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詩 『自由の代価』

作:悠冴紀

何人の人間が知っているだろう
自由とは完全なる孤立
誰にも何も求められなくなったあとの
真の孤独を意味すると

何人の人間が知っているだろう
自由とは責任ある選択の連続
誰の導きも 何の保障もない
日々手探りの道なき道を意味すると

自由を求めて闘うとき
人は輝き 高められる

自由を得て尚 生き続けるとき
人は戸惑い 途方に暮れる

得難いものを得た喜びに満たされ
今後の期待に胸を躍らせていられるのは
驚くほどに束の間だ

果たして何人いただろうか
自らが手に入れようとしているものの重みを
真に理解して挑んだ者が

果たして何人が知っていただろうか
手に入れる過程よりも
手に入れた後の取り扱いの方が困難だとは

人はそれでも自由を求める
私自身もまた
その一人だった

目標に向けて走っているとき
人は己の底力に酔いしれ
自らの大きさを錯覚する

目標に到達して腰を落ち着けたとき
人は自分の不器用さを呪いはじめ
己の無力さに打ちひしがれる

まさか こんな無様さが
自由の戦士の末路だとは
・・・・・・

かつて不自由な日常に耐え抜くべく
切実に必要としていたものすべてを
私は謝意を込め 守りたかった

まさか自由の獲得と同時に
それらと共生できなくなろうとは
露も思っていなかった

この身以外に何も残らない勝利など
一体どうして誇れようか・・・・・・

最も守りたかったはずのものまで
自由の代価として犠牲にした己など
一体どうして愛せようか・・・・・・

自由は確かに尊いもの
今は 望めば何でもできる
だが心はすでに尽き果てている

大きすぎる風穴をそのままに
果てなき死地に立ち尽くしている

何者とも共有し得ない渇きを胸に
完全なる独りとして

**********

※2016年11月の作品。

注)この作品を一部でも引用・転載する場合は、「詩『自由の代価』悠冴紀作より」と明記するか、リンクを貼るなどして、作者が私であることがわかるようにしてください。自分の作品であるかのように公開するのは、著作権の侵害に当たります。

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