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《新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に》

 テレビシリーズからここまで観て、やっと1995年から1997年の庵野秀明がエヴァンゲリオンシリーズで何をしようとしていたのかが見えてくる。

 テレビシリーズではほとんどただの符丁でしかなかった“人類補完計画”は、ATフィールド=心の壁によって中途半端な個体であるしかなく、孤独を抱え込むしかない現生人類を、単体の生命、ハイブマインド、肉体的にも精神的にも輪郭を喪い、溶け合った集合的な生命に還元

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動きを描きこむこと

 筋をもつ作品のなかに、主筋の展開に直接は関わらない、ある運動が描き込まれることがある。それは、あらすじを書けば落ちてしまうような部分ではあるが、作品の魅力をなす不可欠な要素となっている細部でもある。なかでも魅力的なものをいくつか抜き出してみる。

 たとえば、トリュフォー《大人は判ってくれない》の、遊園地のシーン。

 学校をサボって主人公のドワネルが悪友と街に遊びに出かける場面。ゲームセンター

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映画《バーニング》、納屋からビニールハウスへ

・当たり前の前提。小説を映画にすることはできない。日本語で書かれた俳句をフランス語にすることが、英語で書かれたソネットを日本語にすることがほんとうにはできないように。それらはあまりにも違う。意味だけでなく形を伴う作品には、翻訳の不可能性と、それぞれの媒体に固有な特質というものがある。小説はあくまで小説であり、映画はあくまで映画である。
 その上で、この作品は、原作の日本の村上春樹の短篇小説から受け

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