最近の記事

真っ黒なキャンバスに彼は何を描くのだろうか?

既に完成しているものに何かを付け加えることは難しい。その結果として誰かに余計なことをしたと言われることもあるだろう。零を壱にする作業にも大変な苦労はあるのだが、壱を百にするのにも大変な重圧が掛かる。加筆という作業は元々の絵自体の評価が高いことに比例するように、壱を百にする作業のほうが過酷度は増していく。例に挙げるとしたら、歌舞伎で数百年の歴史と伝統が創造してきた古典演目を重要視する風潮は非常に強く、人気漫画を歌舞伎で表現しようものには批判の的となる現象と似ている。批判を恐れず

    • 「探求」

      最近、「宝くじ2億円当選するも、食べ歩きに全つっこみ!1日10軒以上、5年間で全額使い切った若者が20年後にたどり着いた、美味しさの先にある究極の料理」という集英社オンラインの記事が目に入ってきて、その人がどのような人生を過ごしているのかに興味が沸き起こり、気がつくと最後まで読み終えてしまっていました。そのオンライン記事の内容を簡単に説明すると、当選者が大学生だった頃に宝くじを購入して2億円の高額当選。その当選金で10代から続けていた美食探求を加速させ、著書「美食の王様」シリ

      • 千葉ロッテマリーンズ

        日本のスポーツビジネスが稼げないと言われていたのは昔の話。なぜなら、経営の手法次第でスポーツビジネスも十分に稼げるチャンスがあることを千葉に拠点を置くプロ野球チームが証明しているからだ。千葉ロッテマリーンズは「下剋上から常勝軍団へ」というコンセプトを掲げながら、2020年以降は球団運営と試合戦績ともに手堅く歩みを進めている印象だ。私が小学生だった頃の千葉ロッテはBクラスの常連組で、千葉マリンスタジアムも観客は疎らで閑散としていた記憶が残っている。現在は試合中に満員御礼が発表さ

        • 過去と未来

          リクルートの取材記事が7月に更新されました。SakeBase株式会社の代表取締役という立場で起業に至った経緯や自らの経歴について振り返るという取材内容でした。自分の過去を記者に質問してもらえるような機会がくるとは微塵も想定していなかったので、何を話したら良いのか少しばかり戸惑いを覚えました。しかしながら、僕は真面目に勉学に励んでいた訳でもないし、他人と比較をしてもスポーツが上手だったわけでもありませんでした。また、進学校に通っていたわけでもなく、大手企業に勤めていた輝かしい経

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          大原はだか祭りと木戸泉酒造の酒

          海水浴シーズンが終わり、待ち焦がれた季節がやってくる。やがて秋風が吹き始めると、大原で暮らす人々は「はだか祭り」のことが頭から離れないでいる。戦時中、当時の氏子総代が警察に祭り騒ぎをしている場合ではないとして自粛を申し入れたのだが、地域住民の士気を鼓舞するには良い機会であるということから大いに活発な祭りを行うように警察署より申し渡されたという歴史を残すほどの祭り。まさに勇壮豪快。関東随一の砕ける荒波に勇む若衆の姿は感動と興奮の渦に包まれる。神輿を担ぐ若衆は黒の手さし、脚絆をつ

          大原はだか祭りと木戸泉酒造の酒

          社員募集中

          最近は会社として着実に前進しているように感じています。従業員の人数は少なくても、自分たちが理想とする事業は粗削りな状況ではあるものの、基盤はつくり上げることには成功した印象です。日本酒の卸売業や小売業、飲食事業、農業など、まだまだ改善の余地はあるにしても、ひとまずは上手く機能するようになってきました。これからは、ひと回り会社を大きくしながら、もう少し効率性や安定感を追求していけたらと考えています。それができなければ、会社が小規模すぎて社会に貢献するという名目が果たせていないよ

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          「社会実験」

          自分はお人好しな性格ではない。ただ、それでも一生懸命に努力をしている人がいると応援したくなる。大多数の人に同じことが言えるだろう。とくに私は「自分のために努力する人よりも他人のために努力をしている人」に惹かれてしまう。そして、その人を心から尊敬してしまう。例に挙げると、スポーツ選手を目指して練習に励む学生よりも、それを陰で支える母親のことを尊敬するように。その理由は実に単純なことなのだが、自分のために努力をすればするほど成果として返ってくる。学生であればテスト勉強を一生懸命に

          「社会実験」

          爽やかさと懐かしさを併せ持つ作品。

          神奈川県藤沢市に活動の拠点を置く、ガラス作家の山崎雄一さん。ガラス作品からは初夏の湘南に吹き抜ける爽やかな風を想起させるような印象と、在りし日の光景が浮かんでくるような懐かしさを感じさせてくれる。写真が趣味の若者に好まれそうな、昭和レトロな喫茶店の「プリン・ア・ラ・モード」が似合いそうな雰囲気を作品から感じられることもあってか、懐古の情が湧いてくるのだろう。ちなみに「プリン・ア・ラ・モード」発祥の地は神奈川のホテルニューグランドで終戦後に考案されたそうで、山崎さんのガラス作品

          爽やかさと懐かしさを併せ持つ作品。

          人々の暮らしに寄り添ってくれる酒

          島根県出雲市の板倉酒造は神秘的な酒を醸すことで知られる。「無窮天穏」は体の隅々までに染み渡るような安らぎと愛情を授けてくれる。その感覚は世の中には神様が存在していて、不思議な力を授けてくれているのではないかと信じたくなるほどだ。酒場であれば隣にいる常連客と夜が明けるまで語り明かしたくなり、自宅ならば恋人に普段は照れくさくて言えない感謝の言葉を伝えたくなる。神様が人と人とを繋げてくれるのが「無窮天穏」なのだ。出雲の象徴ともいえる出雲大社が鎮座する地で、板倉酒造はそんな人と人とが

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          芸術家のような杜氏であり画商のような蔵元

          私は日本酒を製造する酒蔵でイノヴェーションを起こすのは非常に難しいと考えている。なぜなら、日本酒は伝統産業という側面を持っており、先祖代々と続く家業であるからだ。それゆえに脈々と受け継がれてきた銘柄や形式を自らの世代で変えてしまうことは一歩間違えれば今までの歴史を否定することにも繋がりかねない。また、その決断を行ったことで商品の売れ行きが不調に陥ったりするリスクなどを考えると変えないことが無難であると考えるのは当然のことだろう。もし、新銘柄を打ち出すのならば、着実なコンセプト

          芸術家のような杜氏であり画商のような蔵元

          若手の盆栽職人

          2022年、夏。国道14号の一之江橋を車で走行中に「春花園 BONSAI 美術館」の看板が目に留まった。突然、盆栽に対して興味が湧いたのか、私は駐車場に車を停めて入館料を支払い、数々の名樹を眺めることにした。盆栽に対しての知識は皆無に等しかったが、歳月が生み出した圧倒的な世界観に引き込まれてしまった。その日は暑い夏の日差しのなかで、耳障りな蝉が力強く鳴いていたのだが、日本情緒の溢れる美しい建築と盆栽がつくり出す風景は、しんとした空気と独特の緊張感で覆われていたと記憶している。

          若手の盆栽職人

          アルコール添加の日本酒

          アルコール添加をしている日本酒の世間での印象はすこぶる悪い。悪酔いするという感覚やメチルアルコールが入っていると勘違いし、購入しないお客様だっているほどだ。あえて強調すると本醸造や普通酒が悪酔いするという科学的根拠は存在せず、メチルアルコールに対しても製造出荷したことが判明したら行政処分の対象となるため、日本酒にメチルアルコールが入っていることは絶対にない。たしかに、かつての日本社会ではメチルアルコールを混ぜた粗悪品が出回っていたことがあった。第二次世界大戦中の日本の闇市では

          アルコール添加の日本酒

          100年後も色褪せない仕事

          200年後、300年後、500年後も語り継がれる仕事とは?自分の心のなかに、ひとつの疑問が沸いてきた。仕事をするのであれば誰かの役に立ち、何かを遺せたらという気持ちが芽生えてきた。なぜなら、人は仕事をすることで存在価値を高めて、自己実現に向かって絶えず成長する生き物であるからだ。人は産声をあげた日から亡骸になるまで成長を続けて、自分という存在が消えてしまったとしても生きていた証を残そうとする。それについて人は忘れ去られてしまうことが何よりも怖いのだと捉えている。だからこそ、自

          100年後も色褪せない仕事

          2024年もSakeBase株式会社はジェフユナイテッド市原・千葉を応援します

          2024年2月1日、ジェフユナイテッド株式会社様にスポンサー会議の場を設けていただきました。1年間、応援させてもらった立場としては昨シーズンの内容には十分に満足しており、今シーズンもスポンサー企業として応援を続けていくことは心に決めていました。特にシーズン後半、チームの成熟度には安心感と高揚感を抱かせてもらいました。日曜日にDAZNを開くのが毎週の楽しみになっていたほどです。内部の状況については詳しいことは分かりませんが、今までは感じとることが難しかった「一体感」を感じとるこ

          2024年もSakeBase株式会社はジェフユナイテッド市原・千葉を応援します

          豚に真珠ではなく豚ですら不在

          日本の各地を旅していると目を惹きつける特産品や工藝品と出会う。その土地に根付きながら人々の暮らしに寄り添う特産品、地域の個性を色濃く表現する工藝品は長い歴史のなかで磨かれてきた賜物だ。そんな特産品や工藝品を発信していきたいと考える一方で、その発信に限界を感じてしまうことがある。なぜなら現代人は多忙な日常生活を送っており、特産品や工藝品と向き合う余裕、時間が極端に少ないからだ。例えば、日本酒。私は酒販店を運営しており、日頃から痛感していることなのだが日本酒や焼酎はアルコール度数

          豚に真珠ではなく豚ですら不在

          「道」

          小さなことの積み重ねが、とんでもないところに行くただ一つの道。 2004年にイチロー選手がシーズン最多安打記録 を残した際に語られた言葉である。私はこの言葉 を意識しながら生活することが、仕事を成功さる 上での秘訣であると考えている。そして、小さな ことでも積み重ねていきたいと思える物事に出会 えたこと自体が幸運で恵まれていると感じている。 しかし、小さなことを継続することは「飽き」や 「慣れ」との闘いでもある。つまりは新鮮味が失 われたとしても探究心を持って続けていきたい