対立概念は幻想(反対するよりも真の因を見る)

二極に分かれたものの見方に慣れた私たちは、そのものの見方を完全に撤廃するまで、「真の意味で見ること」も「知ること」もできない。

この世の言葉、あるいは共有している観念を利用して何かを説明するなら、「部分的に」しか伝えられないということだ。
全体性を表現しようとしても、「見る者」と「見られる者」に二分した観点が意味を成す前提の下にある限り、どうしても「盲点」ができるのだ。

私たちは言葉を使って、情報を「歪め、欠損させて」伝えている。
あなたが何かを人に伝えたいとき、細心の注意を払って最適な言葉、表現を探すとしても、言葉に翻訳できない部分は切り捨てられる。
言葉に翻訳できなかった、あるいはしなかった「思い」をエネルギーとして言葉に乗せる、込めるということは可能だが、「読み取り」の際にどれだけそれが伝わるかは、読み取る相手次第でもある。
人間は、すべてを自分のエネルギーの中で「解釈して」受け取るからだ。

この意味で、波長の近い者、つまり自分の持っているエネルギーの周波数帯がかぶっている者同士であれば、かなり意思疎通がたやすくなる。
伝える技術の問題でなく、お互いが元々似た周波数でVibrateしているからだ。似た回路でものを考えるので、解釈の誤差が少ない。
これを「共振している状態」と言ってもいいのだが、共振する前から、各々が近い波長だったからこそ関わった(引き寄せられた)とも言える。

逆のケースでは、言葉を尽くし、たくさんの語を用いて説明をしても、一向に通じ合わないということがある。
そんなときには伝え方の問題以前に、心の波長が合っていないのだ。
その理由は様々にあるが、まず、チェックすべきは「自分の心」である。

目に見えるもの、状況や出来事といった「形」に焦点を合わせるのでなく、意識の世界から話をすると、「時」の概念すらも常識通りにはいかない。
前後関係、時間に沿った考え、「過去にまず因があったので、今その結果が出ている」という見方は通用しなくなるのだ。

私たちが世の中で起こっている物事を眺めるとき、「過去にこういうことがあったからだ」「歴史を辿ると、こうだったからだ」と、解釈しがちだ。
けれども、その見方を維持することは過去を量産することになる。
たとえ変化や改善があるように思えても、根っこは維持されていて、表現が変わるだけ。

同じ「型」や「制限」からしか生まれない未来――あなたは、自分の未来にそれを望むだろうか。
瞬間瞬間を、曇ったフィルターを通してではなく、澄んだ目で経験したくはないだろうか。

反対することによって「反対しているものを維持している」

4月の記事◆「映画『アナと雪の女王』みたいなことが起こっている現在【あなた自身の力への恐れを手放そう】」の中で、回を改めて詳しく書くと述べていた内容を今、ここで語ることにする。
それはディズニー映画への違和感を説明した部分で、人種に配慮する「型」などアメリカ特有の「politically correct」な姿勢について、私が思ってきたことを語りたかった。

その後間もなくして、アメリカではBlack Lives Matter運動の激化があった。
語ろうとしていたテーマが、はからずもタイムリーになってしまった。

Black Lives Matterについては、2016年11月の時点で一度ブログで取り上げている。
このとき、私の敬愛するラッパーLil WayneのBlack Lives Matterに対する発言がアメリカで炎上したからだ。
「足並み揃える必要はない~Lil Wayneのニュースに思うこと~」

ちなみに、Lil Wayneは12歳の頃、自殺しようとして銃で自分を撃った経験があり、そのとき彼の命を救ったのは白人の警官だった。彼は今でもその警官に対し、折にふれ感謝の気持ちを述べている。
炎上した発言をしたとき彼は、そうした個人的体験を番組で説明することはしなかったし、仮にその経験がなくとも、彼ならば精神が自由な人間として今の彼のように生きたのだろうと私は思っている。

事の発端は、ある番組内での出来事だった。Lil Wayneに対し失礼ともとれる質問が混ざるインタビューがあり、話題が移っていく中で、インタビュアーは2016年のその当時起こっていたBlack Lives Matter運動について、どう思うかを彼に尋ねた。
Lil Wayneは「個人的にはその運動に繋がりを感じない。自分は黒人だけど、自分の命は主張するまでもなく大事(matter)だとわかっているからね」という意味のことを彼流の言葉と表現で述べた(詳しくは、上記記事を読んでほしい)。

私には、彼のそのスタンスがよーくわかったので、記事で取り上げて解説しつつ、さらに踏み込んだ見解も書いた。また、アメリカ国内でもその発言に共感し、真意を汲み取った人々もいた。

一方、今年のBlack Lives Matter運動についてはLil Wayneは、自分のレーベルを冠したラジオ番組、Young Money Radioのパーソナリティーとして色々なラッパーたちに自由に考えを語ってもらうという形で関与している。

私たちは善悪や正義を定めようとするが、重要なのは内でその動機を生む、自分が採用している「ものの見方」の方だ。
差別のある世界をなくしたいと「反対運動」をする場合、もちろん今「差別のある世界」を信じている。まずは、このことを自覚しなければならない。

「当たり前でしょ、何言ってるの?」
「何それ、現実に起こった事象を無視しろと言うの?」
と考える人もいるかもしれないが、本当に「解決」をしたいのなら、それが自分の「はけ口」に利用されているのでないのなら(自分のシナリオ通りに解決すべきだ! と解決法にこだわる心がないのなら)、理解すべきことがある。

差別をなくすという発想の中に差別の概念がある。
ここに真の「因」があると、注意深く気づかなければならない。
そして、あなたが変えることができるのは、真の因のみなのである。

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