何かアイデアを思いついたとき、昔はメモ帳を持ち歩いていた。 ここ十数年はそれがノートPCの『ネタ帳』というファイルになった。 そこに1行のフラッシュアイデアから、わりと長文のあらすじ的なもの、思いついた台詞やギャグ、様々なものを書き込んでいく。ファイルの頁数も随分と増えた。アイデアに詰まったときにたまに見返していたのだけれど、最近はほとんど見返すこともなくなっていた。 昨夜、ふと思い立ち、久しぶりに古いメモまで読み返していて出てきたのが、『電車』というタイトルのついた短文だ
その状況に興奮することを初めて認識したのは、木嶋佳苗の事件をニュースで見たときだ。死んだ何人もの男たち。彼らは騙されているとわかっていたのか、それとも何も知らずに死んだのか。殺されるときどんな気持ちだったんだろう。 自分が彼らの立場だったらーーと想像し、勃起していることに気づいた。それで、当時つきあっていた彼女に冗談半分でお願いしてみた。僕に遺書を書くよう命じてくれないかと。 彼女は面白がって、僕のその無茶苦茶な提案につきあってくれた。 彼女の言うとおりに、僕は遺書を書く。