
『創造的な習慣』坂上卓史 中篇
Product Arts の坂上卓史(さかうえ・たかし)さんは、名古屋を拠点に活動するアナログゲームデザイナーです。アブストラクトな思考性の高いゲームから、大きなボードを使ったゲーム、さらにはキャラクターを重視したカードゲームまでを実に幅広く手がけておられます。
主な作品リスト
『COMPANY:BOCG』『AKINDO』 『BIRTH』『彼女のカレラRS TTG』 『神道』『Twelve Heroes(共作)』『ART OF WAR(共作)』『緑の砂漠(共作)』他
優れた作品を創作し続けているアナログゲームのデザイナーに対して、Saashi & Saashi が定型的な質問を用意し、それに回答してもらうという、このインタビュー企画『創造的な習慣〜アナログゲームデザイナーはいかにしてクリエイトするのか』。
クリエイトする上で欠かせないもののひとつに、困難に負けず必ず完成させるという一念が挙げられると思いますが、坂上さんの難局に打ち克つとする姿勢からは学ぶところが少なくありません。そしてそのアグレッシブなクリエイトへの情熱もさることながら、一方では冷静で緻密な分析に基づいた判断を両立させているという対比からは、さまざまな創造のヒントが見出せるように思います。ロングインタビューを敢行してまとめた全記事を三分割し、中篇をここにお届けします。(前篇、後篇はこちら)
テストプレイ
── テストプレイについてお訊ねします。一応の形が整った段階で、まずはゲームを1人プレイで試してみるのですか。
坂上 1人プレイでの動作確認は、他人を交えたテストプレイの前に何度か行ないますね。致命的なバグがないかだけをチェックしてみる感じです。そのあとは複数人でのテストのためにミーティングを設定します。制作のマイルストーンとして先にミーティングの予定を決めてしまって、そこに焦点を当ててテストキットを詰めていくんです。
── たとえば3日後にミーティングを設定して、1人でテストしてみて「まあまあいける」と感じたとして、でもあと2日あります。この状態からはもう触らず、1人回しで確認することもやりませんか。
坂上 やりませんね。1人でのテストもうまく回ったので、これについては一旦プライオリティを落とせるとなれば、とりあえず置いておきます。他にもいくつかプロジェクトは抱えているので、極力省力化して別の作業を進めますよ。
── (テストキットを拝見しつつ)カードは『マジック:ザ・ギャザリング』のカードをスリーブに入れて、そこにプリントした紙を差し込んでいるんですね。
坂上 そうですね。駒はドイツから必要になりそうなものを一通り取り寄せているので、たくさんあります。ボードは普通紙でプリンターから印刷したらテストは可能です。第一号のボードはこんな感じです。大きいサイズが必要ならコンビニでA3用紙を印刷してきます。
── A4用紙を2枚ではなくて、わざわざA3用紙を印刷しに外へ出るのが坂上さんらしいですね。
坂上 ちょっとした工夫ですが、ボードの端にルールを印刷しておいて、それを見ながらテストできるようにしてますね。
貿易がテーマの未発表作のテスト用ボード
── ああ、これはテストの時のための書き込みなんですね。実際の製品版ではこれらの記載はなくなるわけですね。
坂上 テストプレイ用のプロトタイプの記載なので、なくなりますよ。
── ルールのメモ書きまで印刷してあるのがおもしろいですね。とても実務的に思えます。これらは全部パソコンで作ってしまうんですね。
ここから先は
¥ 250
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?