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小説

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#百合

桜流し

「あなたへの好きをとっておくことなんて、できないから」

涙香(るいか)はそういって、寂しそうに笑った。
鼻をつく春の風は、甘ったるくて切なくて。
桜流しで湿ったアスファルト。遠くから聞こえる、電車の音。
逃げ出したいと切に願っていたこの町が、今日はなんだか少しだけ、愛おしく感じた。

「私が好きなもの先に食べるタイプだって、糸雨(しう)は知ってるでしょ?」

地面を弄ぶ、涙香の白茶けたコンバース

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教室

秋の西日は、肌を刺すように強烈な夏のそれとは違って、小さなころ幼馴染のお姉さんに頭を撫でられた時みたいに、ちょっとこそばゆいような優しさをはらんでいて。だから私は、この時期の西日が差し込む放課後の教室が好きだ。こうして人がいなくなるまで荷物をまとめるふりをして適当にやり過ごす。そうしているうちに人がいなくなった教室の、開いた窓から流れる風が鼻先をかすめて、夏の香りをちょっとだけ残しつつも、確実に冬

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