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2022年5月の記事一覧

三千世界の私を殺して

海辺を逍遥している時だった。久しぶりに匂いを感じた。日焼け止めと、乾いた塩の香り。それが嬉しくて、十一個目のピアスを外して飲み下した。月のない星空。真っ暗な砂浜。数メートル先にぼんやりと佇む影を見た。K君の幽霊だと思った。月世界に行ってしまったK君を想い、もう少しでコンバースに触れる距離にうち寄せる波に一歩足を踏み入れた。海は海であることを強要されていた。私であろうとしたゆえに味わった苦しみを思い

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機械人形の贖罪

錯雑としたおもちゃ箱をひっくり返したような町並みを抜け、砂浜に出た。乳白色の月明かりが照らすのっぺりとした海面。緩やかな波が慎ましく白浜を濡らす。高密度のかき氷みたいな砂の上を歩くたび、ぎゅっ、ぎゅっと音がした。侘しさすら感じなくなった僕は、海と浜の境界をおぼつかない足取りで進む。遠くにぼんやりとうかぶ小さな漁港は心許ない灯りのもと、ぽっかりとあけた口を静かな海に向けていた。随分まえに通り過ぎた居

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ばいばいロージャ

『罪と罰』が好きだと言った僕を、ピュアだねと彼女は笑った。ビルが崩れる三日前のことだった。子供は大人の事情に左右されると言うけれど、僕らは案外そんなこと気にしてない。そもそもあいつらのことなんて眼中にない。どうせ僕らの方が、長く生きる。僕らは、淘汰する側の人間なのだから。ミサイルを食らったビルは瞬く間に崩れてしまったけれど、その瓦礫の上では今日も子供がダンスする。正義のために勝つんじゃない。正義に

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