結局お化けも人間もどっちも怖い

友達同士で集まり、実際に体験した霊的な怖い話をみんなでしていると、必ず誰かが「お化けより人間の方が怖いけどね」と、言い始める。そんな元も子もない発言は、大体の怖い話の会を終わりに向かわせる。

 確かに人間の方が怖い時もたくさんある。知り合いのアイドルの子は、一人暮らしをしていて、ダンスの練習で終電を逃してしまい、その日は友達の家に泊まることにした。すると、深夜2時を回った頃、ファンの男性からSNSのDMで「今日は帰って来ないんだね」と届いたらしい。そのDMで家が特定されていることも分かり、警察にすぐ相談をし、その子はアイドルを辞めた。別の女性の友達は、一人暮らしをしている家に着き、鍵をさし、右に回した瞬間、中から鍵を閉められたらしい。誰もいるはずのない家に、誰かがいたのだ。その後、その人もすぐに警察を呼んだ。警察が来た頃には、部屋に誰もいなかったそう。それが人の仕業なのか、霊的な何かなのかは今もわからないが、きっと人の仕業なんだろう。

いろんな人と話すと、こんな話が溢れている。だから、人の方が怖いかと思ったが、さっきまで友達の東くんが話していた「朝起きたら、壁から長髪の女性の頭が出てきて、じっと睨まれた後「お前か?」と聞かれ、東くんが怯えながら「違います」と言ったら、壁から全身出てきて、その長髪の女性は東くんの家のドアをすり抜けて外に出ていった。」という意味不明な心霊体験の話もなかなか怖かった。

 思い返してみれば、僕もそんな体験をしたことがある。20歳の頃、一人暮らしをしていた僕は、アルバイトや友達との遊びで家を空けることが多かった。家を出る時は居間の電気を消して家を出たはずが、家に帰ると不思議なことに必ず電気がついていた。最初は僕がうっかりしていただけかと思っていたが、それは何日も続いた。友達に話しても信じてもらえなかったので、僕は家に友達を呼び、みんなの前で電気を消してから、家を二時間ほど空けてみることにした。念の為、電気を消した姿を動画で撮った。そして、二時間友達とドライブをして、家に帰ると、電気はきちんと付いていた。

 そこから、僕が家を空けてる間、家の小さなものが少しずつ無くなっていった。歯ブラシや、お土産でもらった小さな置物、冷蔵庫の上に放置していたはずの、いらなくなったストラップ。おそらく、僕に危害を加えたいわけではなく、家に入っていることを伝えたいのかと思った。それが、ますます、霊的な何かなのか、人の仕業なのか、わからなくさせた。

 最終的に引っ越すことを決めたのは、友達が家に泊まりに来た時だった。夜に、おかしなバラエティを見ながら笑って過ごし、ミュージシャンの「YUKI」が好きだって話ををして、皆でYUKIの音楽を流した。それから、朝になって、僕はアルバイトがあったので家を出た。家を出ると、外側のドアノブにTSUTAYAの袋がかかっていた。中身をみると昨日、みんなで話していた「YUKI」のDVDが入っていた。僕は一気に「盗聴されているのか?目的はなんなんだ・・。」と怖くなり、バイトを休んだ。そして、まだ眠っている友達を起こし、家に返し、僕はそのまま実家に駆け込んだ。それから僕はその部屋を解約し、別のところへ引っ越した。

 それからしばらく経って、実家に放っておいた、あのYUKIのDVDを開けてみると、中にはなぜか「赤毛のアン」と書かれた、DVDが入っていた。映像を見てみると、本当にただの赤毛のアンが流れた。あれは、誰の仕業だったのか、はたまたイタズラ好きなお化けの仕業だったのか、今だにわからないが、実家にあるYUKIのDVDを捨てるのも怖いし、置いておくのも怖いので、できれば回収しにきて欲しい。

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