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老舗京菓子屋の企業ミュージアム? ZENBI 【鍵善良房 KAGIZEN ART MUSEUM】 京都市東山区

2020年の京都は、前年までの観光客の波がまったく消えてしまいました。
そして2024年の現在では、元通りの大波のようです。
メディアはオーバーツーリズムに悩まされる京都市民的な切り口で取り上げがちですが、はたして市民のホンネはそこだけではない気がします。
今回はそんなオーバーツーリズムの実害が報じられる祇園の一角、老舗和菓子屋さんのミュージアム(ギャラリー?)を。


一言で祇園と言われても余所者には正確に把握できておりません。
車が通れる道から入る細い脇道には私道もあるようですが、スマホ片手の日本人でも正確に認識するのはビミョー(私有地らしき場所にズンズン入って行くほど無神経ではありませんが)。
居住者の方々からすれば毎日のコトなのでフラストレーションがたまるとは思います。
一方このエリアには、表通りではなくても多くの飲食店や民泊施設やら小さなホテルも混在しているので、静かな日常生活というのもチョットきびしい気もします(個人的にも宿をチョイスするエリア外)。

ミュージアムは町屋が密集するエリアに。


ZENBI

京都府京都市東山区祇園町南側570-107


ZENBIは2021年開館のミュージアム。ベースは和菓子屋鍵善良房ギャラリー空 鍵屋。鍵善良房の昭和初期のご当主善造さんは、民芸系の黒田辰秋くろだ たつあき(1904-1982)や河井寛次郎かわい かんじろう(1890-1966)らと親交があり、店舗には彼らの作品や調度品が残っています。


鍵善良房は、創業が享保年間(1716-1736)という祇園の老舗京菓子屋(1690年代の記録が残る古文書もあるそう)。明治期に現在地に店舗を移転(八坂神社の参道沿い)、ZENBIからは徒歩すぐの距離です。

ではZENBIへ



美しいお菓子の木型 チラシ
2021年11月-2022年4月 ZENBI

展示はお菓子の古い木型たちでした。老舗菓子屋では店内ディスプレイとしてよく見かけるモノ。
入館して渡されたのは入場チケットとなぜか干菓子。コメダ珈琲のお豆的なアイテムでしょうか。

足を運んだのは2021年も終わろうとしているころ。この年は開館記念の特別展が2連発で組まれていました。その後編を見たかったのですが、当時の世情に加えて仕事のスケジュールも合わず。
それでも何か痕跡が拾えないかと参上。


山口晃という人

山口晃やまぐち あきら(1969- )は上野こうずけの国(群馬県)の人、また画伯という称号がよく似合う人。ブルータスでちょいちょいお見掛けします。

山口さんは、ポーラ・ミュージアム・アネックスで触れた野口哲哉さんと同じ匂いのする作家です。
作品は、歴史や伝統のフォーマットを使いながら、現代的なスパイスを利かせたユーモアあふれるモノ。
また古い時代にメカが混在(馬がバイクと融合したり)していますが、違和感なく妙に調和しています(アキラとか攻殻機動隊の世界観的)。


お菓子の木型を見学後、スタッフさんに山口晃展の図録は発行されましたかとお聞きすると、

「ありませんでした」と。

でも「関連の作品集は発行されていますよ」とスタッフさん。

書籍だと割高になるパターンかなと思っていると、

「チラシなら少し残っていますが」と奥の部屋からチラシを手に。

断る理由は何一つありません。ありがたく頂戴しました。
マニアの気持ちを理解できる方には、チョット気分が良くなります。

「1枚だけでよろしいのですか?」とも聞かれましたが、後に続くかもしれない同志ヘンタイのために1枚だけ頂きました。吾唯足われただたるを知る

吾唯足知は禅宗系のお寺によくあるやつ @龍安寺


山口晃 ちこちこ小間ごと チラシ
2021年7月-11月 ZENBI

ありがたく頂戴した運命の1枚。
画伯のコトだから、たぶん実際にああいう街角があるのでしょう。
菅笠かぶった旅人はいないと思うけど。


親鸞 全挿画集
発行:青幻社 695ページ 2019年
(アマゾンとは何の関係もございません)

チョット値が張るなと思いつつ、立ち読みには不向きな画集も入手。
画伯が担当した新聞の連載小説の挿画集&解説で、恐ろしくヘヴィー(物理的に)な大作です。

親鸞しんらん(1173-1262)は日本各地を説教して回ります(うっとおしい人という意味ではありません、説法とも)。
その説教をラップと捉える画伯のセンスが刺さります(ヨーッとかセイッとか漢字と英語をミックスしつつ韻を踏む)。
ちなみに浄土真宗には(西本願寺と東本願寺では異なる)、読経に独特の節回しがつきます。東には体の動きも。
そして単語や文章を文字通りイラスト化する画伯の技巧は笑えます(一部オヤジギャグ的、また解説がないと分からないモノ多し)。


鍵善良房本店は人気店のようです。ZENBIの向かいにもカフェ店舗がありますが、店外に行列が出来ていたのでスルー。
ゆっくりお茶で一服するのに、わざわざ並んで待つというのも何だか変な気がするもので。
馴染みのない町をブラブラする方が、おでかけの記憶にも残ります。
そのうちまた訪れる機会もあるでしょう。

さすが祇園なのか?

京都仕様のカラーコーン&コーンバー(フツーは黄色と黒の棒)は竹細工。京都経済は対無法者用の必須アイテムでも回します(知らんけど)。


山口さん単独の特別展に対面するのは、この日から数年後のコト。
単品では時々出会うんですけど。

@日本橋駅



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