していた。サッカーは大して好きではなかったが、友達のタクマ君とジュンヤ君が入っているからという理由で、僕も入ることにした。そのサッカー少年団には、サッカーボールは用意されておらず、1人1個、サッカーボールを持参しなければいけなかった。そのことを母に伝えると、母はこちらを見ずに「わかった」とだけ言った。買ってくれるのか、買ってくれないのかもよくわからないまま、初めての練習の日が近づいてきた。練習の前日、母は「ほら!これ!」と言って、サッカー

          サッカー少年団のタクマ君

          10円とおにぎりと妊娠

           高校二年生の夏、隣のクラスの友達が僕のクラスのドアの前に立ち「さくらーい!」と叫んでいた。結界でも張られているかのように、頑なに僕のクラスへ入ってこようとはせず、足は廊下につけたまま、体は教室の中へ乗り出す姿でヘラヘラとしていた。僕がドアの前まで行くと、その友達は「頼む!10円くれ!」と言ってきた。僕は10円を渡した。10円を渡すだけで、その友達が帰ってくれるなら安いものだと思ったし、あれこれ考えるのも面倒だった。その友達は、いつも色んな人から10円を貰い、100円や、多い

          10円とおにぎりと妊娠

          両親

           僕がまだ小学一年生の時に、両親は離婚した。離婚というのは今では珍しくないが、当時は珍しいものだった。学校では数年に一度「●●の家、離婚したらしいよ」とか「離婚しそうなんだって」と、小学生特有のひそひそ話で噂が回ってきた。当然、離婚の意味や意義など小学生にわかるはずもなく、離婚した家の子供は「親が一人いなくなったことに、とても悲しがっていて、ひどく落ち込んでいる人」と勝手に周りから決めつけられるだけだった。当の僕はというと、案外ケロッとしていた。同情以上にできることがない友達

          深夜にやってきた友達

           夜中の1時に友達から電話が来た。その友達から電話が来るときは、決まって暇を持て余していた。いつも、忙しい時に連絡をしてくる人もいるので、これも何かの縁なんだろうと思う。その友達とは、かれこれ5年程、連絡を続けている。お互いの恋愛遍歴をほとんど知っている。知らない部分もまだまだあるが、それは今は知らなくていい部分なのだと思う。付かず離れず、深入りはせず、おそらく友達としては最良な関係が続いていた。  夜中に電話をとり、話を聞くとどうやら恋愛がうまくいかなかったらしい。電話越

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          眠れる僕らは夢を見る

          眠れる僕らは夢を見る  朝5時に、スマートフォンからアラームが鳴る。目は瞑ったまま、昨晩の記憶と音を頼りに、スマートフォンを探す。いつものところを手で探っても見つからない時は、充電器の線を元の方から引っ張り、スマートフォンを引き寄せる。確かな重みを感じる。よしよし、よしよし、とまるで正体不明の大物を釣り上げる漁師のように、僕は慎重にスマートフォンを釣り上げた。  アラームを止めた僕は、そのまま何もせず眠りについた。これが僕の毎朝のルーティンとなっている。夢を見るために、起

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