遺書
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遺書

その状況に興奮することを初めて認識したのは、木嶋佳苗の事件をニュースで見たときだ。死んだ何人もの男たち。彼らは騙されているとわかっていたのか、それとも何も知らずに死んだのか。殺されるときどんな気持ちだったんだろう。
自分が彼らの立場だったらーーと想像し、勃起していることに気づいた。それで、当時つきあっていた彼女に冗談半分でお願いしてみた。僕に遺書を書くよう命じてくれないかと。
彼女は面白がって、僕のその無茶苦茶な提案につきあってくれた。

彼女の言うとおりに、僕は遺書を書く。
『人生が辛いです。生きていく希望もありません。死にます。口座にあるお金は全て○○さん(彼女の名前)に遺贈します』

書きながらギンギンに勃起していた。
自分の意思で書いているわけだが、文面は彼女の言うとおり書いているというその「書かされている」感が興奮を倍増させる。
最後に自分の名前を書いて拇印をおした。

その遺書をテーブルの上に置いたままセックスをした。もちろん彼女が上だ。彼女に上に乗られたまま、もしかすると、僕は本当にこのまま殺されるかも知れない。自筆の遺書はある。完全犯罪だ。僕が死ねば僕の口座のお金は彼女のものだ。そう考えると僕の陰茎はもうこれ以上にないというくらいに勃起していた。

射精のあとの賢者タイムに冷静になった僕はもちろんそのあと、遺書を破り捨てたけれど。
あのときのあのプレイの興奮がずっと忘れられない。
もちろん本当に殺されるのは嫌だ。怖い。ある程度信用できる人としかできないプレイだ。だけど、100%信用できる相手だとそこまでは興奮しない。万が一、もしかして、本当に殺されるかもしれないという可能性。その絶妙なバランスが大事なのだ。

先日、SMバーでそんな話をしたら、カウンターの向こうの女王様がとても喜んでくれた。そして、「今、ここで遺書を書きなさい」と言われ、書いた。大好きな女王様宛の遺書だ。
書きながら勃起した。女王様の名前は書いたが、自分の名前は書かなかった。拇印もおしていない。だけど、筆跡は明らかに僕のものだ。鑑定されれば間違いなく僕の自筆だとわかるだろう。

帰り際、女王様がカウンターの上からその遺書をそっと取って自分のバッグの中にしまわれた。
僕の書いた遺書のその後については女王様には聞いてない。
家に帰って普通に破いてゴミ箱に捨てたのかもしれない。
だけど、もしかして。
その遺書は今も女王様の部屋の、たとえば小さな引き出しの中に大切に保管されているのだとすれば。
そんな妄想をするとまた軽い興奮を覚えるのだ。

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