ばいばいロージャ

『罪と罰』が好きだと言った僕を、ピュアだねと彼女は笑った。ビルが崩れる三日前のことだった。子供は大人の事情に左右されると言うけれど、僕らは案外そんなこと気にしてない。そもそもあいつらのことなんて眼中にない。どうせ僕らの方が、長く生きる。僕らは、淘汰する側の人間なのだから。ミサイルを食らったビルは瞬く間に崩れてしまったけれど、その瓦礫の上では今日も子供がダンスする。正義のために勝つんじゃない。正義になるために勝つんだ。大人はなにかとお体裁を整えてないと気が済まないらしい。いいさ。僕らは僕らで、らしくあろうと思う。君達がひん曲げた世界の秩序は、僕らによって淘汰され、生まれ変わる。そうしていつの日か僕たちもまた、淘汰されるだろう。健康的だね。世界はとっても代謝がいい。だから好きにやればいいさ。でも一つだけ。後で泣き言を言って、僕らに押し付けないでよね。

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