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七咲
2020年3月1日 23:01
「煙草、吸うんだ。」背中に張り付いた時に、香水に混じって独特の匂いがした。嗅いだことのある、誰かが吸ってた煙草の匂い。私が尋ねると、あなたはもごもごしながら、「やめられなくなっただけだよ、若気の至り。」と、遠くを見つめて答えた。その瞳に私は映っていなかった。もしかしたら、いつもその瞳に私は映っていなかったのかもしれない。初めて煙草を吸っているところを見たのは、朝焼けが綺麗な時間。ベラン
2020年3月1日 18:02
ちょっとした癖まで知ってるのに、あなたと私は付き合ってない。 足と手の親指がひどく反り返る。私だけが知っている秘密にしておきたい。横になって、見える足先。指。親指だけ力がぐっと入ってるみたいに、他の指より反っている。手の親指もそう。ふと広げた時に、ぐっと反っている。親指だけ。それに気づいているのが私だけならいいのに。そう思うから、言えないでいる。何気ない会話の時に、
2019年3月2日 04:07
「早く野垂れ死んだらいいのに」そう呟いてスマホを置いた。大嫌いな男はまだしぶとく生きているようだ。 その男は、半年前にこう言った。「飽きたから別れてほしい」平日、昼間のサイゼリヤでの出来事だった。周りの卓はランチタイムで賑わっている。この卓だけ葬式のような静けさだった。いや、葬式の方がまだ音がある。ここだけ無音だった。あまりの衝撃で言葉を忘れてしまった。突いて出たのは「ぁ…あぅ、あ?」
2019年2月28日 12:01
「それ美味しい?」別にその飲み物に興味はなかった。大量の生クリームにチョコチップの混ざった甘そうな代物。そんなものはどうでもいい。僕は君に興味がある。毎週水曜日、3時限目。君は窓際、前から4列目に座って気だるそうにそれを飲んでいる。いつも同じで飽きないのだろうか。席も、飲み物も。確かに、席に飽きるも飽きないもない。僕だっていつも同じ席だ。生憎、ゲームのやりすぎで目が悪くなってしまったか
2019年1月21日 00:39
あの恋を忘れるために好きになった。ただそれだけ。ぬちゃぬちゃした音とザラザラした感触が嫌いだ。気持ち悪い。こっちを見た時のジトりとした瞳に寒気がする。影ができるほど長いまつ毛に嫉妬した。頼りなく丸い背中に傷跡をつけた。『お前は身代わりだぞ』という小さな反抗だった。それでも、あなたの何もかも失ったままの格好で、永遠について語る様だけが酷く美しかった。薄い身体に寄り添うと、どうでも