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中学校除籍 その7 もう取り返しがつかない

この話は私の身に起きた現実の話です。なるべく話を盛らないように気をつけて書いています。


母と知らない男性と私は
新幹線で名古屋から東京へ行きました。

そしてそのまま羽田から札幌行きの飛行機に乗りました。
普通に考えたら名古屋から札幌に直行したほうが早いです。
後でわかったことですが
母は自分の足跡を残したくなかったのです。

こう書くとまるで犯罪者のようですが
別に法に触れることをしたわけではありません。
母の性格上、自分のことになると
とことん神経質になる面があるのと
自分がまるでドラマの主人公になったかのような行動を衝動的にして、それに酔うクセもあり
他人から見ると意味のない行動が多かったのです。

札幌にはまだ雪がたくさん残っていました。
こんな量の雪を見たのは初めてだったので
「ここから日本一周するのか」
と私はのん気に考えていました。

タクシーに乗るとぐんぐん繁華街から離れていきます。
ものすごく嫌な予感がまた湧いてきました。
30分以上かけて、
まだ路面が舗装されていない土地で三人はタクシーを降りました。


札幌市白石区北郷3条3丁目 和光荘。

今でもこの住所は忘れません。
私の人生の中で最悪の四年間を過ごすことになるアパート名です。


そこは学生が暮らすような六畳一間のアパートでした。


ガラーンと何もない部屋に入って
母が言いました。

「今日からしばらくここに暮らすから。このおじさんも一緒だから」

「え、旅行だったんじゃないの? 学校は?」
と聞くと

「お母さんはここですることがあるんだ。
おばあちゃんも叔母さんもこっちへ呼ぶつもりだから、寂しくないからね」

十三歳にもなれば、いくらなんでも嘘だとわかります。
叔父さんだって仕事があるから
母の都合に合わせて家族を連れてほいほいと札幌に来るわけがないですから。
こんな子供っぽい嘘が通用すると思っている母に恐怖心が溢れてきました。

だけどどうすることも出来ないのです。
財布には500円も入っていません。

その日のうちに
ちゃぶ台、カラーボックス、小さなテレビ。食器類。布団を買いました。

そこで気づきました。

六畳一間では布団は三枚敷けないことを。

母は平然と
お前は押し入れが好きだから
押し入れがお前の部屋だよ

と言い出しました。

私はたまに押し入れに入って
フカフカの布団の上で過ごしたりしていましたが、別に押し入れが好きだったわけではありません。ふだんと違う感覚の中で遊んでいただけなのです。

もう取り返しがつかないんじゃないか…


どうなってしまうのか、目の前がクラクラしてきました。



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