遺芳庵(京都 高台寺)


「遺芳庵(いほうあん)」

京都の高台寺にある茶室。

江戸時代前期の芸妓で、灰屋紹益(じょうえき)(※本阿弥光悦の甥を父に持ち、幼少期に豪商・灰屋の養子となった)の妻であった吉野太夫遺愛の席とも、紹益が太夫を偲んでつくった席とも伝えられています。

境内の方丈、書院の背後に位置し、同じく紹益遺愛の席とされる鬼瓦席と露地を隔てて向かい合うように建っています。

元は鬼瓦席とともに紹益邸内にあったものが移築されたそうです。

まず高台寺塔頭の岡林院に、その後は高台寺境内に移り、さらに位置を変更して現在の地に至ることから、原形から大きく変更が加えられていると推察されます。現在のものは建物も用材も新しく、その古さは保持されていないようです。

内部は床無しの一畳台目向板入りで逆勝手の向切り。西側にあたる壁面には大円窓があけられており、この席の大きな特徴となっています。

この窓が吉野太夫の名から「吉野窓」として知られていることから、「吉野窓の席」とも呼ばれているそうです。

壁には藁すさを散らしています。大円窓の内側には引分けに障子が建てられていますが、ほんの少し中央が開くだけのようです。

向板の先の壁が壁床にあたり掛物が掛けられるように軸釘が打たれ、その壁の中央には竹の柱を立てて花入釘も打たれています。点前座勝手付には洞庫を備えています。

天井には一面に竹すのこを張っていて、中々見られない面白い着想です。

侘びた素朴な表現の中で、やはり一番の見所は大円窓であり、当時の姿をどこまで表しているか定かではないのですが、吉野太夫の好みを彷彿とさせる見事な一畳台目の構えとなっております。

紹益好みの鬼瓦席と太夫好みの遺芳庵が今は仲良く向かい合って建っています。

(京都にある茶室をまとめています↓)

・・

▼茶室建築のおすすめ本一覧です!↓


最後までお読み頂きありがとうございました🍵 記事にスキ(♡)を押すと、「茶室建築のおすすめ本」を紹介します(&励みになります❤)