財布

妄想なのか現実なのかわからないことを綴ります。

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遺書

その状況に興奮することを初めて認識したのは、木嶋佳苗の事件をニュースで見たときだ。死んだ何人もの男たち。彼らは騙されているとわかっていたのか、それとも何も知らずに死んだのか。殺されるときどんな気持ちだったんだろう。 自分が彼らの立場だったらーーと想像し、勃起していることに気づいた。それで、当時つきあっていた彼女に冗談半分でお願いしてみた。僕に遺書を書くよう命じてくれないかと。 彼女は面白がって、僕のその無茶苦茶な提案につきあってくれた。 彼女の言うとおりに、僕は遺書を書く。

    • 【一日一捨】 墨汁

      物を擬人化し、感情移入し過ぎるきらいがある。 愛着のある物だけでない。特に愛着などなくても、ただ長く家にあったというだけで擬人化し、感情移入してしまう。 物を捨てられない理由には二通りある。 もしかしてまだ使えるかもしれない、もったいない、という思いと、もうひとつ。捨てたら可哀想、という感情。 たとえば、ふたつ揃いのカップなんかのひとつが割れたとき、残されたもう片方が可哀想とか考えてしまう。あるいは、ゴミ捨て場に置かれた物の気持ちなんかも考える。うちのマンションは24時間

      • 【一日一捨】 VHSのTシャツ

        打ち合わせにこのTシャツを着ていくと、わりと目を引き「どこで買ったんですか、そのTシャツ」とか聞かれたりして、場の雰囲気がちょっと緩んだりもしたけれど、最近は「VHSってなんですか?」な人も増えてきて、普通にスルーされているのか知らない世代なのかもわからなくなってきた。 Tシャツじゃないけど、VHSのビデオテープもいまだに何本か持っている。 最早、家で再生する術はないのだけど、その中に一本『マル秘』と書かれたラベルが貼ってあるのがあり、たぶん冗談半分で書いたものだと思うんだ

        • 【一日一捨】 缶バッチ

          何故こんなものを持っているのか、正直まったく記憶にない。 裏を返せば、1.95$の値札がついているのでおそらく日本で売ってるものではない。だとすると、誰かの海外土産か。それにしても貰った記憶がないし、冗談にせよ本気にせよ嫌がらせにせよ、これをお土産に選ぶ友人知人に心当たりがない。 もちろん自分で買うことはないし、何よりここ10年は海外に行ってない。パスポートも切れたままだ。 忘れてしまってはいるが、もしかすると何か思いも寄らぬ重大な理由で僕はこれを持っているのか? 思い出し

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          【一日一捨】 男性用フェイスケア

          美人ぬか化粧水に飽きてだいぶ経った頃。 女友達が「男性用のフェイスケア、いろいろいいのがあるよ」と教えてくれた。 僕の誕生日の近く、たまたま会うことになって、そのとき持ってきてくれた。 誕生日プレゼントにくれるのかと思ったら、レシートを一緒に出して、代金は返してと言われ、えぇっ!?となった。 「誕生日プレゼントじゃなくて?」と訊ねたら、それは別に持ってきたといって、漫画を一冊、くれた。小説でも漫画でも、本全般、マイナーな作家のものまで含め、わりと詳しいつもりでいたけど、その

          【一日一捨】 男性用フェイスケア

          【一日一捨】 カレンダー

          年末、仕事関係でもらった。 表紙のアニメはたしか後輩の橋本君ちの子供が好きだと言ってたなと思い、年始の飲み会に持って行ったら、時期的なこともあってちょうどカレンダーの話になった。酔っ払った橋本君がカレンダーについて熱く語る。 「カレンダーって怖くありません? だって、未来の日付が書いてあるんですよ? その日、自分が何をしているか、考えると怖じゃないですか。なんなら、その日、自分はちゃんと無事に生きてるのかな?とか、考えちゃいません?」 いや、そこまでは考えないだろうって思

          【一日一捨】 カレンダー

          【一日一捨】 陶器市で買った器

          二度、離婚したことがある。 お互いに新しい部屋を見つけ引っ越しをするとき、部屋にあるもののうち、どれをどっちが持って行くかを話し合う儀式がある。基本的に「好きな物を持って行っていいよ」と言って、何を持って行くかは完全に相手に委ねる。唯一、1度目の離婚のときに「Nintedo64は置いていってほしい」と言ったのみだ。 この器は2度目に結婚したときに、近くの公園で開催された陶器市で買った。たしか、彼女が気に入って買ったものだと思うのだけど、離婚するとき彼女はこれを持って行かなか

          【一日一捨】 陶器市で買った器

          【一日一捨】 ふるさと納税宿泊ギフト券

          何年か前のこと。 星のや京都に行ってみたいと彼女が言って、調べてみたら、ちょっとびっくりするくらいの宿泊料だった。 この金額はさすがにどうなんだ…と更に調べたら故郷納税の宿泊ギフト券があることがわかった。京都は故郷でもなんでもないけど、納税することにした。 ギフト券が送られてきたのは初夏の頃で、さっそく来週あたり行く?って提案したら、どうせなら紅葉の時期がいいんじゃない?と彼女は言う。紅葉だと4ヶ月くらい先になる。あまり先の予定を立てるのは好きじゃない。旅行でもなんでも、ぱ

          【一日一捨】 ふるさと納税宿泊ギフト券

          【一日一捨】 カーテンタッセル

          普通に『カーテンのひも』と呼んでいたら、「あぁ、カーテンタッセルのことですね」と横からサラリと訂正された。ゴールデン街のバーで、引っ越しとカーテンについて話していたときのこと。隣にいた若いサラリーマン風のお兄さんに言われ、一瞬、「え? タッ……タッセル??」ってなってスマホで検索したら、たしかにカーテンタッセルだった。「すごい。なんでそんなの知ってるんですか?」と思わず尋ねたら、「逆になんで知らないんですか?」と不思議そうな顔をされた。常識は人それぞれだ。引っ越した部屋の窓に

          【一日一捨】 カーテンタッセル

          【一日一捨】 経費以外のレシート

          会社を辞めてからはずっとフリーランスで、毎年きちんと確定申告をしてる。 仕事に関係するものは基本、経費になる。経費と行っても使ったお金が返ってくるわけではなく、その金額が所得から控除される。ので、税金はその分、安くなる。 デートのとき、食事の代金を店員さんにわざわざ言ってレシートを出してもらってたら、「え、これ、経費にするつもりなの?」と、彼女から若干の軽蔑を込めた目で見られたが、いや、そうではなく。 税理士さんから、「経費以外のレシートもとっておくと、税務調査が入ったとき

          【一日一捨】 経費以外のレシート

          【一日一捨】 お弁当箱

          コロナで緊急事態宣言が出されたばかりの頃、家でお弁当を作っていた。 ひとり暮らし。どこかに持って行くわけでもない自分で作る自分のためのお弁当。朝、起きてご飯を炊き、お弁当箱に詰める。おかずはたとえば、卵焼き、ウインナ、プチトマト、オクラを軽くフライパンで焼いたもの。彩りもきちんと考える。ご飯の上には鰹節と海苔。手軽に作れて失敗のないお弁当をひとりで朝に作り、お昼にひとり部屋で食べた。 コロナ前は毎週のように誰かと飲みに出かけていたけれど、緊急事態宣言が出され、急にぽつんとひ

          【一日一捨】 お弁当箱

          【一日一捨】 財布

          金運を招くという黄色い財布が雑誌広告に載っていて「誰が買うんだこんなもの」と思ってたら、当時住んでたマンションのエレベーターの中で、まさにその金運財布を拾ったことがある。金運を招くはずなのに落としてるやん!と思いながら管理人室に届けた。無事、持ち主に戻っただろうか、あの財布。 僕はといえば、財布は長財布と決めている以外に特にこだわりはないけど、ポールスミスのが好きでよく買っていたら、それは大学生が持つものだと先輩に言われた。大学生、ポールスミスなのか。それはどこの大学の学生

          【一日一捨】 財布

          【一日一捨】 星のシール

          良い意味でも悪い意味でも、ちょっと頭のおかしな従兄弟がいる。 美大を出て入ったデザイン事務所を三ヶ月で辞め、パチプロしたりヒモをしたりで生計を立てていた。たまに描いた絵を井の頭公園で売ったりしてた。誰でも子供の頃、親戚の中にひとりくらいはいた、何をしているのかよくわからない叔父さん的な位置づけのやつだ。パチプロは真面目にやればそこそこ安定した収入を得られらるらしい。 その従兄弟が、ある日突然「もらってくれ」と言ってAVのコレクションを持ってきた。100枚以上はあったと思う。

          【一日一捨】 星のシール

          【一日一捨】 リュック

          ぶらりと一泊、ひとりで旅行に出かけるときによく使っていた。 温泉に行ったり、特に観光というわけでもなく、ただ行ったことのない県の県庁所在地のある街に行ってみたり、地図で名前だけは知っているけど行ったことのない街に行ったり。一人旅で一泊だと同じ服で平気だし、替えの下着だけ持って行けば十分なのでリュックひとつで事足りる。「どこへでも行けるけど、どこにも帰れない」はたしかユースケサンタマリアの名言だ。自由だけど孤独。孤独だけど自由。そんな暮らしに憧れたけど、歳を取るとだんだん帰る場

          【一日一捨】 リュック

          【一日一捨】 古い年賀状

          年賀状はここ10年はもう1枚も出してない。 改めて古い年賀状を整理していると懐かしかったり、これ誰だっけ?ってなったり、そういえばこんな人いたなあ…となったり、家族写真付きの年賀状を見て「若っ!」となったり。 捨てずにとっておくと、今からまた十何年後かに見て懐かしく思うこともあるかもしれないけど、仕事関係の印刷された文字のみの形式的なものや、子供の時以来会ったことがない、最早どんな繋がりなのかも知らない遠い親戚からのものなんかは捨ててしおうと思いピックアップした。あと、嫌な

          【一日一捨】 古い年賀状

          【一日一捨】 おろし金

          先端恐怖症と同じような感覚で、おろし金が怖いと彼女が言った。 おろし金を見ていると、皮膚をジョリッ…とやってしまうところを想像してしまい気分が悪くなるのだそうだ。気持ちはわかる。大根をおろしながら、このまま指までジョリッ…っやったら、雪の上に鮮血が飛び散ったみたいになるんだろうなと想像する。「もみじおろしみたいになるね」と彼女に言ったら、わりと本気でガチギレされた。一緒にご飯を作るときは、大根おろしは僕が担当だった。彼女に見えないように背中を向けてこっそりとジョリジョリやる。

          【一日一捨】 おろし金