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THE SPELLBOUND 天才の新たな歩み

現在、感染拡大が叫ばれる中、開催されているFUJI ROCK FESTIVAL'21。
今、Youtubeで観れるんですよね。

※公開期間が過ぎたため、再生できません。
こんな感じで。

人によっては開催されることに疑問を感じる方も多いと思います。出演者の中でも意見が割れ、辞退者が出ているくらいですから。
Twitterでも現地の観客の密集具合の酷い画像が拡散されており、疑問視されています。そういう現実は直視しないといけません。

でもやっぱ音楽聴きたいんですよね爆
バンドマンなんで。
ただ感染は良くないので先ほどの中継で観る派です。

そういう葛藤を抱えたまま音楽を支える人、聴く人、何かを共有しようとして舞台に立つ人がいるのが今回のFUJI ROCK FESTIVAL`21なんだと思います。

結果として国内の錚々たるミュージシャンが集まったFesになりました。

今回は、その中でも私が紹介したいバンドを取り上げたいと思います。
はい、スタート。


その名も「THE SPELLBOUND」。


なんじゃそれ?と首を傾げる人の群れが画面越しからも想像出来る。

今回、フォーカスしたいのは、「THE SPELLBOUND」のひとり。
中野雅之氏について。

彼は、前身のバンド「BOOM BOOM SATELLITES」でメジャーデビューを果たした。2人組のユニットとサポートドラマーという構成で極熱のライブを展開していた。
最初に火が付いたのは海外。海外でキャリアを積み、満を持して帰国。
ライブだけでなく、アニメ『アップル シード』のサントラや『亡念のザムド』のOPなども手掛け、日本で精力的に活動の幅を拡げていた。
※その時の音源がこちら。


―――—電子音楽とロックの融合。

この言葉は、ロックの限界が叫ばれ始めて久しい00年代におけるトレンドでもあり、事実、頼みの綱のようなものだったのだろう。

それでも当時はASIAN KUNG-FU GENERATIONやELLE GARDEN、サンボマスターやフジファブリックなど様々な個性を持ったバンドがロックを模索して紡いでいたように思う。

その中で颯爽と輝いたのが、このBOOM BOOM SATELLITESだった。まさに電子音楽とロックの融合を体現していた。

海外の風を体感してきた彼らの音楽は、音の重み、誘うような電子音の波、魂を掻き立てられるドラム、そのすべてがサビでカタルシスを爆発させる。一線を越えたその先にある解放感、そして、その後に残る余韻。
衝撃、という言葉が頭を過った。

彼らの音楽性が一般的に受け入れやすいものか、と言われると難しい。
ただ、刺さる人にとっては、ロックな心に聖剣並みに突き刺さる。

アニメのサントラなどを手掛け、ライブも上々。
そんな折、彼らに残酷な別れが訪れる。

苦楽を共にしたボーカルの川島 道行氏が脳腫瘍を患い、闘病生活の末に2016年に逝去。翌年、「FRONT CHAPTER THE FINAL SESSION~LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE~」を最後に27年間連れ添った戦友とのバンド生活に幕を閉じた。

中野雅之氏は、目に見えて疲弊していた。当時、彼のTwitterは長いこと料理ばかりを載せ、仕舞いには麻婆豆腐をラー油から作り始めた。
当時は、そのうち某DASH村みたいに畑から作るんじゃないか、レシピ本が出るんじゃないかと思った。

劇場版アニメ「ゴジラ」などのタイアップ曲をプロデュースすることはあっても、表立って活動することは減っていった。

そうした活動の合間に定期的に流れてくるお料理ツイート。
そこにはいつも「お食べ」とだけ書いてある。
これはファンに対してなのか、相方に対してなのか……。
想うだけでも辛いものがあった。


その彼が2020年、年末にバンド活動を宣言したのである。
名前は、「THE SPELLBOUND」。

いきなりの活動宣言と五か月連続リリースを発表した。
お待たせ、と言わんばかりの帰還。

ここでは1st『はじまり』を取りあげたい。


新たなメンバーを迎えたことで幻想的な色彩が加わった。
より淡く、より優しく、より儚く。そこが美しい。
だが、その中にかつてのBOOM BOOM SATELLITESの匂いがある。
花火が打ちあがった後の、あの鼻腔に残る火薬のような余韻。

彼の中には、川島 道行氏との日々、BOOM BOOM SATELLITESとして歩んできた時間が、今も確かに生きている。

彼が歩み出した嬉しさ。
それと同じくらいに……。
彼の横にかつての戦友がいないことの寂しさを感じる。
運命とは、かくも残酷で。命とは、かくも儚いものか……。



今年のFUJI ROCK FESTIVAL'21はどうあっても賛否が分かれるだろう。
そして誰にとっても、良くも悪くも意味を持つFesになるだろう。

幸い、会場に行かなくても私たちはFesを観ることが出来る。
下記は、Youtubeのセットリスト。


本日のCh2 大トリが「THE SPELLBOUND」。
これ以上の言葉は必要ないだろう。



最後に
人には、それぞれ物語がある。それはミュージシャンも同じだろう。
私は、中野雅之という挫折を味わった天才が、新たな仲間と共に再び立ち上がり、戦友との思い出を胸に歩み出した第二章。――――
その物語を追いかけていきたい。


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